2017年3月10日金曜日

20170310

今日はWABOSI SUMMIT2017 創設記念シンポジウム
WBSの川上先生・根来先生・池上先生・入山先生が登壇。

チャン・キム、レネ・モボルニュによって2005年に出版された「ブルー・オーシャン戦略」
オープニングではマレーシアからロバート・ボン教授がサプライズ登壇!
ブルー・オーシャン・シフトという新作が2017年に発売予定!

WABOSI創設の目的と活動(川上先生)

研究所名は和星(わぼし:日本の星)を目指す意図のネーミング。
学問領域(マーケティング・イノベーション・経営・競争戦略・組織論)・理論(アカデミクス)と実践(プラクティス)・文(アート)と理(サイエンス)・研究と教育と、4つの融合を目指している。

ブルー・オーシャン戦略の理論と実践(根来先生)


根来先生の味付けをした戦略の解説。

【ブルー・オーシャン戦略の特徴】

  • 典型的なツール型戦略論。なぜそれが起こるのか?という説明を目的としていない。理論とは現実の特定の抽象であり、純粋化に過ぎない。
  • バリューイノベーションが出発点。価値の提案、ノンカスタマーの取り込みが重要な市場主義に立っている。自社の資源を主発点としていない
  • お客様に何を提案するかに着目している製品主義。複数の製品を持てば組織の整合性はなくなる。

<ノンカスタマー層の分類>


  • soon to be(今はカスタマーだけれど、不満を持っていて今にも逃げ出しそうな層)
  • Refusing(使わない意思決定をした層)
  • Unexplored(そもそも検討をしていない層)
新しい需要の創造=ノンカスタマーの取り込み

【言霊化】

  • ブルー・オーシャン戦略の凄いところは「言霊化」している点。言葉になって広まって、皆が使っているという点はとても重要。言葉には物事の見方に影響する力がある。しかしながら、言葉に乗って普及したものは必ず誤解されるし、それは宿命とも言える。影響力を持った概念は、もともと持っていた意味から離れて日常化してしまう。それでも本来の概念を深く理解してビジネスに活かす道を考えることが重要。
  • 言霊化した結果、ブルー・オーシャン戦略は「競争のない市場空間を切り開き、新しい需要を掘り起こす」という意味だけが先行して広まっている。本来は「差別化と低コストを共に追求して、価値とコストのトレードオフを打破する」という二者一択ではなく二兎を追う部分がある。増やす&付け加えるだけでなく減らすことも考え、新しいバリューカーブを創造して、ノンカスタマーを取り込む。それによって価値とコストの比較から脱して、新しい需要を創造する。
  • ブルー・オーシャン戦略はビューティフルでパワフルで言霊化しているから皆さんが使っている。だからすごい。私の理論はそこまで至っていないという自虐で終わるw

【根来語録】

  • 理念型は純粋な形で議論されているから、実際にはほぼ存在しない。
  • えらい先生の理論をそのまま紹介するのは好きじゃない。輸入学問には抵抗感がある。理論家は常に新しい世界を求めているから、人が示した理論に対しては、迎合するのではなくて学問の進歩のために批判しなきゃいけない。所詮は全てを理解することはできないし自分の理解が正解とも限らないけれど、批判するためには理解しなくてはならない。
  • 全てに適用できるオールマイティ理論なんてありっこない。自分で咀嚼して、理論通りにしないことで新しい市場が切り開ける可能性がある。


ケース1:リクルートMP「スタディ・サプリ」(池上先生)


池上トークで始まり、気持ち悪く終わるパート1
池上家では「スタディ・サプリ」が具体的成果をもたらした謝意の表明からスタート。
「スタディ・サプリ」とはトップクラスの講師の講義を動画で配信するサービスで月額980円

