2017年5月18日木曜日

20170518

木曜は立本先生の「製品アーキテクチャ論」

欠かせない中核部品を独占で作る企業とプラットフォーム企業とは別・・・なるほど。

【回帰分析の復習】
  • 日本の経営学は伝統的に統計・回帰分析から遠い。
  • 先週のレベルは大学院の経営学の学生がやるくらいのレベル。基礎的だけれど普通くらいな内容。他の人の論文を解釈するくらいならあの程度でOK
  • 回帰分析は「結果には誤差があるけど、原因には誤差がないこと」を前提としている。


<構造方程式モデル(Structural Equation ModelSEM)>
Y1=β01+β11X11+β21X21+β31X31+β41X41+・・・
Y2=β02+β12X12+β22X22+β32X32+β42X42+・・・
Y3=Y1+Y2+X1+・・・
複数の回帰式を組み合わせて説明している。

<潜在変数(Latent Variable)>
直接は観測できない場合、直接観測できる変数から調べる。
例:心理学のIQなど
LV1(言語的なIQ=X1+X2+X3
LV2(数学的なIQ=X4+X5+X6
LV1LV2の関係を調べるなど。複数の方程式で表すと複雑になる。

<サンプル数とサンプルサイズの違い>
サンプル数:標本の数
サンプルサイズ:標本の大きさ(観察数 N
ジム50機とボール120機を調べた場合、サンプル数は2、サンプルサイズは50120をさす。

<サンプルサイズの注意点>
200年前の統計学では観察数は100程度だった。ビッグデータでは観察数は10,000程度は楽に集まる。すると、統計的検討が効かなくなる。(ほとんど意味がなくなる)
回帰係数が誤差(ゼロ)である確率p値は小さければ小さいほど良いのだが、これはサンプルサイズに依存する。サンプルサイズが大きいと標準誤差が小さくなっていき、「回帰係数は誤差(ゼロ)ではない」と言いやすくなってしまう。

AICAkaike's Information Criterion):赤池情報量基準>
ビッグデータ・機械学習など説明変数をほぼ無限に取れるときに重要なパラメータ。
すごく少数のサンプルにしか関係ないような(場当たり的な)ノイジーなデータを加えてモデルを適合させてしまうと、同種のデータに合わなくなる。(過学習:オーバーフィッティング)
AICはモデル化のパラメータ数を抑える指標。小さい方が良い。

<交互作用モデル>
積の項を加えたもの。
Y=β1X+β2Z+β3XZ
=β1+β3Z)X+β2Z
Z:調整変数(モデレーター) β1:主効果 β3:交互作用効果
Xの効果はZの水準によって変化する。(ZXが与える影響力を説明している)
マージナル効果(β1+β3Z)をグラフにして見ると、Zの大きさによって分類して有意な部分を分類する。

自社の中で「施策(X)をやれば成果(Y)は上がるよね」という説明変数は大体予想がついている。でも、実際調べてみたら回帰係数(β1)がマイナスだったということはありうる。そのとき、背景にあるZを見ていなかった可能性がある。

【半導体製造装置産業の実証分析】
オープン標準を作るとネットワーク効果が生まれる。半導体製造装置メーカー・半導体メーカーを含めてネットワークを作成し、製造装置メーカーの販売高について回帰分析を行なった。1990年代中頃に標準ができた。今のインダストリー4.0IoTの先取り研究とも言える。

実証分析(統計分析) 戦略効果の条件・有無を推定
ネットワーク分析でメカニズムを解析

<背景>
ウェハの大口径化・デザインルールの微細化が続くと、設備投資額が跳ね上がってしまう。互換標準をして企業の枠を超えて無駄を省いてインターフェースを揃えたかった。実は装置間を輸送するインターフェースの部分は秘中の秘であったり、特許で守られたりしていて難航したが、材料・ハード・ソフトの標準化を進めた。

<研究>
企業数年度Tでパネルデータを作成した。
目的変数(Y)に販売金額、説明変数(X1,X2,・・・)には媒介中心性(取引ネットワークの中で企業がどこに位置しているのか)・オープン標準製品の販売率・新興国向けの販売率、コントロール変数として年ダミー・企業ダミー・従業員数・対応プロセス装置の種類数を置いた。

