パリ出張の準備で、論文執筆や読書がすっかり滞っている今日この頃。
自分の中でまだまだ経験値が不足していて、生産性が上がってないなぁと痛感しつつ。
冨山さんのレポートは12月10日(月)の企業イノベーション研究会のもの。
産業革新機構の騒動の最中で記者会見をした当日の講演なので、冨山さんのコメントは結構過激だったのではと。まぁ、地の部分がかなり大きいはずだが(笑)
日本の企業イノベーションの課題と展望経営競争基盤CEO 富山和彦
【オープニング】
- 産業革新機構が瓦解してしまいまして。「革新」がどこいったんだろう?もともと考えていた何とか機構は無理。
- INCJという微妙な官民ファンドがあったけど、いつの間にかゾンビ企業の救済をやっていた。当初の目標から逸れていっちゃった。日本のVCはドメスティックにコツコツやるとこしかいない。ハードもソフトも製造・IT・医薬のイノベーションはグローバルマーケット。ベンチャーはグローバルでないとダメだし、VCもグローバルな動きをしないといけない。エコシステム自体がグローバルになっている。クライナーパーキンスの活動の半分は今や中国。そしてインド・イスラエル。昔はローカルだったが、エコノミーがグローバル化している。日本を除くけど。
- 日本のVCには英語が出来る人がいない。シリコンバレーで活躍したと謳っている人もいるが、本当に活躍している人は日本には帰ってこない。メジャーリーグに行った松井が帰って来なかったのと一緒で、凄くなかった奴が帰ってきている(笑)
- 唯一の例外が金子康成。彼はジェネンテックの創業者でバイオインダストリーを作ったオリジナル10で源流中の源流。グローバルレジェンダリーVCで経営者。そんな彼がJICの副社長に入ってくれた。いきなりメジャーリーグの中のチャンピオンズリーグレベルのメンバーシップを獲得できた。
- 成功報酬で1億円くらい払わないと話にならないが、メジャーのトップ選手ならそれだって安い。元の給料の10分の1になってしまう。それでも彼は一肌ぬいであげようと入ってきてくれた。経産省もこれでやろうという話になって、取締役決議もやった。
- この状況を朝日新聞がスクープした。トラックレコードが無いなどと騒ぎ出した。入管法やゴーン事件でもめている中で、官房長官が過剰反応して、経産省が話を撤回してくれという話になった。
- ちゃんと積み上げて、レオンチェンと言う昇り竜のキャピタリストをヘッドハントとしていた。西海岸で認可をとってファンドをスタートしていて、シリコンバレーやウォール・ストリートでも話題のファンドになった。
- 手続きを踏んで決議をして契約を結んで始めたのにひっくり返されて、予算を出さないと言われた。キャピタリズムの世界では法的安定性・契約を守るというインテグリティが非常に重要。国会対策という名目で、国民感情で法律をひっくり返された。
- こんな環境でグローバルなビジネスなんてできない、と坂根さんが怒り出した。こんなことありえねぇと怒っちゃってもうだめ。やってらんねーとなった。金子さんとしても、これは組織として持たないと判断した。年間10~20億円稼ぐ将来のある人たちだったのに。この際やめてしまおうという話になった。
- 1億円になるかもしれないと言われているが、固定給1500万円で、ボーナスが最大4000万円。普通にはそれ以上でない。4~6年後にキャピタルゲインが確定したら7000万円払われる。普通だったら二桁億円の給料が貰える人材に対してはしょぼい給料。
- 2兆円の予算だけは持っているけど、グローバルで1流の人はもう来てくれない。またゾンビ救済とか経産省のポケットで使われるのが関の山。いったいスクープした朝日新聞は何がしたかったのか。イノベーションは難しい。
- 坂根さんは明確に辞めると言った。「どっちかしかねえよ。あれもこれもは無い。」と。プロの世界でどうみられるかが重要。選挙に出るわけじゃないから国民感情は関係ない。やめた方が自分たちの評価が上がるに決まっている。
- 何とか機構も反省点はある。日本は大きな機会損失をする。大きなチャンスを失った。痛恨の極み。でもそういうもの。精一杯真面目に考えても、敗北を噛み締めながら次にいく。
【変革:グローバリゼーション】
- 89年ベルリンの壁崩壊でドライブがかかって旧社会主義圏が市場経済圏に入ってきた。
