4月16日は淺羽先生の「企業イノベーション研究会」に参加。
昨年まではグローバル経営研究会という名称だった。
【会の名称変更】
- 今日がリニューアルした最初の回です。コーディネーター(WBS淺羽先生・竹内先生)が変わらねえじゃねえかという声もあるでしょう。
- 海外では新しいプロジェクトやるときに「We are Very Excited ~」って言うんです。対してエキサイトもしてないくせに言うんですよ(笑)でも、今日私は本当にエキサイトしています。
- グローバル経営研究会は2013年ごろに立ち上がって、グローバル展開している企業にも解決できない課題があって議論してきた。しかし、ある意味グローバル化は当たり前のイシューとなって多少マンネリ化してきた。一方で、イノベーションという言葉は毎日出てくる。グローバルに限らず、イノベーションを扱っていく。
【なぜイノベーションが求められているか】
- 政府は2017年6月にソサエティ5.0構想を打ち出した。アベノミクスで財政・金融政策を実施したが、さらにもう一歩成長するためには、社会的な課題・困難がある。
- 個人個人がつながっていて、情報をAIで分析し、新たなサービスや答えを個人に戻していく。AIを噛ませることによって、情報を吸い上げて個人にどんなフィードバックをすれば良いのかを考え、新しい解決策・ソリューションを提供する。クラウドにおいておくという話ではない。先端技術を使って経済発展と社会問題の解決を担う。
- 官の取り組みは経営プロフェッショナル人材を育成する・スキルを学び直すリカレント教育などの教育が主。ビジネス業界では風が吹いている。
- 産学連携、ベンチャーの創出などは、お題目は良いのだけれど、具体的な手段としては漠然としている。
【ナショナルイノベーションシステム】
- 国としてどのようなイノベーションの生み出し方をするのか?国が持っている固有の制度・スキームがイノベーションの速度や方向に影響を与える。また、企業のガバナンスの仕組みによっても異なる。
- 国内のマーケットは広いのか?需要は活発化?競争は激しいか?と言ったインセンティブとプレッシャーの関係も重要。
- 例えば韓国は内需市場が小さいので、常に国外に出ようとする。また、伝統的に財閥系大企業と中小企業の格差が大きく、中小企業が搾取されているという批判もある。両社がコラボレートして良いものを作るというネットワークの良さが出てきにくい。
- アメリカでは多くのスタートアップが生まれた。優秀な人が独立してスタートアップを立ち上げるようになった。支えるメカニズムがあって、成長して大企業に置き換わって行った。国の産業・経済のダイナミズムを生んでいた。
- 日本では80年代まではイノベーションシステムがうまく機能した。既存の大企業が研究開発部門・新規事業部門が新しい事業の芽を産んでいた。既存企業の新規展開・多角化が主たる担い手になって行った。しかし、やがてうまくいかなくなった。創出能力が低下してきた。
- シリコンバレーのようなアメリカ型のイノベーションパターンに日本が変わるにはどうすれば良いか?と考えるようにもなった。ベンチャービジネスを加速させるためのコーポレートガバナンスの仕組み、ベンチャーキャピタルの仕組みなど。うわべだけアメリカ型を移植してもうまくいかないだろうと言われているが。シリコンバレーだけでなく中国深セン、イスラエルなど盛り上がっているところもある。
【中国深センの動向】
- 中国深センを見てみた。もはや日本企業より2桁違うR&D予算でやっているとか、すぐに研究所を作って予算をつけるとか、スケールが違うという話ではもはや驚かない。
- 中国では「とにかくまずやりましょう」のコンセプトが生きている。規制はほぼゼロ。問題が起こってから解決を考えましょう。
- 逆に日本だとまず規制の話と特区の話になる。介護用ロボットは日本国内では規制があって全然できていない。技術レベルでは日本の方が上でも、マーケットでは北欧の方が進んでいる。非常に問題。
- ユニコーンが増えてきた。中国でのイグジットはBAT(Baidu・Alibaba・Tencent)による買収が注目されている。中国からの留学生も「BATに買ってもらうのが一番の成功例」と言っている。失敗することは考えない、作っておいて、目立てば買ってもらえる。BATのような大手と競争することを考えなくても良い。
- BATも自分たちで全ての領域を自分でやる必要はない。育ってきたら買えば良い。政府もそれを容認している。集中しすぎたら問題が起こるかもしれないが、起こった時に考えれば良いという姿勢。新しいアイディア・新しいビジネスが生まれる相乗効果が出ている。
- シリコンバレーは目じゃない。英語を学ぶ必要もない。自分たちが世界のトップという心意気。その話の中で日本は全く出てこない。
- 日本の公取はアメリカのプラットフォーマー(Google・Apple・Facebookなど)にデータが集中するのがまずいから規制しようなんて話をしている。そんなことしていて良いのか? プラットフォーマーがデータを独占したとしても、悪いことをするとはわからない。新しいサービスで生活が豊かになる循環を生み出している。
【深センのエコシステム】
- なぜスタートアップがぽこぽこ出てくるか?シリコンバレーと違ってITやネットではなく製造業が多い。
- 無数のIdea Dreamer(アイディアを生み出す人 生産0個)、Makers(プロトタイプを作る人 生産0.1個)、Veteran Makers(ちゃんと使えるサンプルを作る人 生産1個)、Hardware Startups(ロット1000個で量産)、Hardware Corporation 10k個で量産)
- 深センにはアイディアを作り出す人がいっぱいいて、各階層にもいろんな人がいる。全部の領域で人と人をつなげる仲介業者がいる。
【イノベーションとは】
- シュンペーターの経済発展の理論:皆である財を作り、安く効率的に作るようになると経済が定常状態になっていき、やがて成長が止まってしまう。それをもう一度動かすドライバーこそがイノベーション。
- 5種類の新しい結合①新しい製品②新しい売り方・マーケット③作り方④原材料・供給源⑤組織の実現(原著では産業の中の組織構造)
- 政府はイノベーションをもっと進めようとしている。「イノベーションが生まれて生まれて困ってる」なんて企業は存在しない。どこも困っている。
- イノベーションが生まれにくくなるメカニズムは存在する。それを押さえておかないと、作りましょうだけ言っていてもうまくいかない。
- シュンペーター仮説:巨大企業の方がR&D投資も大きくなるので、イノベーションでは有利
- 大企業病:企業家精神の衰退(官僚的)現象的には日本の大企業がハマっている。そこで終わるのではなくて、その背後に何があるのか?
