2018年9月1日土曜日

20180831:PFイベント 得するLGBT〜“生産性がない”にどう反論できる?

ストライプインターナショナルの社内イベント「得するLGBT生産性がないにどう反論できる?」にお邪魔してきた。

講師はカレーマイスターの長内さん。


問い:そもそもLGBT支援は施しなのか?社会が施しとしてやらなくてはならないのか?生産性は常に善なのか?

企業の社会貢献活動はメセナと呼ばれており、バブルの終わりにお金が余っていた企業が社会貢献する活動と認識されていた。しかしメセナ協議会は今でも活動している。メセナはバブル崩壊時に一度下がるものの、その後は順調に上がって、大手の会社中心にコンスタントに続いている。サントリーホールや文化村など。

バブルで浮かれていた頃にお金が余ったからやってみたが、不景気になったら引っ込めたといった、一過性の社会事業には以下のデメリットがある。

  1. 社会的損失が大きい。せっかく始めたことを辞めてしまうことは、最初からやってない方が良かったかもしれない。
  2. かっこ悪い。
  3. 長期的戦略に弱い。そのときは大切だと思って始めたのに、経営状況によって方針が変わるかもしれない。安易に社会事業を辞めてしまうと、戦略的な信用に関わってくるので安易にやめてはいけない。地道にやっていく必要がある。サステイナブルに、ある程度継続していかないとトータルでみたときに会社の評価につながらない。

会社の状況によっては辞めなくてはいけない場合もある。状況の変化に関わらず変えないもの、状況に応じて変えるものをどう捉えるべきか?

<事例:ソニー太陽>
  • 一番継続できるものとは、お金をかけずに「施し」ではなくて「配慮」としてすることと言える。
  • ソニー太陽とは、太陽の家がソニーと合弁でやっている工場で、国内で唯一のソニーの生産拠点。工場長以下、ほとんどの社員が障害者で構成されている。
  • ヘッドホンやスピーカーといったオーディオ機器を作っていて、放送局用のマイクでは70%の世界シェアを持っている。この工場がなければ世界の放送が成り立たない。
  • この工場で行っているのは施しではなくて配慮。工場の生産ラインには車椅子でも入りやすいようになっている。しかし、これは障害者雇用のためにやっている工場ではない。
  • 障害を持っている人にも配慮がなされているので働きやすい環境があり、ノウハウが蓄積されて他に移転されない。マイクやヘッドフォンの生産はここでしかできないというレベルにまでノウハウが蓄積されている。


LGBT
  • 損得で考えると長く続けやすい。持続する施策が何よりも重要。「外に対して企業がどう映るか?」「企業の中にどのような資源が蓄積できるか?どんな知識が根付くか?」という観点で考察する。
  • 外向きの効果:LGBTにフレンドリーの会社は非常にクリエイティブで多様性があり、購買意欲が増すと受け止められている。これまで多くの議論ではLGBT支援の妥当性は社会的貢献と外向きの効果でしか語られてこなかった。
  • 内向きの効果:LGBTに理解があることそのものが企業のクリエイティビティを高める。長期的な変化に対応できる企業文化を形成する。


<なぜアパレルにLGBTインクルーシブな企業が多いのか?>
  • LGBTはデザイン性・新しさ・高品質を好む傾向がある。また、一般的に可処分所得が多いという要素もある。「寂しさと自分の生活のクオリティと天秤にかけてどっちを取るのかという問題」と、おすぎが言っていた。
  • 一般的にLGBTの方が社会的に困難が多い。養子でないと子供を持ちにくいし、寂しさはある。その代わりに可処分所得があって自分に対してお金が使える。高品質なもの、新しいデザインを選ぶ。企業もそのような人のニーズを満たそうとする。
  • バーバリー、アップルのCEOLGBTであることを公開しているが、その特等をプラスに捉えている。それによって、幅広い見識が得られて・困難に対応する力を得たとプラスαの部分をとらえている。