- さらに天安門事件で中国が資本主義に傾倒し、92年に社会主義経済から資本主義に転換。93年にソ連崩壊して世界の経済が市場主義経済圏に入ってきた。これは革命的変化をもたらした。
- 戦後からキャッチアップ型だった日本の経済はあっという間に新興国に取って代わられた。低賃金と勤勉性で良いものを安くたくさん作るビジネスは新興国に出て行った。その変化のスピードは劇的だった。
【破壊的イノベーション】
- イノベーションは改良的・連続的・漸進的といろんな側面がある。ディスラプティブイノベーションは産業構造を根底から変えてしまう。特にデジタル革命はブレイクスルーが生まれ、破壊的イノベーションが起きやすい。そうそう起きるものではないけれど。
- ジェネンテックは低分子医薬品から抗体医薬品へと薬の作り方を根本的に変えてしまい、日本の製薬メーカーは困ってしまった。
- フォードの車の作り方革命は破壊的だった。ホンダジェットは1機6億円です。お買い得なので、どっかのアパレル屋の兄ちゃんは買ってそう(笑)しかし、フォードの作り方革命では値段が2桁安くなった。ホンダジェットも600万円だったら買う人もいるでしょう。それくらい下がったら全く違う。アメリカは中長距離の移動が多い。超長距離には鉄道があるが、中長距離は馬車だらけだった。それが、モデルTの生産が始まって3年で馬車はいなくなった。自動車産業は破壊的革命がフォード以来登場しておらず、構造は変わっていない。100年ぶりに自動車産業に破壊的イノベーションが起こるかもしれない。それは自動運転とかEVとかになるだろう。
- 自分が起こす確率と起こされて食われる確率はどっちが高いだろうか?シリコンバレーでやると半分は起こす確率が高い方に手を挙げる(笑)普通はやられる側に回る。そう考えると、イノベーションはナイスではなくて、厄介な側に回る。どう対応していくかを真面目に考えなくてはならない。
<事例:IBM>
- デジタル革命はダウンサイジングと水平分業で、モジュラー化に馴染む。これによって圧倒的チャンピオンだったIBMが破壊された。
- IBMの過去の栄光を知らない人もいるけれど、かつて80年代後半コンピュータ産業といったらIBMは敵無しだった。IBMと競争している会社はコンパチ路線でコバンザメ商売をやっていた。やりすぎると産業スパイで捕まるけど。IBMの真の敵は独禁法だけだった。IBMは納期を約束しない会社で、出来上がったら持っていく。嫌なら他の会社から買えというスタンス。今のGAFAも当時のIBMに比べれば可愛いもの。それくらいすごかった。
- IBMは汎用機を作っていた。垂直統合型でハードもソフトも部品も自分で作っていた。しかし、パソコンに代表される小さいコンピュータにやられた。基本ソフトを作っていたマイクロソフトとCPUを作っていたインテルにやられた。
- 1人1台のコンピュータ、パーソナルコンピューティングを最初に言い出したのは実はIBMで70年代終わり頃だった。今から見たらおもちゃみたいな奴で、経営にとってはどうでも良いことだった。
- 基本OSはマイクロソフトから、半導体はインテルから調達した。インテルもメモリーでは日本メーカーに負けていて、CPUに賭けていた。インテルはIBM専用のCPUサプライヤーになるか、コンパックなど他社も含めたマルチサプライヤーになるかの意思決定が必要だった。パソコン事業はIBM王者で、専用サプライヤーだったが、他社への供給を始めるとIBMは引き取り保証をしてくれなくなる。自動車の部品メーカーと立場は一緒。そこでどうすべきかを悩み、アドリューグローブたちが自分たちで決めた。日本の企業だったらそこで中途半端な意思決定をしてしまっただろう。
- 巨人IBMは吹けば飛ぶようなしょぼいベンチャー(マイクロソフト・インテル)から技術を調達した。ベンチャーは「IBMの下請けの仕事が来た!」と思っていたし、IBMも彼らに覇権を奪われるとは思ってもいなかった。
- トヨタがパーソナルモビリティをベンチャーに下請けに出したら、そのベンチャーがトヨタを追い越したようなもの。これが破壊的イノベーション。予測可能性はありません。それがポイント。
<事例:携帯電話>