【ブルー・オーシャン関連】

  • ブルー・オーシャンは戦略論だけに止まらない。次の本のタイトルには「シフト」とあるように適用の幅が広い。広大な新市場を創造するプロセスが明快な、組織としての方法論に移っていく。
  • 新しい画期的なアイディアができた。切れ味鋭いカッティングエッジだったりするから、それをビジネスに使おうと思っても、従来ビジネスと違いすぎると組織的な摩擦が大きいはず。
  • 覚醒のステップでは現状を戦略キャンバス描き、レッドオーシャンの度合いの現実を知って腹決めをする。ここでしっかりと現状を認識して覚悟を決めることが大切。
  • 現地探索では市場を定義する境界線、ノンカスタマーの3層を順にステップを踏んで既存客以外を見て行く。今の顧客が「嫌だな」と感じるペインポイントが見えるようになるし、新しい戦略を作る可能性を高める。

【池上語録】

  • BCG時代、先輩から言われた通りにやっているとクライアントが「ああ、いいね」と言ってくれた。
  • その後ビジネススクールでマイケルポーターの戦略論を学んで、先輩たちは理論を上手に使って指示をしてくれていた。学んで上手に使えばこのレベルに行けるということがわかった。
  • 1990年代〜2000年代はソフトバンクにいて、新規事業を立ち上げては閉じて回った。企業を閉めるのは得意。2勝8敗くらいで、勝った事業もあるよ。プロセスを経れば、かなりの部分近いところに行くのではないか?と感じた。
  • ケース・スタディは「こうしてこのようになるとと良いよ」という解説・ケース・メソッドは参加者に意思決定のトレーニングをしてもらうこと。そこで何がコツなのかを考えてもらう。
  • ケースでは確たる正解が無いため、参加者は「いい具合に尻切れとんぼで終わる、感じの悪さ」が残る。今日のシンポジウムのテーマは参加者の皆さんにいかに気持ち悪さが残るかを意識した。


ケース2:「パーク24、QBハウス、ABCクッキング、キッザニア、ネスレ日本」(川上先生)


青いジャケットが眩しい川上先生。関西なら掴みのギャグもウケたはず・・・

  • ブルー・オーシャン戦略研究所のシンポジウムなのに、誰もブルー・オーシャンを褒めない。学術的には正しいアプローチ。
  • 顧客の効用から始めよというブルー・オーシャン戦略は、マーケティングの考え方に通じるものがある。価値が良いと思われる文脈も作るべし。
  • 「ウェアラブル端末を買うのは誰だ?」という問いに対して「自分の健康を気にしている人」と答える人が多い。でも、実際には健康を考えている人がウェアラブル端末を買ったりしない。彼らは病院に行く。ウェアラブル端末は、誰かと繋がりたいと思う孤独感のある人が買う傾向がある。顧客を見よう。
  • ブルー・オーシャン戦略は今後法人向けビジネスでも重要になってくる。
  • ある国で成功したブルー・オーシャン戦略を他国に持っていけばどうなるか?という点でも研究している。QBハウスは日本では低価格カテゴリーだが、同じサービスを新興国に持って行ったら高いと感じられる。
  • ブルー・オーシャンはあるものを見つけることではない。自分たちで創るものだ。


パネル1:「ブルー・オーシャン・アントレプレナーシップ」


【田中社長】JINS:

  • ブルー・オーシャンの特徴は「ライバルを見ない」こと。顧客だけを見る。競合に対しては興味がなくなった。お客様に対してどんな価値を提供できるかを考えている。
  • 戦略は時代と共に変化して廃れる。常に時代に応じた戦略を生み出すのはビジョン。そこがしっかりしていれば良いものが生えてくるのでは。ビジョンが紐づいてないと活用できない。手に届くものはビジョンではない。数年で達成できるビジョンもビジョンとは言えない。
  • JINS MEMEはキャズムを超えると爆発するんだが、今は産みの苦しみを味わっているところ。事業の撤退か続行かを強く迫れば、メンバーは開き直って前向きになっている。腹を決めるのはとても大事。あのチームは赤字なのにムードが良い。
  • 育てるのは難しいけれど、機会を与えることは重要。失敗して辞める奴もいるけど、胆力を持った人には残って欲しい。
  • <ブルー・オーシャンを切り開く上で何が最も重要か?>好きなことをやれ。好きなことなら失敗しても次に繋がる。