LGBTの人的ネットワーク>
  • 調査内容:人に自分の友達を上げてもらい、その人の年齢・学歴・仕事を記録してもらう。非LGBTの場合、年齢・職業など環境が同じで同質的な友人関係が多い。社会で何らかの組織に属しているし、いろんな組織がある。似通った人たち・似通った思考を持っている人たち・共通した経験を持っている人が集まりやすいので、当然同質的になりやすい。
  • しかし、LGBTの場合は年齢も仕事もバラバラの人を友人としてあげてきた。かなりバラツキが大きい。20代の人に友人を聞いて、60代が出てくる。
  • コミュニティを通じて出会っていて、年齢や職業があまり関係ない。会社や大学でのコミュニティを持っているが、プラスアルファとしてのコミュニティを持っている可能性があり、それが多様性を生んでいる。
  • データに出てきたようなLGBTインクルーシブだとクリエイティブ・品質が高い・創造的なところにつながっている。


<新しい関係性→多様性→イノベーション>
  • 自分(長内さん)とそこにいる人(佐々木)は良く似ていると言われる。オタク気質なところに寄るだろう。似通った中で話をしていても新しいことは出てこない。しかし、すっ飛んだ二宮さんが入ってくると全然違うことを言ってくる。そこに違う発見がある。同質的でない関係性が多様性を生み出す。
  • イノベーションとは新結合のこと。新しい組み合わせが重要だが、この世で全く新しいものなど存在しない。既存のものの組み合わせ方の新しさがイノベーションの源泉。新しい組み合わせを探すには、新しく組み合わせる元を持っていなくてはならない。


2つの階層構造>
1LGBT層の人は多様性に富んでいる傾向がある。それは企業にとって優位。
2LGBT層を理解すること自体が、自分の中で多様性を生み出すことになる。
  • 当事者ではない人が、自分には関係ないと思ってしまうと新しい多様性を身につける機会を失ってしまう。異質なものを受け入れられるということは、自分が対象と同質化することではない。そこにいると受け入れるだけで自分が変わることができる。


<生産性のジレンマ>
  • 生産性と多様性は相反する関係にある。生産性が高まると多様性は落ちる。アバナシー先生はこれを生産性のジレンマと呼んだ。
  • アメリカの自動車工場で調査した結果、ある工場では非常に生産性が高く、効率よく仕事をしている。また、別の工場では生産性が悪いが、そこからは新しいアイディアが出てくることが分かった。
  • 生産性をあげよう→無駄をなくそう→一つのことに集中→新しい創造がなくなる
  • 一つのこと以外のものを排除して効率を上げることは一般的には良いことだと言われているが、そうするとクリエイティブなことができなくなる。


  • これまでこれでうまくやってきたんだ:これまでの方法以外を見ない。
  • 前例はないのか:前例がない、新しいことをしない。
  • まずは売上だ:売上という1つの指標でしか評価しなくなる。
  • 無駄をなくして業績をあげろ:多様性を排除している。
  • 社長が言ってるんだから:今の社長だけが指針になって広がりがない。


S社社長の話:事例>
  • 当時の社長は仙台からやってきたイマイチなおじさんだった。工場長としては優秀だったが、社長としてはダメだった。
  • 「効率をあげて、ソニーらしい商品を効率よく出していこう」と言っていたが、そんなことはそもそもできない。計画的に無駄をすることが新しいものを作る。
  • 会社が危ない状況の場合は正しいのだが、企業を成長させるには譲れない無駄を受け止める覚悟が必要。
  • 人の言葉は分かるんだけど、話している言葉の意味がわからないから「チューバッカ」と呼んでいた。スターウォーズが分からないと通じませんね。