- 92年に日本に帰ってきて、仲間連れてデジタル通話グループに出向して携帯電話の新規参入に関わった。当時の日本はバブル崩壊の影響で景気が悪かった。会社を立ち上げる能力を買われて認可申請や事業計画を作るところを任され、営業代理店を作ったりCM作ったり端末調達プロポーザルを書いたりして携帯自体は有望だと思っていた。
- スマートフォンというコンセプトは当時からあった。全面液晶はパイオニアが作った。ネットをやるのもあって、技術的にも可能であった。デジタル通話は技術的にもデータ通信と相性が良かった。インベンションは予測されていたし、値段が下がれば普及すると思われていた。
- 通信手段として固定電話は致命的欠陥を抱えている。通信の基本は人と人だが、固定電話は人ではなくて場所の属性を持っている。電話を掛けても誰が出るか分からない。そのせいで我々の世代は彼女ができると困ったことになる。デートのお誘い電話をかけようとしても、21時以降になると親父がいるという(笑)電話に親父が出たときのQ&Aを色々考えてから電話しなくてはならなかった。
- 通信ツールとして携帯は優っており、普及すると誰でも考えていた。事業計画を作った。イケイケな借金して設備投資をし、基地局と交換機を作った。昔でいう電電ファミリーで、富士通・NEC・沖電気が端末機・基地局・交換機を作った。しかし、92年当時は後にインターネット業界を牛耳るFacebookやgoogleは存在しなかった。存在しなかった奴ら相手に対処するための戦略は組みようが無い。
- アップルは現在時価総額トップクラスだが、当時の株価は2ドルを切っていた。スティーブ・ジョブズはセクハラとパワハラでアップルをクビになっていた。暇でしかたないからスタンフォードビジネススクールに行って話をする。めちゃめちゃ人気のあるスピーカーだったが、当時幹事をやっていた女の子と最大かつ衝撃的なゴシップになった。彼女は人気のある美形女子で、独身男子はみな狙っていた。「よりにもよってどうしてジョブズと結婚するんだ?」と学内はローレン・ロスとさえ言われた。
- 当時ジョブズは人格がおかしいとさえ言われていた。アップルの株を売って、アニメが作れないピクサーとコンピュータを作れないネクストコンピュータに投資していた。インターネットとモバイルがなかったらアップルも復活していなかった。
【イノベーションに対する経営】
- よくわからんことを前提に経営するのが正しい。破壊的イノベーションが起きそうで起きない。ロードマップから言えば、5年前にはカリフォルニアで無人運転車が走ってないといけなかった。街中をボストンロボティクスのロボが動いてないといけない。あれはバッテリーが30分でなくなるし、ウィーンウィーンとうるさくて実は使い物にならない。そう単純にはいかない。皆が言っているところと違うところで革命的な変化が起きるのかもしれない。
- インターネット革命の最初のプレイヤーであるネットスケープは存在していないし、最初のプラットフォーマー1号はアメリカオンラインだった。起点を作った人が席巻するわけではない。検索もyahoo!が作ったけど、覇権を握ったのはgoogleだった。
- 「自分たちで起点をつくらないといけない」と思いがちだが、現実を見るとパクった奴が勝っている。0→1を踏ん張ってデザイン思考などを学んでいる奴も増えてきたが、あれでうまくった話を聞いたことがない(笑)どいつのをパクろうかという見立ての能力の方がはるかに有効。
<事例:マイクロソフト>
- マイクロソフトはスタンドアローン時代のチャンピオンで、パッケージソフトで販売していた。そんなマイクロソフトのビジネスは消えた。GAFAにもならず、さりとて消えてもいない。しっかりと時価総額ランキングにも入っている。なぜだろう?元のビジネスはしっかりと破壊された。次世代の覇権を取ったわけでもない。
- マイクロソフトは何をやっている会社かというと、現在はB2BのITソリューションの会社。そうなるために個人パソコンユーザーを捨てた。サポートやめて個人に冷たい。創業期や覇権を握ったときのお客さんたちを捨てる決断をした。さようならーと(笑)長くお世話になったけどネグレクトした。選択と集中とはこういうこと。むげもなくサポートしないとは言えないのが日本企業。
【イノベーション時代の経営】
- 要はイノベーションをどうするかではなく、イノベーションの時代をどう経営するかが大事。そのためには歴史から学ぶしかない。落とし穴は何か?