【中村社長】夢の街創造委員会:

ネットで注文を受けて宅配をする出前館のサービス
  • 食の宅配は伸びるというのは分かっていたが、誰もやってないから「儲かるわけがない」と、パートナーさんに加わってくれない。レッドオーシャンよりもハードルが高いと感じた。
  • 競合もネット宅配に進出して来たが、当社は諦めずにコツコツやりきった。これやれば儲かるではなく、顧客を見て、顧客のために何ができるかを突き詰めたらブルー・オーシャンになっていった。
  • 上場する時、銀行借り入れに行くと断られた。社名が怪しいと言われ、当時知名度が出来ていたサービス名である出前館に会社名を変えろとも忠告された。しかし、自分にとっては出前館はビジョンの第一歩。
  • 修正・修正の繰り返しが多発する。トップは意思を変えない、ブレないことが大事。メンバーよりも社長がたくさん失敗したけれど、それでもブレずにやった。ブルー・オーシャンならやったことがないことがたくさんあって当たり前。
  • フードデリバリーのポータルはビジネスモデルを模倣するためにお金だけで入ってくると、成り立たない。ビジョンがあって想いがあるから続けられる。そのうち、想いが無い相手が撤退して行く。
  • 人をどうやって育てるかが課題。社長をやれる人を3〜4人いたら、自分は新規事業本部長になりたい。外からの採用もあるけれど、できれば中から育てたい。経営塾を始めてボトムアップを期待するようになってきた。
  • <ブルー・オーシャンを切り開く上で何が最も重要か?>簡単ですぐできることをやるのではない。難しいことを成功させることが重要。

【山口社長】リクルートマーケティングパートナーズ

:オンラインでの講義動画配信で教育格差を解消する。
  • 既存の教育側の人は気にしてない。これまでカスタマーに狙ってない人をターゲットにした。
  • ビジョンを掲げると、経営陣が共感してくれた。売上や利益の前に「安かろう悪かろうではなくて、本当に良い教育コンテンツを届けろ」と言われた。安くて良いものを実現できている。
  • 初めに掲げたビジョンがしっかりしていると、どこまでもブルー・オーシャンが続く。
  • 実際にやってみること。最初の予定通りにはいかない。カスタマーだけを見続けると、プロダクトの機能要件が出てくる。B2C向けにCMを撃っても生徒には信じてもらえなかったでも、学校の先生から問い合わせがたくさんきて、学校内の予習復習で使えないかという意見が出てきた。
  • ビジョンがとても高いので、状況に応じて事業の方向性を転換しても問題は生じなかった。
  • 人材にはあまり困ってない。前向きなカオスを生んでいると挑戦マインドを持った人がジョインしてくる。OJTの中で育てれば良い。むしろ、この前向きなカオスをどこまで維持するかが課題。
  • <ブルー・オーシャンを切り開く上で何が最も重要か?>覚醒のところで、苦しい中で何をやるか?覚悟・勇気を決めること

ブルー・オーシャンは誰もやったことがない領域に切り込むので、リスクも高く失敗するケースも多い。また、リリースしてから修正していくこともある。そう行ったメンバーをモチベートするには理念が大事というトークが印象深かった。

パネル2:「食と医療のブルー・オーシャン戦略」



【鳥越社長】相模屋食料:

