2017年5月15日月曜日

20170515

今日は明治大学 大石芳裕先生による「日本企業のグローバル・マーケティング戦略」の講義@淺羽先生のグローバル経営研究会

豊富な事例に裏打ちされた発表はとても具体的で説得力が大きかった。

大石先生は「見たものしか信じない」という現場主義の研究者で、毎年610カ国で40社訪問を10年継続している。主催するグローバル・マーケティング研究会110回の開催を数え、企業の方と毎月議論している。会費ゼロ・講師への謝金ゼロを貫き、毎回200名くらい集まるそうな。

【理論と現実】
  • 理論で説明できるのは経営現実の一部であり、そこからはケースバイケースになる。しかし理論を全く知らないと全部がケースバイケースになってしまい、継続的な成功がなくなる。
  • 理論に当てはめて現実を見てしまう弊害に対処する必要がある。欧米の経営学で流行った枠組みで現実を解釈しがちだが、現実から理論を勉強しなくてはならない。
  • 現実だけから本質に迫れるわけではない。(ダイヤモンドと石炭を見比べて、同じ炭素からなっているという本質に迫ることはないだろう)
  • 「グローバル化」という言葉は1989年のベルリンの壁崩壊後、資本主義経済と社会主義経済が地球規模で一体化していく営み。ただ、「グローバル化」が何を言っているのかを定義しないと誤解を招く。
  • 競争・カネ・情報はボーダレスに行き交うようになったが、企業・モノ・ヒトはいまでも国境を越えるのに苦労している。
  • CAGEフレームワークは初期の国際化を説明する論理。環境決定主義の流れを組むので、PEST分析にCultureGeographyを加えたもの。自動車メーカーが中国に進出する場合、環境が同じであっても企業によって戦略は異なるのが当然。「どこに進出すべきか?」と考える段階で役に立つが、それ以上のものでもない。
  • AAAフレームワーク/Adaptation適応(違いに適応する)・Aggregation集約(違いの共通項を見出す)・Arbitrage裁定(違いを利用する)はどれかをやるのではなく、重要なことは同時並行でやること。
  • 世界標準化・現地適合かは2項対立ではなく、お互いの長所を融合(複合化)したものになる。
  • ハイブリッド策(ブランド・広告・小売価格・チャネルなどの機能ごとに配分を切り替える)・共通要素(核の部分をモジュール化・標準化して上物を現地に適合させる)・複数ライン(本社が何パターンか作成し、地域子会社に選ばせてカスタマイズさせる)・共通分母(最高級・特殊セグメント・ベルトセグメントなどグローバルに串刺しにすることで規模の経済を働かせる)SCM(在庫を極小化してリードタイムを短縮)


【理念】
  • 外部環境には絶対性はない。同じ事象を見ても経営者によって解釈は異なる(フィルターは違う)
  • 経営者が腹を決めて取り組むか否か。経営は理念を持っておかなくてはならない。従業員がしっかり持っていないと長続きしない。これがないと意味がないという大前提。海外でやる場合には、理念が浸透していないとだめ。
  • 経営者が「現場に足を運ぶ」ということを本当にやっているか。空港に着いたら社長車が迎えにきて、空調が効いた部屋で工場長が説明をして、飲み会をして帰るようでは現場に足を運んだとはとても言えない。どういう人が作って、どういう人が売っているのか。顧客の家庭まで訪問して冷蔵庫まで見ることもある。


【グローバルビジネスでのチャネルの重要性】
  • マーケティングの4Pは自国内ではプロダクトから始めるが、グローバルではチャネルから始まる。最初にチャネルを作らないと始まらない。優良なディストリビューターを捕まえれば勝てるが、新興国では限りがある。
  • モダントレード(ショッピングモールなど)はエントリーフィーが高いので儲からない。トラディショナルトレード(現地小売)は零細企業が多いので獲得が大変。
  • チャネル構築には時間がかかり、パートナーが必要。日本企業はすぐに相手に全部任せるという性善説でやってしまう。グローバルでは性弱説。困ったら自分に都合よく解釈することを前提としてモニター・チェックすべき。




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