2017年5月19日金曜日

20170519

「付加価値ある意匠デザインを実現するためのものづくり技術2017」に参加してきた。
TAKT PROJECT Inc 吉泉氏とマツダ岡本氏の特別講演は立ち見も出る大盛況(300名以上)だった・・・


(先日の静岡ホビーショーでもマツダは出展してた!車とラジコンで)




枠組みを問い直す-つくり方をつくるデザイン-
TAKT PROJECT Inc 吉泉聡氏
*掲載している画像はTAKT PROJECT Incからの引用

ものづくりには「よりよく作る」「新しい価値軸を作る」の2種類がある。
既存の価値軸で改善を続けるだけでなく、新しい価値軸を生み出していくことが大事。
クライアントワークだけでなく、独自のデザインをするRDも行なっている。

Dye It Yourself
  • プラスチックの大量生産品は世間に溢れているがプラスチッキーな製品は必要ではあるが是非に欲しいとは思わせない。
  • 工芸品への関心も高まっているが、工芸品だけでは高コストでやっていけない。
  • そこで、普段はフィルターとして使われる吸水性のある多孔質性プラスチックを素材にして製品(椅子・テーブルなど)を作った。



  • 染料が目視できるスピードで染み込んでいく材料なので、水彩画のような色合いを生み出すことができ、1つとして同じものがない。完全に乾く前であれば色も混ざっていく。
  • 草木染をやって見ると、人口染料にはない優しくて温かみのあるデザインになり、工業製品とは思えない色合いが出る。自然に色が混ざっていくプロセスはコントロールできないところもまた面白い。

最終製品ではなく、あり方/ユーザーとの関係性をデザインしたと言える。


Composition
  • 家電も機能を有する以上、似たような工業的デザインが溢れている。
  • 美しいコップや椅子などは単一素材で構成されている一方で、家電製品などは部品がアッセンブリされた集合となっている。
  • 部品の集合である製品は外装+基盤+電子部品で構成された弁当箱スタイルであり、デザイナーは外装をCMFColor Material Finish)で色を変えることに留まっている。
  • 抜本的に変えないと新しいデザインは出てこない、とフルーツインゼリーや煮こごりのような製品をデザインした。



  • 一見電子部品を埋め込んだオブジェのようにしか見えないが、実は充電して発光するなど機能も持っている。Blue Toothでの調光も可能。
  • このような製品を出展すると「何十万でも良いから売って欲しい」と言われた。家電は価格のレンジが狭く決まっているが、それを超えた値段をつけてもらえたことに喜びを感じた。

つくり方が変わり、存在意義が変わり、別の可能性が生まれたということ。


3-PRING Project
  • 昔はConsumerMakerは別々だった。Consumerは出来合いの製品を使っていて、0-1がハッキリしていた。しかし、最近はこの境界が曖昧でConsumerでも作り手側に踏み込んできている。
  • 例えばCDの音源はMakerが提供していたが、それらの曲を並べ替えて自分のプレイリストを作るなどをすると少しConsumer側のクリエイティビティが上がっている。さらにDJなどで既にある音源を使って新しい音を出すようになると、さらに上がっていく。
  • そこで、Consumerの創造性をちょっとだけ高めるような製品を作れないかと考え、3Dプリンタで製品を作った。これはパーツだが、無印良品などで買ってきた製品と組み合わせて使うことができる。
  • 例えば無印良品のタッパーのジョイントだったり、透明ケースを活用して棚を作るジョイントだったり。書類ケースを組み合わせて棚にするツールだったり。




  • DIYのようにゼロから大工作業で作るほどでもないが、ハンズで板材を買うように、無印で製品を買ってきて自分でつなぎ混んで完成させるという発想。コンマ幾つかのクリエイティビティを提供する製品。

製品と素材を再定義することで、ユーザーとの新しい関係が生まれたということ。


Composition
  • 三井化学と共同で行ったプロジェクト。
  • 自然素材(木材など)は個性があるが、工業素材は均一品質で大量に作られる。これは自然素材は素材のばらつきの個性を何かみ見立てて活用している一方で、工業素材は制御されて均質的なものが作られていることを意味している。
  • 工業素材でも自然素材のような製品をデザインできないかと考えた。三井化学のアルミと樹脂を強固に結びつけるポリメタリックという技術を用いて、アルミの板材の中に樹脂がマーブル調に埋まっている素材を作った。


  • しっかり接合しているので、加工しても乖離することがない。半分金で半分樹脂という指輪も作れるし、通電するアルミの模様を使えばデザインだけでなく回路基盤としても活用することができる。


新しい素材そのものをデザインすることで、別の可能性が生まれるということ。


UV printing
  • 印刷とは絵柄や文字の表現に使われるが、紫外線で硬化させるUV印刷は補強に使えると考えた。
  • そこで柔らかい紙にUVプリントすることで強度を持たせた。提灯のように骨組み(構造)に紙を貼るのではなく、紙に構造を印刷するという発想とも言える。
  • 自由に伸び縮みをする上に途中の段階で止めたり捻ったりもできる。



ツールの再解釈がツールの存在意義を変え、別の作り方が生まれたと言える。


【枠組みを超えたものづくり】
  • 新しい製品を生み出したいデザイナーは、技術そのものの新しさに加えて技術の新しい捉え方を身につけられると良い。
  • 意匠だけでなく作り方をデザインしているという発想。枠組みの見直しが必要。既存の枠組みには名前がついているが、新しい枠組みには名前がない。

