2017年3月6日月曜日

20161009

10年後、生き残る理系の条件』(竹内健:朝日新聞出版)


元東芝の半導体技術者で、スタンフォードでMBAを取った後大学教授に転じた竹内先生の本。
半導体関連の学会でよく発表を聞いていたが、ビジネス書で読むのは初めて。
春に東洋経済で特集された「理系社員サバイバル白書」で気になっていたのだ。
エンジニアは自分の専門性にこだわるし、組織も専門性を高めて他は知らなくても良いというマネジメントをしてきた。
でも、時代が変化して社会に必要とされる技術が変わっていった時、エンジニアのあなたはどうする?その専門しか知らなかったらサバイヴできないんじゃない?という内容。
本書では「まずは縦に深く掘って専門性を身につけろ。そこから異分野・異業種と横に広げていけ」「新しい技術について自分の専門と同じ深さには掘れないだろうが、コラボしてチームで動けるようには詳しくなれ」というT型人材を志向しているあたりはWBSと共通しているかもしれない。
外部環境には見向きもせず、上司が決めた研究テーマに沿って言われた通りの実験と研究を行うことがリスク回避と言われていた時代は終わった。
専門性と物理・数学などの汎用性の高い知識をベースにして新しく・面白く・儲かるテーマに関わる挑戦を行うべしという論調で語られている。
我思うに、本当に技術者として食っていきたいなら、その分野ではトップを目指して欲しいし、常に新しいことができるようになってもらいたい。
さらには「自分がその分野をさらに発展させて、10年後も20年後もその研究ができるように社会に広げて行くんだ」という意気込みを持って欲しいと願う。
当該専門分野がこれからも存続することが所与の条件のように考えて、分野が縮小すると不満たらたらになるような小物は嫌だなぁと思う。

理系学問と文系学問と呼称して分けることにも議論はあるが、世の中にどのように価値を生み出すかという価値の定義は文系学問の領域のように感じる。
が、理系の人はそういう議論が得意ではないと思う。
基礎科学分野などでは「実用性はなくて役には立たないが研究する価値はある」という意味不明な予算説明書を作ってしまう(笑)
本当は人類にとって貢献しているはずなのに、それを言語化できないのは大きな損失だものね。
自分の研究の価値を広く知って再定義した上で、顧客や社会とコミュニケーションをとることも重要なんだろうなぁ。

サクッと読めるわりには色々と考えさせられる本だった。
何気に半導体の研究開発に置けるエンジニアの心情が良くわかる。



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