2017年5月23日火曜日

20170523

火曜は伊藤先生の「組織の経済学」

今日は2コマ使ってWorld Management Survey(WMS)の研究レビュー。

<生産性>
生産性とは「生産」の効率性でoutputs ÷ inputsで算出される。
総要素生産性(TFP)とは資本・労働・中間投入物等によって説明できないアウトプットの変動を測ったもの。観察可能な要素で説明できない部分に光をあてる。
inputs + TFP  outputs

Persistent Performance Differences among Seemingly Similar Enterprises (PPDs among SSEs)
一見似たような会社なのに、パフォーマンスに大きな差が出ている(ファクト)
産業・業界・国・時期によらない。
上位10%の向上と下位10%の工場ではアウトプットに2倍の差が生じており、しかも一過性ではなく持続的である。
コーポレートガバナンス・IT・競争環境・規制などが影響しているのか?
マネジメントの要素にも注目が集まっているが、事例研究には限界がある。
慎重にデータを集めて検証した。

Management PracticesMP)】
<何を測っているのか?>
  • マッキンゼーが開発した経営評価ツールを利用。
  • 1 Operation management」「2 Performance&target management」「3 Talent management(incentives)」の3領域の1819項目を5段階評価。インタビュアーが電話で聞いて採点する。アンケートなどの自己採点ではない。
  • 戦略よりも慣行に焦点
  • Operation management:大量生産ではなく、リーン生産方式を導入し、改善しているか。
  • Performance&Target management:目標を設定して記録をとり&追跡して、レビューして、会話して、結果を活用しているか。
  • Talent Management:パフォーマンスを発揮した従業員をどのように扱っているか。インセンティブをどう設計しているか。


Method
  • 電話によるインタビュー調査(4560分)
  • 工場長が回答者で、調査者は訓練を受けたMBA学生
  • 回答者・調査者双方のバイアスを軽減する試みを実施。
  • 自己申告の結果とパフォーマンスの間には相関関係がなく、データの信頼性が乏しい。


<回答者のバイアス軽減のために>
  1. 18項目あって点数付けしていることを伝えない。質問者が望むと信じる回答をするバイアスを避ける。スタンフォード大倫理委員会のお墨付き;バイアスを避けるためには不可避・事後的に送付・データ非公開
  2. Yes/Noのクローズ質問よりはオープン質問をする。回答を聞いて調査者が点数化する。
  3. 相対的基準ではなく絶対的基準で点数化
  4. 事例を尋ねる
  5. 回答者情報の収集と推計での利用 性別・年齢・国籍・勤続年数・職務経験・他社での勤務経験


<調査者のバイアス軽減のために>
  1. 対象となる会社に先入観を持たせない。従業員1005,000人の中小企業に限定。会社の業績情報を事前に与えない(会社名・電話番号・業界のみ)で、ネットで調べる機会も与えない。
  2. 事前トレーニング期間(1週間)、模擬調査セッション
  3. 同一箇所からの電話インタビュー&ローテーション
  4. 出来高給によるインセンティブ&監督者による監視
  5. 庁舎情報の収集と推計での利用(曜日・時刻・調査時間・調査者固定効果)


<回収率向上のために>
  1. 調査・研究ではなくて仕事だという言い方をする
  2. 政府や中央銀行などのお墨付きを示す。(日銀とか)
  3. 会社の業績やファイナンシャルデータは集めない(聞いて警戒されないように)
  4. なるべくしつこくフォローアップする。

回収率50%前後をキープした。
12件のインタビューと、他社のアポイント調整を行なった。

電話での会話を聞いた第2調査者の点数との比較:相関係数は0.887
異なる回答者・異なる調査者による再調査:相関係数が0.510.73

<サーベイ>
33カ国 15,000名のマネージャーにインタビュー
業績指標=CL×労働+CK×資本+CN×中間投入物+CM×MPCxX+noise
MPz-scoreの平均 平均0標準偏差1の分布に落とし込む

  • 平均MPは生産性と有意に正の相関
  • 上位25%と下位25%の生産性相違の10%23%を説明している
  • 収益性・成長性・生存確率にも有意に正の効果
  • 補完性の可能性がある。
  • 企業規模との関係
  • MPが高いほどTFPが高い。(サンプルサイズ:8,3144を超えるとぐっと伸びている。ここのMPの基準で4を超えるくらい揃っていると一気に生産性が上がることを示唆している。オペレーションや評価制度などの補完性の存在を示唆している。
  • Foreign multinationalsの方がdomestic firmよりもMPが高い。どこの国でも同じ傾向。国による違いは2%程度、産業分類で42%、国の業界の中の分布で56%が説明される。


<市場競争>
  1. Total imports/domestic production:業界としての輸入と国内生産の競合
  2. Lerner index: 1-(profit)/(sales):競争の激しさの指標
  3. 競合が何社あるかを答えさせた:015社より少ない)、2(5社以上)マネージャーの認識


競争環境とMPの間には正の相関がある。「競争が激しいので、より頑張った経営をする」もしくは「しょぼいマネジメントの企業は淘汰されて、高い企業しか残らない」を示唆しているのかもしれない。

<企業統治>
ファミリー企業の影響 所有と経営が一緒。
  1. ファミリーが大きなシェアホルダー(所有)
  2. ファミリーが大きなシェアホルダー(所有)&CEO(経営)
  3. ファミリーが大きなシェアホルダー(所有)&CEO(経営)&長子経営相続


ファミリー所有で経営権まで持つとMPが下がる。(負の相関を持つ)
長子経営相続だとMPが下がる。(負の相関を持つ)





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