2017年5月9日火曜日

20170508

11 一橋ビジネスレビュー・スタディセッションに参加してきた。

一橋講堂でのセッションだったが、1820分から2050分までノンストップの講演&パネルディスカッションが盛り上がった面白いイベントだった!


企業の新陳代謝とクレイジー・アントルプルヌアの輩出(米倉先生)
炸裂する米倉節が面白くて仕方ない。

【講演メモ&米倉語録】
  • 野中先生のご尊顔を拝む機会も限られているので、多くの方にお集まり頂きました。法政大学の米倉です(笑)(注:3月で一橋を退官された)
  • 日本は2000年には1人あたり名目GDPが世界3位だったが、2016年には22位まで落ちている。
  • イノベーション力は5位前後で推移しているが、中を見ると「マクロ経済環境」の指標だけ100位以下になっている。経済成長率はあれだけバタバタしているフランスと同じレベル(笑)
  • 生産性に至っては、あれだけ働いてないイタリア・フランスの方が日本よりはるかに高い。ドイツは日本と比べて労働時間が50日少ないのに1人あたりGDPでは上回っている。電2がやってることはアホ(笑)22時に電気消しても仕方ないだろ。
  • 日本は安全で平和なのに自殺率は世界9位。1位が北朝鮮。
  • 時価総額は世間の期待度を反映している。1997年の米国の時価総額上位はGM・フォード・エクソン・ウォルマート・GEなどで、日本はNTT・トヨタ・銀行。2016年になると米国はアップル・Google・マイクロソフト・AmazonFacebookに変わっているが、日本はトヨタの後はNTTDocomo・日本郵政・ゆうちょ銀行などが続く。日本のランキングを見ると「ここは中国か?国営企業が民営化したところばかりじゃないか」と思ってしまう(笑)ここに未来の希望を託しているのか?
  • 未来を作る企業としてIBMAIのワトソンで1兆円のビジネスを作っている。それでもバフェットから見ると「遅い」と思われて株を売ってしまった。日本ではAIはこれからだ!とかまだ言ってるというのに。2003年創立のテスラも時価総額ではフォードを抜き、GMに迫った。あれは電気自動車というよりも車輪がついたiPhone
  • 日本の総合電機も悲しいことになっている。T芝は・・・話すのやめましょう(笑)
  • B2Bに特化すればプラットフォームを失う。このまま行ってしまうと高性能の部品屋で終わってしまう。アップルはGoogleを下請けに使ってやる!という発想が欲しい。
  • Facebookに何百億と投資をした人は偉い。クレイジーな人はシリコンバレーに行ってアメリカで上場すれば良い。
  • これからは数を打つゲームが必要。おびただしい失敗を許容し、破産も懲罰型から許容型に変更していくべきである。
  • 企業家を育てる仕組みをやってきた結論は「クソの役にも立たない」だった(笑)これは実行する行為でしか身につけられない。「豚もおだてりゃ木に登る」の精神で「そういえば君、スティーブ・ジョブズに似てるね」とでも言ってやらせればよい(笑)
  • 賢くなくても無謀な人間が欲しい。賢い方が良いけどさ。
  • 入り口でやる気のないプロモーションをやってるのでよろしく(笑)

やる気のないプロモーション(笑)であるサイン本



デジタル技術の進歩がもたらした産業変化(青島先生)
一橋の調整役とからかわれていた青島先生。一服の清涼剤とも言えよう(笑)
【講義メモ】
  • 「半導体の微細化・SoCの登場」「モジュール化」「情報通信の高速化」によってものづくりは分業化が進み、機能を製品に集約するのではなくてユーザーが必要な時に持って来れば良い時代に変わった。完成品ベースのものづくりに依存した日本企業は苦境に立たされた。
  • デジカメも例外ではなく、スマホにとって変わられた。趣味的な機能を持つ一眼レフは残るが、手軽に写真を撮影するだけの機能であればスマホで十分。
  • テレビのエコポイントや太陽光発電の固定価格買い取り制度と言った政策は失敗に終わった。日本企業が苦境に立たされたのは産業構造の変化によるもので、需要のテコ入れをしただけでは成果が出なかった。問題を抱えた日本企業に、お金をつぎ込んで失敗した例となった。
  • 構造的な力の作用を理解していく必要がある。


