2017年5月17日水曜日

20170517

『東芝解体 電機メーカーが消える日』(大西康之:講談社)

シャープや東芝の報道で大活躍の大西さんの本。裏の帯には「本書は名著『失敗の本質』の総合電機版である」とある通り、経営の失敗の流れを取材したファクトベースで構造化している。

『失敗の本質』では各地の戦闘で行われた意思決定と行動から失敗要因を解き明かしている。外部環境や競合相手の戦略が大きく変わっているにも関わらず、過去の成功体験に根付いた戦略の続行を決定した。現場においても自分たちの戦力を過大評価・相手の戦力を過小評価した上で、本部からの命令を軽視して現場最適な意思決定を行い続けた。
ある意味、日本の電機メーカーの置かれた環境もそうだったのかもしれない。

本著では日本の電機メーカーの過去の成功体験を「電電ファミリー(NEC・富士通・東芝・日立)」「電力ファミリー(東芝・日立・三菱)」による独占市場での競争なき技術開発と経済成長に置いている。このような囲われた環境を大西さんは「社会主義的なミルク補給」と名付けている。
ミルク補給が行われていた時代において、企業が対応すべき「顧客からの要望」とは電力会社・NTTが与えてくれる明示されたハードルであり、自分たちで探すものではなかった。言わば、索敵して情報収集した結果に基づいて戦略を変更し、それにふさわしいように自己変革を行う能力が電機メーカーに備わることが無かったとの解釈が成り立つかもしれない。

さらには「総合電機」と多角化して収益源を分散化したことによって、個々の戦地での本気度が薄まってしまった。本命の戦場は持っていたが故に、「ここは負けても良い」と思ったところで負けた結果に繋がった。

企業ごとの問題点を指摘しているが、しっかり数字やファクトが時系列でもまとまっているので経営の流れを理解しやすい構造になっている。

東芝:「電力ファミリーの正妻」は解体へ(36ページ)
NEC:「電電ファミリーの長兄」も墜落寸前(18ページ)
シャープ:台湾・ホンハイ傘下で再浮上(41ページ)
ソニー:平井改革の正念場(33ページ)
パナソニック:立ちすくむ巨人(29ページ)
日立製作所:エリート野武士集団の刺客(21ページ)
三菱電機:実は構造改革の優等生?(9ページ)
富士通:コンピューターの雄も今は昔(14ページ)

「おわりに」の記載では日本の技術者たちの再出発のエピソードが紹介されている。最後の最後にホロリとさせて希望を抱かせるのは大西さん流なんだろうか(笑)『ロケット・ササキ』でも同じように感じたわ。


Amazonのリンクを作ろうと「電機メーカーが消える日」を検索すると、本著と一緒にコスプレウィッグが上がってきた(笑)



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