2017年3月6日月曜日

20161002

【ビジネスモデル学会聴講メモ】

スタートは平野先生の基調講演。HBRに寄稿した記事のプレゼン版。
19世紀は大資本家が、20世紀は大企業と国が、21世紀は起業家がドライブする時代になるだろう。
ハブ&スポークの中央集権型から分散型へと変わっていく。
情報も人も集まることではなく、つながることで価値を生み出していく時代は20世紀の考え方ではミスマッチが生じるから、起業家が推進していくのだね。
詳細はHBRを買え(笑)

2番手は日立コンサルティングの八尋氏の講演。
社会経済システムが大きく変貌し、ITで情報がつながることで決定者がメーカーからユーザーへと移り、モノの消費からサービス・体験の経済へと変わっていく。
企業の中から消費者を見るだけでは20世紀の経済だけど、ユーザーの立場で再定義しないといかんなぁと言う印象。
過去の経験で先輩ヅラできない時代になるというのは耳が痛い(笑)
その時その時で外部環境・顧客ニーズに応じたバリューを出していかないといけない時代・・・厳しいけど面白い時代になるね。

この後は会場を移って学術論文発表が15×4本。
平野先生がタイムキーパーを務めるという超豪華発表(笑)
コメンテーターの東工大田辺先生が発表者4人をなで斬りにしていく様を観察。
アカデミアで発表するのは難しいな・・・プレゼンの建てつけ自体は論文をイメージした構造になってたと思うけれど。

午後は環境保護団体であるWWFの東梅氏から、サステイナブルな経済エコシステムへの変革に関する発表。
勉強不足で情けないが、環境保護の観点から企業に注意喚起をしている団体だとしか認識してなかったが、今日の発表を聞いて認識を新たにした。
過去40年で自然の豊かさ・生物多様性は52%減少している。
日本にいてそう感じないのは、先進国では+10%回復している一方で、新興国でー58%と直接見えないところで大きく悪化しているから。
森林エコシステムを減少させているのはパーム油・大豆・牛肉・紙になる。
パーム油は酸化しにくいため食品の保存性をあげて豊かで便利な生活を支えている。
自然環境が悪化して調達できなくなるというのは企業にとってのリスク要因の1つになる。
昔は自然資本の利回りで食っていけたけど、今は元本に手をつけ始めている状態という例えはすごく腹落ちした説明だった。
パーム油を使うな!と不買運動をしても、他の製品を使って環境破壊が進んだら意味がない。
そこで経済システム全体を見直した結果、消費者と生産者は莫大な規模であるが、サプライチェーンはそれらに比べれば限られていることから、最もレバレッジが効くと考え、企業と一緒になって改革を始めた。
環境保護の観点から、自然資産を効率的に利用した調達のイノベーションを起こした新しいビジネスエコシステムが必要という大変に面白い講演だった。

次は日本交通の川鍋氏と尾原氏の対談。
尾原氏はバリ在住で、ネット通話と会場のロボットを利用した対談!すごい面白い絵面だった。
尾原氏「すべての講演会場にこのロボットとリモート端末があれば会場に行かなくても講演出来る。VR技術が進めば会場の様子もわかる」
尾原氏「VRが発展すると誰かの追体験も簡単に出来る。最近サーファーが増えたのは、サーフィンの様子を示す動画が増えたから。誰かの体験を簡単にコピーできる時代」
川鍋氏「自動運転だとタクシーのコストは3分の1くらいに落ちる。タクシーには2000円の壁があって、それ以上遠距離ではタクシーに乗らなかった。もし6000円分の距離を移動するのが普通の時代になれば、今までは電車で行ってたところにもタクシーを使うことになるだろう」
尾原氏「Uberで同乗した人の中には同じ場所に行く人もいるだろうし、それが新たな出会いを生み出す可能性は高い」
川鍋氏「敵情視察で乗ったが、若い女性が乗ってきたとき、46歳で二人の子持ち日本人としてどうすべきか迷った(笑)」
川鍋氏「トヨタと協力して新しいタクシー車両を2020年にはリリース予定。車椅子もそのまま乗る」
尾原氏「ベルリン観光のホスピタリティの活動で、老人ホームの女性がガイドを務める事例がある。自分では移動できないけど、ロボットとネット通話を利用して外国人観光客のガイドを行うことで、自由に動けなくなった方にも生きがいを与える効果が出てきている」
尾原氏「日本ではVirtualを仮想的と翻訳したのは間違い。あれは仮想空間で実現するだけではなく、実質的に代替するという意味合いがある。仮想と言い続けて別物というイメージがついてしまった。Virtualな体験で実質的な便益は得られているけれど、そうなるとRealな体験をしたくなるもの」
川鍋氏「サントリーと組んで伊右衛門タクシーを走らせて伊右衛門の世界をアピールしたり、ポカリと組んでお酒の後にポカリを勧めるキャンペーンもやっている。お酒の後にポカリを飲むと酔いが更に回るという悪いイメージがあるが、それを払拭したくてやっている。タクシー乗車時間平均18分をうまく活用する事例」
尾原氏「サントリーの事例はFacebook的。コンテンツを用意して顧客に届けている。ポカリの事例はGoogle的。飲み屋を探す顧客に提供すると、顧客が知りたい情報を先回りして届けている」
尾原氏「もともと移動と消費行動は相性が良い。移動情報には価値がある」
 川鍋氏「2020年には東京の全てのタクシーに全言語対応のタブレットを積む。観光客の行き先や知りたいことを入力してもらう。日本の若者は1年に0.5回しか旅行しない。スマホいじって君の名はとシン・ゴジラを見に行くだけの人をいかに外に連れ出すかがポイント」
川鍋氏「タクシーはオペレーション・ソフトウェア・ハードウェアの垣根が消えつつある。産業の付加価値が移ってきているので、それをどう再統合するかがポイント」

