2018年5月3日木曜日

20180502:スリーエムジャパン カスタマーテクニカルセンター見学

今日はWBSものづくり部のイベントで、スリーエムジャパン相模原事業所のカスタマーテクニカルセンターを見学!

WBS卒業生がアテンドして、質疑応答に答えてくださる豪華見学ツアー!

3Mジャパン紹介動画のメッセージ】
  • もしからしたらできるかもしれないという出来そうな安心感がある。
  • 自動化はするけれど、人が携わらないものづくりはしない。決まったオペレーションをこなすだけではなく、新しい製造プロセスを開発する意気込みでいる。
  • お客様の目線に立つことが大事。サンプル品を出して「これは面白いね」とコメントが返ってくるとモチベーションが上がる。
  • 取り込んだもの・インプットした情報が自分の中で混沌として存在し、そのうちポッとアイディアが飛び出てくる。そのようなアイディアから開発された製品が生産ラインを流れて世に出て使われるのは楽しい。
  • お客様が必要な時に必要な量を供給できないと意味がない。小ロットは顧客にとっても大切。要望に答えてくれている現場に感謝。
  • 15%カルチャーの例:食堂に行く時に不良品の不織布のロールを見て「白く光りが散乱されている!」と思い立った。
  • 生産現場がアイディアが出せる。ラボと生産の両方が強いところが自社の特徴。
  • 何度か試作しているとチャレンジ精神が生まれる。できるまでやる文化。
  • 3Mらしさは、人を繋げる開発。


【最強の両面テープ】
  • 昔、「ほこ×たて」という番組で、絶対剥がれない両面テープと、何でも剥がす高圧洗浄機の対決をしたことがある。記事
  • A4サイズの粘着テープで貼り合わせた金具を使って、クレーンでチェロキーを持ち上げるデモンストレーションをやった。
  • 対決現場や相手については全く知らされず、集合場所だけ知らされてそこに出かけて行った。高圧洗浄機企業の応援団だけがいる完全アウェーだった(笑)




3Mの歴史】
  • Minnesota Mining & Manufacturing3つのMで3M1902年に鉱山会社としてスタートした。コランダム(ルビー・サファイア)の鉱石が取れると思ったら、斜長石という脆いただの石で全く価値のない事がわかった。そこで研磨剤として使うように、研磨剤を紙に貼ってサンドペーパーとして売り出した。
  • 実は自動車メーカーで粉塵にまみれた環境で研磨をしている様子をエンジニアが見て、水をかけながら研磨することを思い立った。水をかけながらやれば粉塵の影響が抑えられて労働環境も良くなった。
  • また、当時は自動車のツートンカラーが流行り始めていたが、塗り分けのラインが綺麗に出なかった。そこでマスキングテープを開発した。


【ビジネス概要】
  • グローバルでは売上3兆円・社員9万名(うち技術者8000名)・5万5千製品・10万特許。1976年にダウに採用されている。200カ国で製品を販売、70カ国で事業展開。
  • 本社のあるミネソタは旭川と同じくらいの緯度。雄大な自然に囲まれた何もないところ(笑)
  • 日本事業会社は1960年に設立、その後2013年に住友スリーエムから100%出資の3Mジャパンに。売上2800億円で社員2700
  • 基礎研究を行うコーポレートリサーチラボはドイツ・日本・中国・アメリカに設立した。日本に最も早く設立され、お客様を招待して技術を開示して好奇心を持ってもらい、ニーズや課題に関する情報を入手した。USは最初の頃は技術の開示に消極的だったが、課題発見の糸口を見つけられることを実証した。
  • インフラ・IoT・環境・少子高齢化・Eコマースといったメガトレンドに着目して開発を行っている。


3Mのイノベーション】
  • サイエンスで解決できない課題はない。
  • お金を知識に変えるのが研究、知識をお金に変えるのがイノベーション。
  • マクナイトCEOは「自主性不可欠」「失敗の許容」「芽がでるまで耐える事が大切」と説いた。しかし当人はマスキングテープ開発の時はそのようにはできず、その後CEOになってから3つの大切さを実感するようになった。
  • 「ニーズを聞くこと」「新しい市場を開拓すること」「失敗を恐れないこと」が欠かせない。
  • 15%カルチャーと密造酒:時間の15%は業務以外のことに挑戦しても良いという企業文化。20%ルールのGoogleとは違って規約ではなく自主管理。「上司は見守る」「会社の設備は利用可能」「ネットワークで助言を得る」という全員でサポートする文化がある。ここでは15%カルチャー賞というトロフィーを授与して社員に周知している。
  • テクニカルフォーラム:社内学会のようなイベントを開催。情報と人のネットワークを作ることを目的としている。人を知らないと面白いことはできない。レポートやプレゼンテーションといったマテリアルはグローバル全体で共有する。詳しい人を見つけたら、困った時に「これについて聞きたい!」とメールすれば助言してもらえる。
  • アイディア・シーズの支援プログラム:15%カルチャーでは設備は自由に使えるが、予算が必要になるフェーズもある。そこでコンセプト立証用($15,000)と実現性検証用($80,000)のファンディングが用意されている。提案書を出して審査を受ければ、大きな試作をする予算を確保する事ができる。
  • 開発がOKになると、量産に向けた開発が進むことになる。ステージゲート制を採用していて、何を満たさないと次のステージに行けないかが全て決まっている。当然、上市が決まっているとそこから逆算していつまでにこのゲートを通過しなくてはならないかが決まってくる。
  • 各ステージでダメだった場合、どこがダメだったのかのコメントがつく。その点を改善できれば再チャレンジもできる。
  • 製品開発などやりきった人を見ると、色んな人に試作品やサンプルを見てもらって協力者を増やしている。グローバルでいくら売れるか?いくらで作れるか?というビジネス判断も伴うため、仲間を集める事が重要。


