2017年8月29日火曜日

20170829

『生涯投資家』(村上世彰:文藝春秋)

村上世彰氏がどのような思いで投資を行って来たか、コーポレート・ガバナンスに対する熱意が溢れる本。
Amazonでのレビュー評価がえらく高いのも納得の内容で、一気に読んでしまった。
コーポレート・ガバナンスを理解するのには良い本だと思う。難しいファイナンスの理論や数式なども一切出てこないのでご安心(笑)

著者はかつて村上ファンドとしてマスコミに取り上げられ、しばしば叩かれてきた。
本書の中で、東京スタイル・ニッポン放送・阪神鉄道などの投資先に対してどのような提案をし、どのような交渉をして来たかを率直に説明している。
最後の方のNPOへの支援やこれからの取り組みを見ると、思わず目頭が熱くなる。著者は大変な苦労をされたと思うが、爽やかな読後感だった。

「本業に投資もせずに現金を溜め込んでおくだけなら、投資家からお金を預かって事業をやっている経営者といての責務を果たしていない。事業に投資するか、そうでなければ投資家に還元しなさい」と言う主張は合理的。
個人的には「全くもってその通り」と共感することばかりだった。
逆に「どうしてあの当時、あんなにも興奮して村上ファンドの言動をことごとく叩きまくっていたのだろう?」と不思議になるくらい。

自分は2000年代前半の頃は機械に触れてれば幸せな生活を送っていたので、企業経営やビジネスには全く興味がなかった。マスコミの報道から「溜まってる現金を俺たちに寄越せ」と言ってるように聞こえていたので、「株主になった途端、株主還元を声高に要求し、還元されたら株を手放していなくなるんだから、とんでもない奴らだ」と感じて勝手に憤っていた(笑)

自分もファイナンスを学んで知識を得たこともあるし、世間も投資や企業経営に関するリテラシーが高まったと言うことなんだろうかな。
上場企業であっても、戦略的意思決定とは無縁な経営があるもんだと薄ら寒くなる描写もあったりして。
オススメの1冊。


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