<生産性と多様性/効率的と効果的>
  • 目標が明確で答えがここだとわかっていれば、ゴールまでの最短距離を直線で進むのが効率的。逆に将来のゴールが見えない状態で候補として3つの可能性がある場合に、曲がりながら色んな場所を探索してできるだけいろんな可能性にトライするのが効果的。ゴールの可能性が増えると、寄り道しなくてはならない要素が増える。回る場所の全部が正しいとは言えないけれど、回るべき。
  • 残念ながら、効率重視の会社だとなんとかゴールを設定しようとする。とりあえず何でもいいからゴールを設定して、そこに一直線で行こうとする。既存事業の経験を使ってゴールを捻出し、そこをゴールと仮定して直線で進んでしまう。そうして周辺を探索することなく、本当のゴールを見失ってしまって新規事業に失敗する。
  • 効率と効果は両方必要。会社は一人ではやっていない。効果を追うのに適した人・効率を追うのに適した人をうまく使い分けるべき。また、時間軸で使い分けることもあるかもしれない。ある状況では効果を、ある状況では効率を追求する。空間軸で事業Aでは効果を狙い、事業Bでは効率を狙うなど。
  • 変化が激しい環境:新規事業を起こす場合、その先がどうなるかわからない。コツコツ進めるタイプは向いていない。
  • 変化が緩やかな環境:先の見通しが立ちやすい。仕事の仕方としても無駄をなくて行った方が良い。会社の中では間接部門の仕事が該当する。コツコツと真面目な人が集中してやる人がよい。あちこち見てしまう人は向いていない。その2つの仕事には全く違う資質が必要とされる。
  • 最初は変化が激しかったけれど、それから緩やかになってしまうことはある。最初は無駄を許容して多様性を追求するが、その後は効率重視にした方が良い。新しい事業に再参入して変化が激しくなったときは、またやり方を変えないといけない。
  • 会社の中に複数のブランドがあるとき、共通の強みを生かして効率性を向上させることは大切。複数の事業をバラバラにやるよりは効率が良い。
  • しかし、効率性だけを追求するとブランド間の差がなくなる。差を追求する必要がある。そのためには計画的にお互いを競わせるのも良い。それにかけるコストは無駄になるが、ブランド間で違うことをやらせることが重要。競争は新しいことを考える源泉になる。そのような考えをすることが大事。


<「違っている」を認める>
  • 無駄は無駄じゃない。効果的な仕事には計画された無駄が必要。効率だけだとつまらない。クリエイティビティは違いから生まれる。
  • 生産性だけの社会はつまらない。遊びがないとつまらない。それは仕事も同じで、長く仕事をするには、飽きられてはダメだし、新しいパターンに適用しなくてはいけない。成功パターンを1個だけしか持ってないと失敗する。
  • 長く仕事をするためには違いを認めていくことが大切。ある種の反骨精神を持った人と従順な人の両方が必要。



【質疑応答】

Q1
自分は理解がある方だと思っていた。該当者も入社したが、性格も様々。色々な性格の人がいる中でうまくやっていくにはどうすれば良いか?

A1
LGBTのどこに配慮したら良いか?隠していることに対する負担を軽くして、その後はほっとくこと。他の人と一緒。結婚の話・彼氏彼女の話をしない。それ以上のことはしない方が良い。

日本のLGBT1つにまとまっているわけではない。選挙でLGBTをメインに掲げた候補者は当選しにくい。24時間LGBTで生きているわけではない。その人の個性も様々。ミスチルが好き、ハンバーグが好き、現職は嫌いとか。
様々な話の99%は非LGBTと変わらない。考えすぎると逆に差別になる。LGBT
だけでひとかたまりになっているわけではない。100ある特徴のうちの1つという位置付け。


Q2
ソニー太陽の工場で施しと配慮という話があった。どこからが施しで、どこまでが配慮なのか?線引きが難しい。

A2
感じ方の問題で、境界の設定はハラスメントと同じ。受け止める人によって変わる。配慮されていると感じるか、過剰だと受け止められると施しとされる。自分の心に負担がかからない人もいれば、障害者雇用にやってくれていると罪悪感を感じてしまうこともあるだろう。
誰かに何かをしてあげるというのは何らかのプレッシャーをあげることになる。喜ぶか喜んでいないかわからない。最低限それをしないと行けないという点だけやる。受け止められ方のリスクについては、配慮する側が甘んじて享受しなくてはならない。

ニノ
多様性がないと、そもそも考えが及ばない。相手がどう思うかを慮る必要がある。多様な価値観に触れて引き出しを増やしておかないとダメ。線引きは難しい。自分の引いた線で不満を覚えてしまうかもしれない。


Q3
人種や障害者など社会的なマイノリティに対する配慮は以前からあって慣れ親しんでいる。
しかし、性的マイノリティの部分で、ピンとこない点がある。どのような配慮・反応をすれば良いのか?知識がないだけで違和感を持っていない人も多いのではないか?
性的なタブーの話に入ると、言葉として発してしまったことが相手を傷つけてしまう。とんねるずと同級生世代。異を唱える感覚を持っていない。ギャグとしてやっていた。彼らは配慮をしたつもりがそうなってしまったのではないか?

