6月18日は淺羽先生の企業イノベーション研究会6月例会@丸の内に参加。
三井物産戦略研究所の藤代さんによる「中国産業イノベーションの現状」
定期的に通って中国の動向を追いかけている藤代さんが、現地で見聞きした中国の猛スピードのイノベーションに関する講演。
藤代さんの公開しているレポートはこちらから
<ダイジェスト>
- 中国ではナショナルイノベーションシステムとして、イノベーションが次々と出てくる仕組みになっている。日本人の多くは昔の中国のイメージしか持っていない。
- 2017年11月深センではハイテク展示会が開催された。中国企業だけでなく欧米一流企業の幹部が登壇したが、日本からの登壇者は無し。マッキンゼーのパートナーは「中国はすでにイノベーションリーダーになっている。多くの国が気づいていないが。」と述べている。バイアスがかからない見方をした時、世界は中国をこのように見ている。
- 中国の音声認識最大手iFlytekの技術力では、中国で入っている車の80%で使われている。97%正しく認識して反応する。毎日3億人が30億回使っているので、データが蓄積されてどんどん進歩している。音声インターフェースではグーグルのコンペティションで6年連続1位を取るくらい技術力が高い。IBM・Intel・ MITが提携するレベル。議事録いらずで、リアルタイムに音声を文字にして、同時に19カ国語に翻訳することも出来る。
- モバイクは中国政府の政策の後押しを受けていて、1日3000万回利用されている。GPSがついてデータも取れる。
- 広州のEHANGは人が乗るドローンを開発している。1000台のドローンを制御して飛ばすようなデモンストレーションを行っており、ドバイの交通局が採用を検討している。エアバスでも検討が進んでおり、早いスピードと柔軟性がある。
- X PENG MOTORSは中国版テスラを目指している。35歳のCEOが取り組んでいて、オールドパターンがないのでイノベーションを起こしやすい。
- QRコードは2013年に店頭決済への参入したことで爆発的に普及した。これも政府の規制緩和の一つ。クレジットカード決済では3%以上手数料を取られるが、QRコード決済はお店からは0.6%程度で、ほぼ取らない。安く大量に店頭にバラまけた。ALIPAYに仮想口座を作って、個人間送金も低額で行っている。振り込まれて貯まったお金を運用することで運用益も出している。また、行動履歴のビッグデータからも収益を上げている。生活の様々な場面で紐付いていて、利用者は全ての支払いが手のひらの中で済む。
- 名刺交換の代わりにWeChatの連絡先を交換するのが一般的。仕事のアポは全てここで進む。決済とも結びつく。良筋の客をつかめばビジネスがとてもスムーズに進む。
- 早稲田大学でジャックマーの講演会があったが、4400人の申込者があって聴講できたのは1200人。そのうち8割が中国人だった。このイベントはWechatで急速に広まった。質問者の多くも中国人で「まるで中国の大学に来ているようだ」とコメントしていたくらい。司会が「日本でのイベントなので日本の方に質問を伺いたい」としたところ、中国人が「I’m new Japanese」と述べて、自分のビジネスをジャックマーに売り込み始めた。サバイブしようとするモチベーションが全く違う。
- シェアリングエコノミーでは「何かをシェアリングしてデータを売る」という発想が強い。起業家にとって黒字化は先で、とにかくデータが売れれば良い。うまく行けばBATJ(バイドゥ・アリババ・テンセント・ジンドン)が買ってくれる。
- 中国のユニコーンの成長速度の速さも驚異的で、アメリカよりも短い期間で成長する。ユニコーンになるまでの年数が中国では1年(11%)2年(35%)の一方、アメリカでは1年(1%)2年(8%)。
- テンセントは医療診断、アリババはスマートシティ、バイドゥは自動運転、iFlytekは音声認識のAI開発という形で割り当て、寡占を許している状態。イグジット先として強いところに買われようとする。
- VCには中国政府が35%を出している。中国では人の繋がりがとても重要で、インナーサークルに入ってしまえ羽ルールや契約よりも人が優先される。お金を貼らないと情報は入ってこない。
- 深センにはトップクラスのVCが集まっている。優秀な会社にだけお金がつくので勝ち組と負け組がはっきりした。ピッチイベントを開いて年間5000件のビジネスプランを見るが、実際に投資をするのは50件。「コピーされて商売が上手く行かなくなる人間は深センにふさわしくない。それは当たり前なんだから、それを踏まえて打ち手を考えるのが深センの起業家のビヘイビアだ」という言葉も出た。
- 上位25%のVCが常に好業績で、強い人のところに良い情報が集まる。基礎研究の成果を短期間に商品化させる能力が非常に高い。しかし基礎研究の成果自体は海外の会社・大学から得ている。
- 毎年700万人が大学を卒業して、そのうち3%の23万人が起業活動をする。留学生もアメリカで就職するよりも帰国して起業することを選ぶ。大学も創業するエコシステムになっていて、株式の配当を資金源にしている。清華大学では年間680億円の収入を得ている。一流のサイエンティストは一流の起業家。
- 科学技術大学の天才クラスは1万人の学生の全員が東大理3クラス。ハーバードやスタンフォードに一流の教授を排出し、イスラエル・シリコンバレーの有力企業がリクルーティングに訪問している。しかし、ここで日本企業を見ることはない。
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