ザク豆腐で有名になった豆腐メーカー 
  • 豆腐という伝統食品市場(超成熟市場)にいるが、10年間で売上5倍に伸びた。
  • ターゲットを絞ったザク豆腐、女性に向けたナチュラル豆腐をリリースしている。
  • 自分たちが豆腐市場はダメだと皆が思っていると、レッドオーシャンに感じてしまう。その中で実はものすごい真っ青じゃないかと思ってしまえば、ブルー・オーシャンになる。
  • 「豆腐屋は規模を大きくしたら潰れる」という誰が決めたかもわからない、裏付けのない言い伝えをずっと信じていた業界だった。
  • 選択肢は無限だ!という概念ではなく、目の前の有限の現実的課題に取り組むことが重要。
  • 「圧倒的」という言葉はガンダムの中ではアムロとギレンが使っている。このフレーズが好きで、ザク豆腐の広告にも盛り込んだ。
  • 豆腐業界の常識に反して、年間売上32億円の時に40億円の設備投資を決めた。価格競争ではなくて、本当に美味しい豆腐を作ったら「これを待ってたんだよ」とお客様から言われた。


【平井社長】日本経営:

ヘルスケア分野に特化したコンサルティングファーム  
  • 日本の医療費は毎年1兆円ずつ増加しており、健康寿命と平均寿命の間には10年以上の差がある。
  • 良質な医療が提供できれば入院も短く医療費を削減できる。医療は地域の中で競争するのではなく仲良くやれという形で政府も舵を切っている。各地域でベッドが多いほど医療費が高くなっているため、国はベッドを減らしてきた。
  • 1980年から日本経営はヘルスケアで特化して集中してコンサルティングを提供してきた。開業医だけが対象だったのが、病院にフォーカスしてきた。
  • うまく経営されている病院では「Always Say Yes」という理念が行き渡っている。組織の中の核となっている言葉で、どんな患者でも受け入れる意気込みになっている。他の医療機関が手に負えないと判断した患者でも受け入れており「とにかく患者さんのために」という意識が根付いている。


【石橋CMO】ネスレ日本 

  • コーヒー・キットカットなど食品部門という一見するとレッドオーシャンな市場にいる。
  • 高岡社長が就任した後、ネスレ日本の業務ではマーケティング的発想を持つべしと推進した。マーケティング的な発想とは「顧客の問題を発見して解決策を提案すること」
  • 最初からブルー・オーシャンを意識したわけではない。潜在的な問題と顕在化した問題がある。顧客が意識していないイノベーションで解決を提案できれば、結果論としてブルー・オーシャンになるのかもしれない。
  • アンバサダーでコーヒーマシンでコーヒーを作って飲む経験をしてもらうと、何人かは自宅用のコーヒーマシン購入に繋がることもあった。そのようなチェーンリアクションも起こっている。
  • 今までサーブされてこなかったノンカスタマーに対して市場を創造していったが、最初からこんな綺麗な戦略があったのではない。ネスカフェコーヒーバリスタの数を売りたくて、その一例として導入場所にオフィスを考えた。モニターを100人応募したら、2000人くらい応募が来た。そこでインタビューをして「隣の席の人とメールで会話をするような仕事になってしまった」という話を聞くことができた。コーヒーマシンを置くことでオフィスでの仕事環境が変わったと感じることもできた。試行錯誤で失敗もしたけれど、方向修正しながら進めて来た。

【池上語録】

  • お客様がいる現場に行って、現場を観察しなさい。これは現地探索というプロセス。マーケティングリサーチに任せっぱなしにしてはいけない。試行錯誤で失敗もしたけれど、方向修正しながら進めて来た。
  • 質が高いのにコストを低く抑えて利益が高い企業がある。ポーターの戦略論では付加価値かコストかになるが、周囲の競合が中途半端な戦略をとっているときは、両立しやすいことがある。
  • 自分が何で勝っているのか?を理解できていないと、次のステップが変わってしまう。実務の上では、時々理論に当てはめてみると分かりやすい。
  • このパネルディスカッションも非常に気持ち悪い状態で終わります。

本日の流行語大賞は「言霊」



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