<テクノロジープラットフォーム>
  • 不織布:黄色のスポンジと硬い緑色のスポンジたわしが有名。こびりつき汚れには緑色部分を使うのだが、普段の食器洗いなどには黄色い部分しか使わない。10人に1人しか使ってなかった。その後、不織布の繊維に柔らかい大きな研磨剤と、その表面に硬い研磨剤をつけることで、焦げ付きからガラスのくすみまでとれるスポンジたわしを開発した。結果、5人に1人は固い方も使ってくれるようになった!
  • シンサレート:空気の層を含むため保温性に優れたマイクロファイバー繊維材。これは吸音にも使えるのでは?と自動車に採用された。会議室にも使えるが、壁全面に貼ると音の反響がなくなりすぎて気持ちが悪くなるレベルだった。
  • 油取りフィルム:多孔質フィルムで水は弾くが水蒸気は抜けるという特性を活かしてオムツに採用されたが、臭いがダイレクトに外に出て×。蒸れないレインコートとしての発売を試みたが、首回りが異常に汚れるというクレームがついて×。多孔質の孔に油が入り込んでいたことを知り、油取りフィルムとして製品化した。肌の潤い成分である水分が吸着しないが、油は取るという機能が受けて大ヒット!油が十分に孔に入ると透明度が上がることを使い、インクをしっかり吸着して透明になるフィルムとして看板にも使われている。
  • フィルム:太陽の塔や武道館の屋根にも使われている金色のフィルム。これは塗装でやると数年おきに補修しなくてはならない。しかし、3Mのフィルムであれば貼りやすく、そもそも耐候性も良いのでメンテも必要ではない。20年以上貼ってあるが補修は1回のみ。建物の床や自動車の内装など、塗装ではなくて表面にフィルムを貼ることで色合いと機能を実現する。
  • ポスター印刷:人の視線がどこに集中するか、内部で様々なデータを持っている。画像でデータを入稿してもらい、視線の集中度合いを確認してから印刷に入るというソリューションも持っている。
  • 多層フイルム:3Mにはフィルムを精密に多層で積み上げることで反射フィルムを作る技術がある。他社では反射特性を出すためには金属膜を挟み込む必要があり、スマホが使いにくくなる。光の屈折率を制御する技術がある。
  • マイクロ・レプリケーション:表面の高精細構造を作る事ができる。表面にキューブ型の四角い凹凸を歪みなくつける事で、161m離れても光が返ってくるレベルの反射率を実現した。研磨剤をピラミッド構造にして整列させる事で、目詰まりせず、常にフレッシュな面が表にくる研磨パッドを開発できた。
  • 接着:耐久性が高いし、会社的には剥がれないことになっている。「異なる素材を接着する」「水を封止できる」のが大きな特徴。基材が破れないので釘とビスを一切使わずに建物を立てている。異なる素材では熱膨張率も異なる。寒暖差の激しい地域では異なる素材の接合面でひずみが大きくなって釘やビスが抜けてしまう。ここで3Mの接着が活きる。3Mのポストイットは粘着層を塗っても厚みが変わらないし、離型剤を塗っていても全面にメモができる。安い模造品とは異なる。


100周年】
会社が100周年の時、9万人の社員全員にプレゼントが渡された。大きさ的に懐中時計かなとも思ったが、開けたら石ころが入ってた。これは起業時に失敗したミネソタ州のクリスタルベイトでコランダムと間違えていた斜長石!わざわざ閉山した鉱山に入り、9万人分の石をとってきた。こんな会社。


【感想】
  • 3Mと聞くと15%自由にできるイノベーションの会社!というイメージが強いが、直接のお話を聞く限り、コミットした成果を出すことと自由な研究との両立は現場ではとても難しい。
  • ファンディングした成果を計測することは必要だとは思うのだが、「どんな成果が出るかを詳しく調べられる」と評判が立つと、画期的な研究ではなくて失敗せずにそれなりに成果が出そうなテーマに偏ってしまう。計測すること自体が、応募する人の行動を変えてしまう・・・成果の評価はどこも苦戦しているなと実感。
  • グローバルでプレゼン資料やレポートを共有できて、人材検索システムも充実しているそうだが、それでも人の紹介を重視するというのは面白い。ステージゲートをクリアするためにはあらゆる人を巻き込んでいかないといけないので、これを繰り返すと人のつながりを大事にするようになるんだろうなぁと。




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