- スマイルカーブ化する力が働く。論理的な必然性がある。モジュラー化が起きると標準品の部品を作っていくことになって組み立ての付加価値が下がる。川上工程はサービスインターフェースが直接化するし、川下工程ではプラットフォーマーが出てくる。
- 川下工程は小売業など分散する傾向があったが、アマゾンみたいなプラットフォーマーが登場してきた。過去の30年間の共通する傾向。
- 物が絡むバリューチェーンでは物が強かった。部品とアフターサービスよりも製品が強かった。ここに落とし穴はない。
<事例:ファブレスへの対応>
- 97年携帯電話の仕事が終わった後は、ファブレスのプロジェクトが多かった。組み立てを外に出す仕事で、電気製品と半導体に起きた。自分がPLをやることになっていて、DRAMの後工程を外に出すことになった。ちょうどその当時、ホンハイなどのEMSが出てきて、日本の半導体メーカーに売り込みに来ていた。彼らのオファーは付加価値の低い工程を社内でやるべきでないという内容だった。後工程の部分を海外に工場ごと売却する。日本の工場を小さくして、海外に移していく。いきなり工場の従業員をクビにするのは受け入れられないので、事業譲渡という形を取った。正社員の工員半分を台湾の会社にいきなり売却した。20年前のテリー・ゴウは当時から怪しい黄色いマフターしてた(笑)
- いきなり転籍は無理だろうと、モデレートに進めるやり方を考えた。とりあえず合弁からはじめたが、「拒否権を渡すのはいかがなものか」みたいな議論が出てきて、20→34→51と少しずつ株を渡していった。
- その後、日本のDRAMはあっという間に全滅。デジタル革命の破壊性が本格的に発揮されるとあっという間に瞬殺される。サムソンが一番儲けているのはDRAM。
- 戦略の論理としてファブレスに行かざるを得ない。しかし、組織の情理・情念としてすぐには変えられない。折り合いをつけようとすり合わせにいった。間をとって合弁でやろうぜとやっていたが、ある日シーソーが倒れてバタッといった。
- もっと連続的に動くならば、漸進的ならばうまくいったかもしれない。しかし、ゼロか1なら殺されてしまう。全員リストラになっちゃう。従業員全滅。共犯者だったのであちゃーという感じ。
- これは液晶でも同じことが起こった。シャープはわずか3年で過去最高益から倒産まで追い込まれた。パナソニックは自動車電池で業績が良いが、普及率が一定以上高まったらコモディティ化が始まる。日は正午を回っている。正午の気温は高くなく、2時ごろが最高。実はもう傾いている。日本の会社は日が落ちてから撤退戦を始めてしまう。しかし、既に日が落ちてるから買い手がつかない。最高益と騒いでいるときが一番危うい。デジタル型コモディティ製品ではアップルもそろそろ怪しい。
- 韓国1社になったが、日本には元々7社あった。全部一緒になってバカでかくなるか、あっさりとファブレスにするかしかない。そこには情理との衝突があり、これを何度も繰り返した。
<日本企業の意思決定>
- 産業創生機構にいたときの議論。改良的イノベーションで市場を作るが、日本国内で過当競争になった挙句世界で負けることが続いていた。カーナビなんて国内で何社作ったことやら。液晶も同様。全体が成長していたから生存できていたものの、液晶も2003年くらいには一般論として一緒にしようとなる。シャープ・東芝・日立に話をしても「うちは売らない」ばかり。売り手いないとM&Aが成り立たない。利益は減ってるけど黒字、成長率は下がっているけど売上はあがっている状態だった。「黒字増収の事業を売却したことない」とトップに言われて売り手を探していたが、そんな事業を売却できる日本企業はいなかった。