A3
とんねるずネタの80年代からあったが、当時は問題にならなかった。それは表面化していなかっただけ。人間は悪いことをしようとして悪いことをするだけ、悪人になれない。80年代のLGBTはそれが差別だと社会が認知するまで時間がかかった。
1950年代のアメリカでは白人と黒人が別々の学校に行っていたが、白人は差別しているとは思ってもいなかった。差別されている側は辛さを内に秘めていた。だんだん声に出して言えるようになってきたときに「それは差別だね」となった。そのときに新しい情報に基づいて配慮ができるかどうかが重要。それによって虐げられているかもしれない。
実は70年代から窮屈に思っている人はいた。今振り返ってみたら、当時を責めるのではなく、今を考えてみると良い。

Q4
様々なLGBTの話を聞いてきたが、捉え方が違っていて驚いた。効率と効果という捉え方は面白かった。事業をやっている側としては、効率と効果のバランスはとても難しい。クリエイティビティに走りすぎると問題もある。正解がないのはわかっているが、バランスを取るにはどのようにすれば良いだろうか?

A4
ゴールが設定しにくいときは、新しいことをやる部署を本部から切り離して放っておく。新しい変化は周辺部分から生まれる。周辺にいるとほっといてもらえる。民主的なプロセスで多くの関係者の意思決定が入ってくると尖っていたはずの角が取れてしまう。

ニノ
経験値のジレンマ:「それは昔に失敗したんだよ、それやっても無駄だよ」とアイディアが生まれても潰してしまう

長内さんコメント
コアケイパビリティは企業の中核的能力のことであるが、素晴らしい能力であっても、時間が経つと中核的な硬直性になる。過去の成功体験を引きずってしまうということ。老害といっても良いだろう。
差別という話からスタートしている。新しい状況が生まれたときに、どこまで状況できるか?人種?性別? LGBT?新しいパターンを認めていくというメタなところにある能力が大切。
規制や制限は配慮するが、最小限であるべき。意識的に傷つける人ばかりではない。どれだけ想像力を引き出していくか?を考えると差別がなくなりやすい。
恋愛の話だけであれば苦じゃないのかもしれない。話題自体はタブーではない。


Q5
1 多様性の中で性がこれだけ話題になるのはなぜか?
2パブリック・個々の意見の乖離が大きくなるのでは?

スキルの多様性は記事がるけれど、性の多様性についてはあまり書かれていない。ネットで聞くと炎上しやすい。一回炎上すると公には出せなくなる。今後進んでいくのかな?議論自体が進まないと解決にいかない。性の話だとやりにくい。

A5
入り込みすぎないということ。それが一つの答え。
性的嗜好の話「どういう女性が好きなのか?」という話題に縛る必要はない。「どういう人が好きなのか?」など。それ以上は放っておく。


Q6
PRの本部にいると社外と全方位のコミュニケーションが必要で、LGBTに配慮するのは当然。
全員が全員心地よく感じるコミュニケーションはないが、どのようにバランスを取れれば良いだろうか?皆が幸せに感じるようにしていくと、誰にも刺さらないメッセージになる。

A6
ポジティブに刺さらないと効果がない。ネガティブな意味で悪影響を与えない範囲とし、ターゲットを絞っても良い。
LGBTでなくても刺さらない広告は刺さらない。それと一緒でLGBT100ある個性のうちの1つに過ぎない。それだけで24時間生きているわけではない。ネガティブなことさえ言われなければ、LGBTに刺さると思わない方が良い。

Q7
LGBTのトークにも参加してきた。多様性を認めることは大事。
残念ながら近しい友人で、「ちょっと気持ち悪いなぁ」といった人もいる。
LGBTについて拒絶してしまうのも多様性の1つかもしれない。理解を広めていくことは大事。それは違うと否定するのもおかしい。難しい。

A7
気持ち悪いと思ってしまうのは仕方ない。
LGBTの人でも年の差がすごいカップルとかだと「え?」って思う気持ちがあるけど、表に出す人はすくない。思ってしまうところは抑えられない。それ以上は立ち入らないと良い。
部下の発言をいなすかどうか?については、相手がそう思うことは否定しないが、人前で発言する責任を指摘していなしてよい。

Q8
LGBTの当事者の方が交友関係が多様とあった。非LGBTが同じくらい多様な交友関係を築いていくためにどうすれば良いか?

A9
プラスアルファのコミュニティを持つことが大切。
ビジネススクールに通った経験がる人に聞くとばらける。
人生の中で100あるうちの個性で、+アルファでコミュニティを持つべき。それはビジネススクールでも手芸サークルでも良い。プラスアルファを持つことはとても重要。




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