2017年3月6日月曜日

20170125

『量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語』(レオン・レーダーマン/クリストファー・ヒル著 青木薫訳:文藝春秋)


ノーベル物理学賞を受賞した実験物理学者のレーダーマン先生が、毒舌ぶった切り要素てんこ盛りで量子物理学の歴史から最先端と将来像までをまとめた本。
物質に質量を与える素粒子「ヒッグス粒子」を「神の粒子」と命名した張本人で、発表後のカンファレンスには根本主義の信仰篤い方々がバスで話を聞きに押し寄せたそうな(笑)

ユニークなたとえ話が豊富で、ヨーロッパの粒子加速器(LHC)をニーベルングの指環になぞらえ、ヒッグス粒子は物理学の終焉である神々の黄昏(ラグナロク)ではなくオーディンである、なんて理系の厨二病患者垂涎の文章から始まる(笑)

そして母国アメリカが大型加速器開発予算を却下したことについて、議員や経済学者をこれでもかとボコボコにしているのが痛快。「経済を成長させるのは科学だということを経済学者に理解させるまで200年も掛かった!」と量子物理の本とは思えぬエピソードが続く。

言いたいことを言い終えた後は、比較的まともに量子物理学の歴史から素粒子の説明を図や例えを用いながら説明していく。文章はとても平易に書かれているのだが、如何せん内容がガチの素粒子論なので一回通して読んだくらいでは歯が立たない。何度か読み直して吸収しておきたいところ。学生時代にもう少し素粒子と相対論を勉強しておけば良かった。
「粒子加速器は巨大な顕微鏡である」というのは計測とか検出とかに関わってないと腹落ちしないかもしれないね。

「あらゆる科学は、現象を見つけて観察し、それらを分類することから始まる」
「科学をやる以上、成否の裁定者はつねに実験である」
という言葉はいかにも実験物理学者だなという雰囲気にあふれている。


素粒子論・量子物理学などミクロの構造を調べていく学問が、超マクロの天文物理学に結びついていくところにロマンを感じるね。100億分の1の確率でしか起こらない事象でも、100億回積算すれば観察できるようになるわけだから、時々地質学とかにも歴史を感じる。


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