知的機動力による日本企業の再構築(野中先生)
82歳とは思えぬパワフルさよ・・・
【講演メモ&野中語録】
  • 中国清華大学に「野中アカデミーオブイノベーション&ナレッジマネジメント」の講座ができて、行きたくなかったけど(笑)行ってきた。
  • 真・善・美に向かって社会的に正当化していく取り組みこそがイノベーション。絶えず直観から本質をえぐり、仮説を検証していく。
  • 信奉するビジョン:何が善いことかを徹底的に考え抜く。
  • 相互主観性:完成と知性の総合によって1人称を3人称に変えることでイノベーションが起きる。
  • 自律分散リーターシップ:コンテクストの中で最善であるものを実践的に意思決定していく仕組みを作る。
  • 82歳になってわかったが、女房を説得できない男は世界を変えられないということだ(笑)
  • GEの信念はGrowth Value(名詞)からBeliefs(動詞)に変わった。日本語訳は日本のGE社員の公募で作成された。人事制度も一新され、お互いがお互いのためを思いながら360度で評価するようになった。旧来の人事制度は分析をやりすぎてくたばった例といえる。
  • ネットフリックスでも仕掛けを作ってマネジメントする体制から、率直に議論しようというながれに変わってきている。
  • 暗黙知は潜在能力なのだから五感を鍛えるべし。共感共鳴経営を行うことでイノベーションが生まれる。それはAIが不得意としているポイントであるし、人間の本質に戻る考え方でもある。
  • 京セラフィロソフィのグローバル化のプロジェクトをやっているが、「売上最大。費用最小」と言われた方が、ROEなんて言ってるよりよっぽど分かりやすい(笑)京セラのコンパは手酌禁止で利他の精神を養う。畳の上でとことん語り合う姿勢が大事。これをやりすぎるとブラック企業になるのかもしれませんが(笑)
  • オーバーアナリシス・オーバープランニング・オーバーコンプライアンスで疲れ切っている。これらの創造的破壊が必要。
  • イノベーションの敵は社内政治。

野中先生「あと何分でしたっけ?」
米倉先生「もう終わってます」

<野中先生講演終了後>
米倉先生「拝みたくなったでしょ?こんな訳のわからない話をする驚異的な82歳です(笑)」

追加講演(延岡先生)
事前プログラムにはなかったが、延岡先生も参戦
【講演メモ&延岡語録】
  • 新参者・余所者扱いされていて、スライドの表紙もいかにもオマケ的になってます(笑)
  • 顧客価値は暗黙化している。カタログで見ても価値がわからない。カタログだけで見ればAndroidのスマホの方がiPhoneをはるかに上回っている。それでもiPhoneの方が3倍の値段で売れている。
  • バランスをとる統合的人材の育成が必要。ダイソンではエンジニアリング担当にデザインもやらせている。別々の人間が集まっても喧嘩するだけ。建築学科をでた人やシェフなど、エンジニアとデザイナーの両方を担う人材が欲しい。




これからの20年、戦いの場はどこにあるのか?(モデレーター:米倉先生・パネリスト:野中先生・延岡先生・青島先生)
プログラムタイトルというよりも米倉先生のコメントにあった「一橋大学イノベーション研究センター内輪揉め座談会」とした方が現実を反映している(笑)

