2017年4月23日日曜日

20170423

『意外と会社は合理的』(レイ・フィスマン、ティム・サリバン著 土方奈美訳:日本経済出版社)

伊藤先生の「組織の経済学」リーディングリストの1冊。
企業の事例を組織経済学のプリンシパル=エージェント理論をベースにして解説している本。
企業経営は一見非合理的で不十分に思えるかもしれない。しかし、その裏にはエージェンシー費用を削減するように設計されたインセンティブ制度が隠れている。

無邪気に「現場発のイノベーションを促そう!」と言ってもファーストフードでは大失敗する。(現場権限を多く認めると品質のばらつきが大きくなり過ぎる)
社長までの複数段階の稟議書がめんどくさくて、全部すっ飛ばして社長に直訴して動かそうとすると組織に大混乱を発生させてコストが急上昇してしまう。(社員全員が社長を血眼になって探してハンコを押させることに必死になる)
組織とインセンティブの関係を無視して、一部の理想だけで突っ走ってもあかんよと言うこと。

【以下、本書で挙げられているトピックスの一例】
  • ボルチモア市警:街を安全にしたいのに、逮捕件数を評価すると凶悪犯よりもライトをつけない自転車に乗った市民の逮捕が進む。
  • ザッポス:新人研修の後に「今退職したら2,000ドル払う」とオファーを出すことで、ザッポス流のサービスができる人だけを残す。
  • マルティン・ルター:信徒数の増減を評価すると、隣の教区からの横取りが増える。
  • P&G:異なる目的を持つ2人のボスに権限を与えると、抗争や足の引っ張り合いばかりになる。
  • アメリカ陸軍:作戦命令には絶対服従な一方で、不確実な状況でリーダーシップを発揮できるようなバランスが欠かせない。
  • マクドナルド:「マクドナルドで人生最高のポテトを食べた人はいないかもしれないが、マクドナルドでは絶対にお目にかからないまずいポテトを出す店もごまんとあるはずだ」
  • インドの繊維工場:経営幹部は家族か親戚である必要があった。そうでないと備品が盗まれてしまうから。
  • ゲーム製作会社:売上高の3割はプロデューサーによって変化する。「退屈な管理職の方が、気取ったメガネをかけたデザイナーよりもプロジェクトの成功に大きな役割を果たす」
  • ジェイミー・ダイモン(JPモルガン):「プライベートジェットも退職功労金も、もともとは株主の利益を最大化させるために設計された」
  • サモアの交通ルール:自動車の右側通行を左側通行に切り替えた。島民の抗議が激しく法廷闘争もあったが、近隣諸国と同じ左側通行になったことで車を安く買えるようになって2週間ほどで平常状態になった。
  • アルカイダ:教義への忠誠や違反時の懲罰だけではマネジメントできず、出張報告と交通費の正しい精算を要求した。


具体的な事例を見ながら「このように解析すれば良いのか!」と分かってくるのが面白い!

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