【生産性のジレンマ(アバナシー)】
- 自動車産業の研究から生まれた強力な話。産業が成熟化してだんだんとイノベーションが起きなくなってしまう。
- 最初の頃はアイディアドリーマーが新しい製品提案を行う。やがてLearning by Usingで自動車とはどのような部品になっているか?どうやってブレーキをかけるのか?どうやってエンジンを指導させるのか?と行った技術が決まって行き、これこそが自動車だというデザイン(=ドミナントデザイン)が固まる。業界標準みたいなもの。
- 最初の頃は皆で技術アイディアが試される製品イノベーションが主流だが、一度ドミナントデザインができたら、それをいかに効率的に作るかというプロセスイノベーションが主流になる。生産工程の決定版ができると、そのさきはずっと小さな改善に止まってしまってプロセスイノベーションも減ってくる。
- 何が決定打がわかってない状態から、製品・工程についてわかってくると、わからないことが少なってきて、提案も少なくなってくる。不確実性が減少するとイノベーションが減ってくる。それが成熟化のプロセス
- アイディアを持っている人が提案し、ユニークな製品を持った小企業がたくさん生まれる。その後Learning by Usingで一つに決まって行って工程の改善も起こる。
- 最初の頃は汎用機械を使って作っていたが、ドミナントデザインが決まってくると大企業が出てきて大規模な生産設備で効率的に作るようになる。スタートアップが生まれる状態から、大企業の寡占状態に変わってくる。
- 製品イノベーションのためには、皆が自由にアイディアを出せる状態が必要。極めてフラットな組織にしておくのが最初の頃は良い。しかし、設備投資をやっていかに効率良くやるかになると、ルールに則ってやって例外は許さない。階層組織をやる。前者を有機的組織、後者を機械的組織と呼ぶ。産業の成熟化によって変化する。
- 脱成熟化(デマチュアリティ)が自動車産業に起こっている。成熟化した産業では、カチッとした機械的組織になっている。しかし電気自動車や自動運転などが生まれてきた結果、有機的組織が適した環境になっており、いまの組織体ではフィットしない。既存企業は対応できない組織構造になっている。
- イノベーションを作り出そうと言ってもできない。常に有機的組織で良いではないかというかもしれないが、多くの企業はそうではない。不確実性の減少の過程で、効率的になれない有機的組織は競争に負けてしまう。競争に勝ち抜くために機械的組織に変わるのに、それを後からダメと否定しても無意味。イノベーションに適した組織に変われと行っても意味がない。
【イノベーターのジレンマ(クリステンセン)】
- HDD(ハードディスクドライブ)産業で、あるフェイズまでは既存企業が産業をリードしてきたが、あるところでダメになってしまった。HDDのお皿の素材を変え流という変更はドラスティックなイノベーションだが、ここは既存企業がリードした。しかし、HDDのサイズ変更では新興企業が置き換わった。
- それを解決しようとするのがオープンイノベーション。自分たちは組織的に凝り固まっている。しかし技術進歩を見ているといろんな技術が出てきている。それらを結合して行くには、自分たちだけでは無理でコラボを考える。
- しかし「オープンイノベーションをやれ」というのは解ではない。全部オープンにしたら自分は負けてしまうかもしれないという状況下で、どのようにインセンティブスキームを作るのか?どのように成果を配分するのか?を考えなくてはならない。
- 深化(exploitation)と探索(exploration)の両利きの経営が重要だが、考えてみれば当たり前。普通にR&D部門を持ってずっとやっている。会社全体ではガソリンエンジンを効率よく作ることに専念しつつも、小さな部署を作って新しいことをやるという分担もある。R&D部門が新しいアイディアを見つけてきた。それを雁字搦めの本体にどのように持ってきて意思決定を通して発展させるか?それこそが難しい。それが機能しなくて困っている。ヒントになるのがリバース・イノベーション。
- 本来、GEはアメリカのR&Dで作った製品を世界中に販売して変更は許さないという典型的なグローバリゼーションの企業。グローバリゼーションとローカルアダプテーションの対立軸があった。リバースイノベーションとは中国やインドで開発した製品をアメリカに持ってくることをやった。探索から始まった製品が本社の意思決定・世界販売とつながって機能した。抵抗があったが、トップマネジメント直轄にして、彼らにやらせると守った。それくらい力を入れてパワーを咲かないとワークしない。
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