2017年5月26日金曜日

20170526

今日は野口悠紀雄講演会「トランプの経済政策はアメリカを変えるか」に参加。

日本橋キャンパスから早稲田に移って来たので、参加できるようになったー
30分の講義と、30分の質疑応答スタイル。レポートは講演部分のみ。

政権誕生時は「アメリカの経済の強さを壊すのではないか?」と心配する声も多かった。
現在は「あまり心配することもないのではないか?」となっている。
経済問題以外のところで混乱が起こっている。減税やインフラ整備などがきちんとできるのか?心配になってきた面もある。


【アメリカの経済の強さ】
  • 1人あたりGDP1995年日米で比較すると、日本は長期的にみてほとんど伸びていない。アメリカはずっと成長し続けている。非常にはっきりと現れている。
  • 経済成長のエンジンはハイテク産業で、鉄鋼や自動車産業の成長ではなく新しい産業が成長しているのが重要なポイント。GAFAGoogle/Apple/Facebook/Amazon)がアメリカの時価総額トップ。これらが経済を牽引している。
  • トランプ政権誕生時はGAFAは少し時価総額が下がり、鉄鋼などの従来型企業の株価が上がった。多くの人はハイテク産業はこれから問題を抱えるのではないかと感じた。
  • しかし、現在はトランプ政策によって伝統企業が有利になると思われていたが、トランプの思い通りにはならないという期待が一般的になった。
  • UberJR東日本よりも、Airbnbはヒルトンよりも時価総額が大きくなっている。アメリカの強さはこれらの新しいハイテク企業の強さにある。



【ハイテク産業の労働者に対するビザ H-IB
  • 大学を出た専門知識を持つ人が一定期間働くことができるビザ。シリコンバレーは海外から来た人が画期的な技術を開発したので、このビザの影響が大きい。
  • 政権誕生時、トランプはそういった人たちを排除したい(伝統的産業を向いており、アンチシリコンバレーである)と思われていた。もしそうなるとシリコンバレーにとっては大きな制約になる。
  • まだ決着したわけではないが、ビザの見直しは支給の条件を変える方向で検討している。
  • 数を絞るのではなく、安い賃金の人には認めない方針。
  • アメリカから多くの仕事をインドにアウトソースしている。インドの企業は仕事を受注するために多くのインド人従業員をアメリカ企業に送り込んでいる。アメリカで一定期間働き、最先端の技術を学んで人間関係を築いて来た。このような使われ方が多く、本来の使われ方ではないので批判も多かった。
  • 本来は高い能力を持った人がアメリカに住んでもらうためのビザだったので、邪道であると批判していた。トランプ政権の改正は所得に下限を設けることで、これらの低賃金労働者を排除する狙いがある。実はアメリカのハイテク産業の意向に沿う形の改革になりそうだ。GAFAの株価が持ち直したのはこの理由だろう。



【税制改革】
<国境税>
アメリカの国内の法人税を課して、アメリカから輸出する製品には法人税を免除する。輸入を減らして輸出を増やして貿易収支を改善しようとした。外国のアメリカへの輸出産業には大きな損害となると見られ、日本・中国・ドイツには大きな問題となると見られていたが、結局なくなった。

<アメリカの法人税>
全世界の所得に課税する仕組み
アメリカの企業は海外の事業所で稼いだ利益にも全て課税されるため、二重課税が発生する。そのため、海外で納税した分については税額控除する仕組みになっていた。企業がアメリカに工場を移したとしても、法人税制度が中立になる。

<ヨーロッパの法人税>
国外の所得には非課税で、国内所得にのみ課税している。
結果的にヨーロッパ大陸の国では工場誘致のために法人税の引き下げ競争が発生した。

<日本の法人税>
日本は元々アメリカと同じやり方だったが、2009年にヨーロッパに近い課税方法に切り替えた。
海外事業所からの配当にはほぼ課税しない形式になった。

<アメリカの法人税に関する議論>
アメリカの課税方式は合理的ではないと不平が多かった。
共和党の税制改革案は国外所得非課税方式に転換すべきと主張していた。
アメリカが全世界課税方式をとった結果、海外で稼いだ利益を配当として還元すると課税されてしまうため、海外に置いたままにする企業も現れて来た。本社をアメリカから海外に移してしまう企業も登場している。
トランプ案は配当への課税も低くすると提案していた。共和党案と似ているが同じではない。
今では「アメリカ経済に大きな変化が起こることはない」という見通しが高まっている。弱ったりはしないだろう。






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