  • 米倉先生:統合的人材の担い手は大企業から出るのか?・・・延岡先生に聞いてるんですよ!全然人の話を聞いてない!(笑)こんな人たちと一緒にやってきたんです(笑)
  • 延岡先生:ソニーのSAPなど大企業の良い点を利用する人は出てきている。大企業はロットサイズの大きさが問題。10億円弱のイノベーションスタートアップをやっていくと良い。
  • 米倉先生:ロットを気にせずにやれば、大企業でもスタートアップが行けるのでは?ということ・・・野中先生、聞いてないでしょ!?(笑)
  • 野中先生:人材が育てられないということはないでしょう。私の会社経験では課長時代のミドルマネジメントが最もしんどいが、経験の質・量ともに積むことができた。タイムリーな意思決定はマニュアルでは教えられない。そのあと米国に留学したが、第2専門を取らなくてはならず、教養を鍛えられた。物事を形式化するにはリベラルアーツが必要。それがないとパッと見て繋げられない。より大きな教養の場があるべき。
  • 米倉先生:ほとんど質問に答えずに、言いたいことを言うね(笑)スタートアップがアメーバ経営から出てくるか?私は絶対入りたくない(笑)
  • 野中先生:それは間違っている。プロジェクトリーダーたちが連なって新しい関係を作っていくタイプのイノベーションだ。日本では一匹狼のクレイジー・アントレプレナーはでてこない。
  • 延岡先生:野中先生の考えは古い。
  • 米倉先生:突然参入してきましたね(笑)
  • 延岡先生:日本企業は目標めがけてやっていくのが得意。だが、価値の部分は目標にしにくい。カタログにできない価値を誰が評価するのか?サラリーマン社長では意思決定できない。
  • 米倉先生:ダメじゃん(笑)
  • 野中先生:スクラム・アジャイルのやり方。数値化してパフォーマンスを測定すると失敗する。そうではなくて幸福度を測るというやり方を取り入れ始めている。5つの項目で幸福度で測れば質的に測定できるようになってきている。
  • 米倉先生:ありがたいお話を聞かされると騙される(笑)落ち目の三度笠の残骸をたくさん見てきた。日本のビジネスパーソンがどれだけ「I’m Happy!」と言っているのか?(笑)
  • 野中先生:京セラでは仕事は天職。コミットすれば必ず経験が蓄積される。GRITなんて当たり前。科学は何十年もかけて当たり前のことを確認している。そこには宗教的なスピリットが存在している。そこがルーチン化して官僚的になっておかしくなった。人の生き方を問わない経営は否定されつつある。
  • 米倉先生:Googleに行けば面白い!と思えるけど、京セラに行って面白い!と言われるか?(笑)そろそろ青島君にも。
  • 青島先生:大企業にも人材はいるが、個人的な主観と社会的リソースのマッチングの場にはなっていない。多少ルーズだった過去の日本では折り合いがついていたが、最近はやりにくくなっているのではないか。
  • 米倉先生:イノベーションは組織的管理のもとでは生まれないが、そもそも大企業の能力がないと大きくできない。wenaってしょーもないと思うけど(笑)、どうなの?
  • 青島先生:しょーもないと思う(笑)suica使えないし、ソニーなのにアンドロイド対応してないし、万歩計の機能しか使ってない。それでも毎日着けたくなってしまう製品だ。
  • 延岡先生:その観点が大事。日本の棟梁はデザインから建築、金勘定まで全部できて優秀な棟梁と言われた。いかに大量生産に繋げるか、うまく使える道はあるのではないか。
  • 青島先生:延岡先生も野中先生みたいになってきた(笑)経営リソースは大企業に集中している。透明性や説明責任などの論理を背負わせるとイノベーションは破綻してしまう。ベンチャーは国やエンジェル投資家・VCが支援して、その後は大企業で量産するという分担もあるのではないか。
  • 野中先生:絶えずミドルにチャレンジを与えて育てることが大事。軍事組織には「必ず勝つ」という信念がある。自衛隊にないのは問題なのだが(笑)信念を持って社内政治を克服して想いを貫く点は劣化しているかもしれない。自らをエリートと認めるなら、最後まで戦って倒れろよ(笑)プレミアムフライデーなど勝手なことをせんでも良い(笑)先日ライフ・シフトのリンダ・グラットンと議論する機会があった。人生100年時代も後半はゆっくりすることになっているが、とんでもない。自分は最後まで戦って死ぬ(笑)そこには葛藤がある。
  • 米倉先生:日本企業はすごくないんだよ!と主張しないと会場の人たちが油断しちゃう(笑)
  • 野中先生:君の考えはいつも二項対立なんだよ(笑)中国にも陰陽の考え方があるが、これは排他的ではない。どちらも文脈に応じて正しい。葛藤を克服する絶えざる努力が必要。
  • 米倉先生:社会的リソースがあるという前提で話をするのは良くない。
  • 延岡先生:マネジメントの研究ではなく、価値に重点を置くべき。
  • 青島先生:真(米倉)・善(野中)・美(延岡)に取り囲まれる状況になってますね(笑)矛盾することの克服が以前より難しく複雑になっている。
  • 野中先生:絶えざる危機感を持つべき。常在戦場という言葉もあった。絶えず自分たちの存在意義を発していかないと。日々戦っているのは企業人だし。この20年の日本企業の後退は「成長しないと存在がなくなってしまう」という危機感の緩みから生じているのかもしれない。
  • 延岡先生:青島先生の話のような議論に流されすぎたのではないか?(笑)モジュール型のものづくりも発展しているが、一方でアップルは完全な垂直統合型でものづくりをしている。過去に日本企業がやってきたことをアップルは実現できているというのに。
  • 青島先生:もう2050分、この会場21時で閉まってここにいる人全員出られなくなってここで夜を明かすことになりますが(笑)
  • 米倉先生:この内輪揉め感、良いですね(笑)青島君はやっぱり調整型だな(笑)


300名の定員が満席になるだけあって、面白くて学びの多いスタディセッションだった。

経営とは矛盾のマネジメントとは言うけれど、教科書で言ってることが古くなっていることを思い知らされた・・・周回遅れ感を感じたなぁ。


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