1:マジョリティーの枠組みを理解する
2:弱い枠組みに注目する。括り方を変えることができそうで、あまり注目されていないところを狙う。
3:枠組みをつないで新しい枠組みを作り出し、新しい価値軸を置いてデザインする。

ビジネスモデルの上に企画があり、作り方があり、一番上に意匠を乗せるという発想ではなく、全体をデザインする発想が欲しい。狭義のデザインと広義のデザインの接点ともなりうる。
とはいえ、意匠は最初の顧客との接触点で製品の魅力を伝える大事なポイントでもある。
デザインは付加価値ではなくて本質価値とも言える。


独自のカラーデザイン戦略でブランド価値向上に貢献
デザイナーと技術者の共創で生まれた新たな価値創り
マツダ株式会社 岡本圭一氏


【マツダデザインの志】
  • クルマは美しいデザインでありたい。人の手で生み出す美しいフォルムを身にまとい、生活/感性を豊かにする製品。所有して使う喜びといった情緒的価値を提供する。消費されるデザインではなく、本当に美しいと思えるデザインへ。
  • マツダは美しい工芸品メーカーではない。美しい量産品を作り上げることが大事。
  • プレミアムなブランド価値を出すため、強烈な個性・一貫性・継続性をもち、他が作れないオンリーワンを提供する魂動デザイン戦略が2010年からスタートした。
  • 野生動物のしなやかな動きを参考にして、ブレない軸を持ち、前足で地面を掴みながら後ろ脚で力強く大地をけり、動きに連続性・継続性がある。
  • テーマオブジェを作成して「これがクルマに命を与える」というマツダのデザインを形にした。皆が「御神体」と呼んだりもするくらいに思いを作り込んだ。
  • 2010年のモーターショーでコンセプトカーSHINARIを披露した。これがマツダのビジョンを体現したモデル。
  • 「マツダの車は皆同じに見える」という声を頂くが、戦略的に合わせるようにしている。個性・一貫性・継続性を持たせている。



Soul Red Premium Metallic

  • 2012年のアテンザから市場導入。1980年のマツダ ファミリアの赤が売れたことから、マツダのテーマカラーとして赤を選んだ。歴史的にも赤にこだわったクルマ作りをしてきた。
  • 「カラーも造形の一つである」の思いで、光と影の表情から質感をデザインすることにこだわった。カラーでダイナミックかつ繊細な美しい面の変化を際立たせている。
  • 陰影感・質感を際立たせるには鮮やかさと深みの両立が必要だが、従来の塗料では鮮やかな赤や深い赤はあったが、両方を兼ね備えた赤は出なかった。
  • 職人の手で重ね塗りすれば出来たが、量産車では無理と言われていた。マツダはクリア層・顔料層・高輝材反射層の構造で鮮やかさと深みの両立に成功した。ソウルレッドは各車種で20%超を占めており、全体でもナンバーワンの売れ行きとなっている。
  • 理想実現のために我々が取り組んだことは「デザインと設計の壁を取り払うこと」新しい色を作ろうとすると壁が邪魔をしてくる。別メーカーに勤める大学時代の同期から「あの色をどうやって生産エンジニアを説得したのか?」と聞かれた。それくらい意識を揃えるのは難しい。
  • マツダではデザインの初期段階からタスクチームを形成し、エンジニアや調達、塗料サプライヤーにも入ってもらって「理想デザインの思いを共有する」「意味的価値を理解して物理的特性に転換する」「自社塗装ラインの条件を検討する」を行なった。
  • 環境に配慮した生産技術によって、職人が一品ものを仕上げる手塗りをしたような精緻で高品質な塗装「匠塗」技術を実現させた。


Mashine Gray Premium Metallic

  • 2016年のアクセラアテンザから導入。緻密な金属質感と深みを両立させた。
  • マツダのロータリーエンジンやスカイアクティブテクノロジーなどマシン美学を追求したマシン感のある色合いを目指した。
  • 精巧な機械の美しさは「面で光る凄みのある輝き」「瑞々しい艶」からなっている。鉄の黒光り感を出したくてエンジニアとよくミーティングをして、カラーから物理的特性と光学特性を導いて言った。クリア層・反射層・顔料層と重ねることで、光と影の差がしっかりついた。


Soul Red Crystal Metallic
  • アートに迫る造形美・ダイナミックな光の芸術を目指して、究極の鮮やかさと深みの両立を行なった。光で多彩な表情を作り出し、角度を変えてみると別の表情をのぞかせる。
  • イタリアのショーに出展したが、朝・昼の光の中ではクルマの表情が異なる
  • 動:生命あるエネルギッシュな強さ。マグマが流れる躍動感
  • 艶:魅了する深みと艶。濁りのない深みのある赤い宝石のように
  • 凛:研ぎ澄ました品格を備える。日本刀のように
  • 赤いクリスタルをイメージしたオブジェを作り、それでイメージを共有しながら行なった。
  • クリア層・高輝度塗料・反射層(光反射フレーク&高輝度アルミフレーク)からなる構造で鮮やかさと深みをさらに伸ばすことができた。20172月からCX-5で採用されており、出荷するクルマの42%に選ばれている。今までここまで赤に偏ったことはなく、選んでもらえて嬉しい。


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