『経営戦略原論』(琴坂将広:東洋経済新報社)
タイトルに「原論」とあるとおり、個々の経営戦略理論の裏側を解説しながら理論体系全体を分かりやすく解説した名著。しかもアカデミックな理論解説に終わらず、実務家としての立場からの解説まで含まれている。これで2,000円は破格のお値段!
経営戦略について学んだ経験のある人が読むと「そういう意味があったのか!」「その前提条件知らなかった!」「そこ勘違いしてた」という発見が至るところに存在するだろう。特にフレームワークだけ使って「やっぱ古いフレームワークに頼っちゃダメだよね」などと意識高い系批判をしていた人には耳が痛い(笑)
また、中小企業診断士では1次試験で暗記型でぎゅっと経営戦略知識を頭に叩き込むが、その後は実践重視というスタンスの方が多いと思う。今まで頭の中にはいってた戦略知識を棚卸しして再整理すると、自分の武器の使い方が変わってちょうど良い。こういうのを理論政策更新研修に盛り込むべきではなかろうかな。
著者の琴坂先生は学生時代に企業経営に携わった後にマッキンゼーでコンサルタントとして活躍。その後アカデミックの世界に入られた経営学者。
経営戦略にはアカデミックな理論と実務家による実践の2つの側面があるが、著者がその2つの両方にコミットしているところが大変ユニークなポイントだと思う。「アカデミックで得られた知見を実務家に」「実務経験で得た示唆をアカデミックに」と立ち位置をどちらかに置いて、相対する側に知見を提供するというのが一般的なポジションのように思えるが、実際に両方をやりながら両方で成果を出し続けるというのはすごいの一言。
参考文献リストも充実していて、ずっと手元に置いておきたい1冊。
【目次】
第1章:「経営戦略」をいかに定義するか
第2章:経営戦略前史 紀元前からその歴史をたどる
第3章:経営戦略の黎明期 予実管理から戦略計画へ
第4章:外部環境分析 ポーターのファイブ・フォース分析から考える
第5章:内部環境分析 バーニーの資源ベース理論から考える
第6章:事業戦略を立案する その定石と戦略フレームワークの活用法
第7章:全社戦略を立案する 組織の永続に必要な4つの取組み
第8章:経営戦略を実行する 重要業績評価指標(KPI)の適切な運用
第9章:経営戦略を浸透させる 人間への理解がもたらす組織の前進
第10章:新興企業の経営戦略 意図されない戦略を、どう意図的に作るか
第11章:多国籍企業の経営戦略 国境を超越する経営に、どう戦略的に取り組むか
第12章:技術の進化が導く経営戦略の未来
初めて経営戦略を勉強する人には分からない単語が多すぎるので、グロービスの経営戦略から入るのが個人的にはオススメ。有名実務家のビジネス書を何冊か読んでから本書に戻って来ると理解度がぐっと高まるような気がする。
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