- しかし、液晶が赤字になったらみんな売却したくなった。組織内の情理に負けている。最後の命運は知っているはずなのに、売り手が出て来ないのがおかしいと皆言っている。向こうもそう思っている。
- 実は経営上のミスマネジメント。イノベーションが読めなかったのか、イノベーションの変化が読めなかったのではない。「こうなって行くよな」という段階で余裕はあった。日本企業は、マイクロソフトのようにはできなかったケースがほとんど。状況を把握していたのに、スパッと辞めずにズルズル引っ張ってしまった。古いお客さん・仲よかったお客さん・従業員を裏切ることになると思っちゃった。そうなると日本の会社はすり合わせ型になる。
【良い技術と競争領域】
- 車にとって良い技術とは何か?よく走り・よく止まり・よく曲がることと言われる。今の定義だと、トヨタが開発してようが、理研が開発してようが同じ答えになる。トヨタにとって良い技術とは?東大やAISTと異なる絶対的な違いとは?営利法人であるトヨタと公益法人にとっての良い技術の違いは?良い技術とは稼げる技術のはず。それが今日稼げるか10年後稼げるかの違いはあるかもしれないけれど。トヨタにとって良いことは日産にとって悪いこと。
- 車を買う人が「この車のワイパー素晴らしい」「パワーウインドウ素晴らしい」「パワステの感触最高」といって買いますか?そんな人はいない。企業の技術者は何のためにその開発をやっているのか?良い技術とは稼げる技術。その技術があるとトヨタを選んで買ってくれるなら、どんどんやれば良い。そうでなければ、ありものの安いのを買って来て付ければ良いでは無いか。それなのに良いワイパーやウィンドウを作ろうとしてしまう。お客さんはそれを理由にトヨタの車を選ばないというのに、そんなことを日本企業はたくさんやってしまう。
- 競争領域では自分で一生懸命作り込んで開発する。自社ブランドやサービスを選んでもらうか、他社よりも高く払ってもらえるように開発する。しかし、その両方なければ、協調領域にして世の中で安いのを買ってきてつければ良い。
- この部分は協調領域と決めて安くやろうとなる。ドイツだったらボッシュとかに投げちゃう。しかし、日本の会社が得意なボトムアップコンセンサスでは絶対に決まらない。
- 環境変化が漸進的でボトムアップでやっていく事業領域であれば日本企業のやり方はマッチしている。丁寧な現場力・すり合わせ・ボトムアップという実行も意思決定もそれで良い。偉くない人から稟議にハンコを押す。うちでは、たまに僕からハンコを押す(笑)普通はない。
- これを永久な意思決定にできるか?現場がファブレスを望む頃には会社は潰れている。現場の意思決定では、全部競争領域になってしまう。
【経営力=意思決定×実行力(現場力)】
- 日本は太平洋戦争時に真珠湾で頑張っちゃったけど、その後に航空母艦や飛行機ではなくて戦艦大和を作っちゃう。逆にやられた方がイノベーションと思って空母を作って戦艦を作るのを辞めた。やった本人は、現場主義のボトムアップで戦艦を作る話が上がってきちゃう。
- 組織能力として現場力が強いことは否定しない。環境変化が劇的でなく、すり合わせ型であれば意思決定の幅は狭いので適している。
- デジタル化が進んだ途端に「テレビを自社で作る必要があるのか?」「液晶を作らなくてはいけないか?」と意思決定の幅が広がる。そういった意思決定が広くなる。そうなるとトップダウンの意思決定をする機会が増えてくる。リーダーの技量・能力といった、トップダウンで決める能力を持っていないといけない。
- このような事態は、この十数年の電機メーカーのそこら中で起きてきた。一時期の売上1位を失ったことで、サンヨーとシャープは潰れたが、日立やパナソニックは多様化していたので、何とか生き延びられた。これは経営者がすごかったというわけではなく、単なるラッキー。