<ネットワーク分析>
  • 次数中心性:頂点間のつながり(線)の数を次数と呼ぶ。最大値を持つ頂点を次数中心と呼び、その値を次数中心性と呼ぶ。たくさん繋がっているところがネットワークの中心と考えた。
  • 固有値中心性:たくさんの次数を持っている人と繋がっていると重みをつけて次数中心性を補正したもの。
  • 近接中心性:頂点から自分以外の頂点への平均到達ステップ数の逆数。もっとも情報が早く伝達するという意味から。
  • 媒介中心性(ネットワーク構造指数):SNSなどのつながり解析ではよく使われており、情報媒介のクリティカル性で見ている。頂点を1個ずつ取り除いて見て、ネットワークに情報が流れなくなる度合いを調べている。元々はエネルギー供給の概念。


<ネットワークのどこにポジショニングすれば優位になるか?>
  • コールマンレント:次数中心性が多くの人に接しているので情報が伝わりやすい
  • バートレント:複数のサブネットワークに分かれた時のブリッヂングに着目。構造的空隙があるネットワークだと、サブネットワーク間を媒介するレント。情報アクセス優位・情報コントロール優位を持つ。
  • 社会ネットワークで分析してきたのは人と人とのパーソナルな繋がり。従業員のネットワーク研究の結論は、ハブ(バートレント)にいる人は個人的なパフォーマンスが上がりやすく安心感はほどほど。コールマンレントにいる人はパフォーマンスはほどほどだが、安心感が高まる。多くの人と接する人の方がイノベーションパフォーマンスが高いと思っていたが、調べて見たらブリッジにいる人の方が高かった。安心感が高くないと離職してしまうので、どちらも大事なことではあるが・・・
  • Echo効果:YesならYesと答え、NoならNoと答えて価値のある情報が何もない。その代わりに同意を得ることで安心感が高まる。
  • Bandwith効果:シグナルの情報とノイズの情報があったときに区別しやすいかどうか。
  • バート先生のオススメはハブのちょっと内側(quasi-Hub)。ハブはリターンは大きいがコストも大きい。ちょっと内側に入ることでコストが激減するので良いのではないか。実証研究もあったがあまりロバストではなかった。


<仮説>
仮説1:ハブに位置取り(高媒介中心性)
仮説2:オープン標準によるネットワーク外部性の発生
仮説3:新興国向けの販売
仮説4:仮説13の交互作用

<回帰分析の結果まとめ>
  • 回帰分析の結果、「オープン標準製品の販売率」「新興国向けの販売率」は被説明変数(販売高)を説明できていなかった。
  • これらは媒介中心性の調整変数ではなかろうかと考え、新たに交互作用モデルで検討した。結果、三元配置を加えた交互作用効果を入れたモデルが最も決定係数が高く、AICが低かった。X1×Z1×Z2の項がある。
  • 媒介中心性のマージナル効果を調べた結果、オープン標準製品の販売率>0.05の範囲では統計的有意に正であった。
  • 3つの項(X1×Z1×Z2)がある場合、マージナル効果を図にするのが難しい。そのため、「新興国向けの販売率」Z2を(偏差値70、偏差値60、偏差値50、偏差値40、偏差値30)という5パターンを想定して、それぞれでX1×Z1のマージナル効果図を書き出して調べた。
  • 結果、「新興国向けの販売率」が高い時は「オープン標準製品の販売率」を高めると媒介中心性の効果を高めるが「新興国向けの販売率」が低い時は逆効果になる。


統計学的なデータからはサブネットワーク(コミュニティ)の解釈・意味付けができていない。コミュニティの中を媒介するのか、コミュニティとコミュニティの間を媒介するかは大きな違い。そこで、ネットワーク分析を行った。

<ネットワーク分析>
  • 1994年段階では4つのコミュニティがガシャガシャ存在したが、2006年段階では2つのグループに集約された。
  • ノードの情報媒介機能=コミュニティ間(P値)+コミュニティ内(z値)で表される。
  • コミュニティ間もコミュニティ内も多いのがハブ、コミュニティ内は多いけどコミュニティ間が少ないのをコネクタ、両方少ないのを周辺ノードと呼ぶ。
  • zP平面でネットワーク図を書き出して見ると、1994年段階ではハブは存在せずにコネクタ企業が媒介していた。2006年段階ではハブにAMATが現れ、コネクタ企業は周辺ノードに引越しした。
  • 時系列で推移を見ると、2003年以降にハブ企業が現れた後は継続するようになった。また、コネクタ企業は減少し続けた。
  • オープン標準を作ると、コミュニティ間を媒介する企業に集中しやすい。



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