2017年4月12日水曜日

20170411

火曜は伊藤先生の「組織の経済学」

最先端のアカデミックな論文から理論のエッセンスを抜き出して「トイモデル」として提案し、学生が自分の事例にどう当てはまるか?当てはまらないかを考える授業。
先生が研究されている契約理論については東洋経済オンラインの記事参照。


現代のミクロ経済学の主な応用分野
  1. 企業の中で起こっていることを理解する(権限移譲・企業文化・リーダーシップ)
  2. 企業と市場の境界がいかに決まるかを理解する(外注・内製)


なぜに市場取引をするか?
厚生経済学の第一基本定理「完全競争市場において、ある配分+価格が均衡状態ならば、その配分はパレート効率的である」
需要と供給が交わった点で価格と量が決定されるというグラフのアレ。
そこは総余剰が最大化される点でもある。

重要!!:主張には必ず前提(仮定)がある。
完全競争市場という理想的な特定の状況でしか成り立たず、あくまでもベンチマークに過ぎないことを忘れるべからず。

組織の経済って何?
市場では経済主体が全て独立に存在しているわけではなく、組織を形成して境界線が引かれている。
実は国際貿易の面から見ても、本社と海外子会社との企業内貿易が全体の3割以上を占めるというデータもある@アメリカ
市場だけでなく組織内の経済活動も見ないといけない。

市場の失敗は組織の失敗となるのか?
【市場の失敗】
  • 不完全競争 独占・寡占になると非効率性が出てくる。(総余剰が小さくなる)
  • 外部性 無料で便益を得られる状況でフリーライダーが発生
  • 非対称情報 モラルハザード・逆淘汰


しかし、これらの問題は組織内部に取り込んだとしても発生しうるものであり、組織の失敗の要因にも十分なり得る。

企業はなぜ存在するか?
ロナルド・コースによると、市場では「価格を使うコスト」が生じている。
  • 適正価格を見つけるコストが発生する。需要と供給曲線や平衡点での価格が瞬時で分かるわけではない。
  • 市場だと取引において契約を結ばなくてはならない。交渉する時間と労力が掛かる。
  • 契約には将来起こりうる全ての事象を予想して文書化できない。不測の事態の際には後で埋めるべき穴が存在する。


企業であっても契約は無くならないが、その手間は大幅に減少する。
例えば、互いに依存し合う労働者が相互で契約を結ぶ代わりに、企業を作って企業と労働者が雇用契約を結べば、契約に関わる時間と手間は大幅に削減される。
それゆえ企業は契約の束(a nexus of contracts)とも呼ばれる。
雇用契約を結ぶというのは、企業の権限を受け入れるということ。

市場における取引コスト
世界の入山先生の「世界標準の経営理論 第9回」を参照のこと。
価格メカニズムを利用するための費用=取引費用
取引に不確実性・複雑性・特殊性が存在すると取引費用は上昇する。

理論仮説:取引費用が高まると、企業組織に取り込まれる(内製化する)
この仮説は多くのデータで立証されている。

なぜ組織はハチャメチャなのか?
何が起こるか分からない不確実性が高まると、想定外の事象に対して事後の対応が増えてコストが上昇して取引による便益は下がる。
つまり、不確実性が高くなると取引からの便益は右肩下がりになっている。
そのため、不確実性が高い場合は企業内取引とし、不確実性が低い場合は市場取引とすることで便益を最大化・最適化できる。
しかしながら、企業内取引をしているケースは一見市場取引よりも便益が低いため、儲からない取引を社内に取り込んで行なっているかのように錯覚してしまう。そもそも取引の複雑性が異なるから使い分けているに過ぎず、合理的な選択をした結果そうなっているだけ。


参考文献はこちら

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