2018年4月26日木曜日

20180426:『ロードス島戦記』とその時代−黎明期角川メディアミックス証言集

『『ロードス島戦記』とその時代黎明期角川メディアミックス証言集』(安田均・水野良他:KADOKAWA


ダンジョンズ&ドラゴンズのリプレイから始まったロードス島戦記。


日本でエルフと言えばディードリットが登場するくらい、日本におけるファンタジーの辞書とも言える地位を築いたといっても過言ではないだろう。
ラノベの走りと言われ、その後小説やパソコンゲーム、アニメとメディアミックスが進んだ日本ファンタジーの先駆けと言える。

本著はメディアミックスの研究者たちが安田均・水野良などロードス島戦記の立ち上げに関わった作家たちへのインタビュー記録である。
注意点は学術的な「証言集」となっている点だ。なるべく忠実に文字起こしをして文章化しているため、通常の編集が全くなされておらず超読みにくい(笑)
読み物のつもりで文章を追いかけていても、どこで納得できるのか、どこが面白いのかが頭に入ってこない。自分で流れをまとめる強い気持ちを持って臨むべし!
安田均御大や水野良の語ったファクトは面白かったけど、ロジックはいまいち入り込めていないので再挑戦だなぁ。

TRPGとは昔は紙と鉛筆とサイコロで遊ぶRPGである。


進行役(ダンジョンマスター・ゲームマスターなど)がプレイヤーの置かれた状況を説明し、プレイヤーはキャラクターになりきって行動を宣言する。攻撃が命中するか、魔法が成功するかと行ったランダム性の絡む部分ではサイコロやトランプなどを使って判定を行う。
ドラゴンクエストやファイナルファンタジーなど、コンピュータの役割を人間が担当して、プレイヤーと会話しながらゲームを進めて行くのがTRPGと思ってもらえると良いか。
もっとも、最近のTRPGではタブレットでダンジョンを描き、キャラクターシートも電子化されているので紙も鉛筆も使わないことが多いんだが(笑)

TRPGは進行役とプレイヤーの会話で進んで行くのだが、この記録を台本のようなト書き形式でまとめた作品をリプレイと呼ぶ。

DM:次のドアは両開きのドアで、何か大きな紋様が描かれている。
パーン:ここに間違いあんめぇ。開けて突っ込むぞー!
エト:ちょっと待ってよ。その前に作戦を立てよう。パーンとギムが突っ込むのはいいが、他の人はどうする?
ディードリット:私はマジックミサイルを使ってから、剣を構えて突進します。
DD誌上ライブ第6回 ミノタウロスの魔宮より引用>

といった具合に、ト書き形式で物語が進んで行くのである。

海外のRPGでも1ページくらいこのような形式で紹介されることはあるのだが、文庫本のシリーズとなって販売されているのは日本だけなのだとか。このフォーマットでは誰が何を喋ったかが一目瞭然で分かりやすい。またゲーム背景の部分はセリフ以外の部分に書けば十分に補足できるので大変便利なのだ。

本著ではロードス島戦記がTRPGのリプレイから始まったことがメディアミックスにおいて重要であったという点に着目している。
TRPGでは、「今回は竜退治のストーリーにしよう」と作り手(進行役)がシナリオを作るのだが、実際にセリフを紡いでサイコロを振るのはプレイヤーである。小説のように作家が全てを思い通りにできる訳ではなく、ある意味自分の予想を超えたストーリーになることもある振れ幅の大きなトライと言える。
プレイヤーと遊んだ結果をリプレイに起こし、それをもとに小説にしたことで、世界観がしっかりしつつもキャラクターの特徴が際立ち、他メディアに移植しやすいコンテンツに仕上がったということだろう。詳細はインタビューを行ったみなさんの論文を読むべし。

私のTRPGやファンタジー体験の本当に初期に味わったので、とてもよく覚えている。今の部屋にこれだけロードス本があることからもお察しである(笑)

ちなみに、私がロードス島戦記をパソコンで遊んだのはMSX2版であったが、ディスクの読み込みが鬼のように遅かった!通常はディスク1、街に入るとディスク2、ダンジョンに入るとディスク3と入れ替える羽目になり、敵と遭遇すると5分程度のディスクの読込が入る。ディスク読み込みのたびに本を読んでいたら、ゲームの待ち時間に読書をしているのか、読書の気晴らしに時々ゲームをしているのか分からないようなバランスだった!
それでもゲーム自体はとても面白かったし、ファンディスクのトーナメント戦を何周も勝ち抜いたり、マーモ島に渡ってランダムエンカウントでアイテム稼ぎをするという不毛なレベル上げもやり尽くした。
MSX2版のロードス島戦記を遊んだ人なら、数秒のローディングで不平を言うゲーマーに「それくらい待ってやれよ」と寛大な心になれるのだから、あながち嫌な経験だけでもない(笑)

メディアミックス展開は、関連多角化の文脈で考えるのだと思う。
自社の資源を持って新しい市場に展開して行くので、その中で当たるときもあれば外れるときもある。
アニメ化にがっかりされたり、誰得なんだと言う実写化に絶望したりすることが何度あったことか!中にはTRPG化と言うメディア展開もあったのだが、こちらは被害者はかなり少なかっただろう(笑)


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