対談2本目は電通の森氏と慶応中村先生のクールジャパンについて。
コンテンツビジネスは、国内は縮小傾向だが、海外は成長基調である。
日本の良いコンテンツをもっと海外へ!という話。
オタゲーマーとしての経験から「最初からグローバル市場を狙ったゲーム」ってかなりの割合で外してきたと思うんだよね。
アメリカでも中国でも欧州でも売れるコンテンツってターゲティングしてないのと同義のように感じてしまうんだがなぁ。
日本アニメが日本のオタ向けに作った作品だからこそ、欧州で自主的に集まってイベント開くくらいに強烈なインパクトを与えたんじゃないのかなぁ。
いろいろと考えさせられた対談だった。
スライド超おもしろかった。
フランスのJapan Expoで日本の女子高生のコスプレをしてる人もいたとは・・・
さらに懐かしいヤマンバのコスプレなんかもあったそうな。
私の大学生時代が最盛期だったが、あれは本当にいろんなものを台無しにする部族だったな(笑)

対談3本目は日産の長谷川氏と東工大辻本先生。
でも辻本先生はススッと隠れて長谷川氏の講演が9割がた。
技術的不合理と社会的不合理に関する考察。
サラリーマンあるあるをたっぷり聴かせていただいたが、関西弁の影響か気持ちが落ち込むことなくカラッとした講演で聞いていて面白かった。
技術的不合理は、ガソリンエンジンの方が燃料電池エンジンよりも安いという点。
本来はシートを積み重ねるだけのシンプル構造の燃料電池エンジンの方が安く作れるはずなのに、わざわざガソリンエンジンと同じようなロボットを利用した作り方をしてコストを跳ね上げてしまっている。
社会的不合理は、理想と現実の間のGap Analysisをせずに社会的使命を勝手に感じて多額の税金などを突っ込んで難問からむやみに取り掛かっている現状。
「少しずつステップを踏んでギャップを解消していくべきでしょ!なんだって180兆円の世界最大産業である自動車から手をつけるのさ!ケーキ作る時にいきなりウェディングケーキから始めるのではなくて、一口カップケーキから始めなさいよ!」
「車を事業で使ってGDPに貢献しているのは550万人くらい。欧州ではそこ向けの車を作り始めているのに、日本企業はボリュームがあるからといって一般ユーザーに売りたがる」
「日産の人は忙しがりたがっているように見える」
「不合理を解いた先に希望がある」
長谷川氏の行動力の高さに脱帽。

ラストはクスマノ先生の目玉講演。 ・・・日本語に堪能とは存じなかった。
すげー
マイクロソフトのビルゲイツ、インテルのアンディグローブ、アップルのスティーブジョブズの分析結果からの解説。
1.Look Forward,Reason Back
将来を見て、そこから逆算して何をすべきか決める
2.Make Big bets. without Betting the Company
かけに出ろ。でも企業がつぶれるような賭けはするな
3.Build Platform & Ecosystem, Not just Products
単に製品を作るんじゃなくて、プラットフォームとエコシステムを構築しろ
4.Exploit Leverage & Power, Play Judo & Sumo
レバレッジが効くポイントと力を見極めろ。柔道や相撲を見習え
5.Shape the Organization around a Personal Anchor
個人的な強みを核にして組織を作れ

最後の「彼らは未来を見たんじゃない。未来を作ったんだ」という言葉には感動した。
来るべき未来を見て、今やるべきことをやって、思い描いた未来を現実のものにしたんだね。
半導体業界はムーアの法則は7nm世代であらかた終わるだろうと言われているから、2020年までには大きな変革がありそうだなぁ。
パラダイムシフトが間近に迫ってる感があって不安ではあるが楽しみでもある。

1日講演を聞いていて、シェアリングエコノミーにはまだ違和感が残る。
今のサービスは大量生産された(規模の経済の恩恵を受けた)低コストの資産をシェアリングすることで、利用者の固定費負担を分散して超低コストを実現しているように見える。
将来に大量生産の時代が終わった時、シェアリングエコノミーによるコスト低減効果は、少数生産によるコスト増を打ち消して成長できるのかな?と言う点について。
今は大量生産の良いところにシェアリングエコノミーがフリーライドしているような違和感を感じてる。
差し引きすればコストは下がるだろうなとは思うけれど。もうちょっと考えとこう。
この手の学会には初参加であったが、大変学びの多い学会だった。
特に午後の対談形式はすごく面白かった。

スタッフとして日曜に朝から晩まで頑張ってた平野ゼミのみなさん、本当にお疲れ様でした。

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