- 今後も破壊的イノベーションに遭遇するとすればどうすべきか?このような時代を経営できる会社の形になっているのか?日本組織の現場力を生かしたいなら、意思決定を間違えるな。
- 競争領域なら徹底的にこだわって作り込めば良い。お客さんが金払ってくれるんだから。逆に金にならないところに作り込むな。
- 儲かっていない理由は戦略的な理由。現場に原因はない。儲かってないなら人手不足だしやめりゃいいじゃん。日本の社会なんで「バッサリやめると迷惑かける。供給責任がある」といった説明が始まる。供給責任があるなら値上げすれば良い。3割値段を上げたら持続的に供給できるはず。うちが辞めたら顧客が困ると言ったそばから「値上げしたら顧客が逃げる」なんてことを言い出す(笑)ならどっちが正しいのか?ルネサスはそうやって値上げして復活した。圧倒的シェアを持っているし、ルネサスが無いと車を作れない。
- 日本ではサプライヤーが値上げ交渉してはいけないことになっている。人手不足なんだから、交渉すれば案外通っちゃったりする。失注したって困らないし、儲からない分野なんだからそもそも辞めた方が良い。赤字事業に社会的意義なんてない。そんなところに限ってブラックな現場になっちゃう。いったい何のためにやっているのかわからない。
- 当たり前なんだけど、こういうときはトップが出ていくもの。現場を出そうとするから困る。トップが出てきて値上げを要請すれば案外通る。これは現場マターではなく、戦略マターになっている。
- 日本型経営はボトムアップ力とトップダウン力の両方を持ってないとダメ。トップの資質の問題もある。
【オープンイノベーション】
- ベンチャービジネスの評価はトップが自分で判断。自分で見に言って即断即決。良い情報がコマツに集まってくる。パナソニックもようやくそうなってきた。
- 有望なベンチャーのピッチイベントでは、提携先の前でベンチャーがピッチを行う。クライナーパーキンスのピッチイベントでは虎の子を発表する。ラウンドCとかDでやる。トップティアのベンチャーのお披露目イベント。GAFAだとCXOがくる。100億円くらいの予算を持っていて、その場で即決してよいことになっている。孫正義も同じことをやっていて、そういう決まり方をしている。
- 自分の直感力のないことには手を出さない。逆にわからない人はCXOをやっちゃいけないし、部下に調べさせて意思決定する奴は来るな。
- 東大ベンチャーの仕事で、ユーテックというユニコーンを4つか5つ出しているVCがある。2~3年に1回ピッチイベントをやっているが、そこには日本大手企業の部課長クラスが来ている。彼らはレポート書きや異業種交流のために来ていて、それでおしまい。「オープンイノベーション」と言っているけどやる気あるのか?「分からない奴がオープンイノベーションというな!バカ」という感じ(笑)
- ユーテックの有望案件にMUJINというロボットのコントローラーモジュールを開発しているベンチャーがある。機械学習は作らず、ルール設定を自分で出来てパフォームするものを作り始めた。海外の留学生が始めた5人くらいのベンチャーだけど面白い。オムロンのCEO,CTOに直接来いと言って来てもらったが、その場で意思決定してもらった。結果、ユニコーンにまでなった。
【リーダーシップ】
- どういう人をトップにするのか?60過ぎて社長になってる場合かよ?総合して考えると、タッチーな問題にメスを入れないと、イノベーションの時代に経営なんてできない。
- 連続的・改良的イノベーション時代は既存の事業者が有利に決まっているし、ボトムアップ型マネジメントで良かった。工場長になって、専務・・・と社長に至る昇進ラインを考えておけばよかった。北米の社長になって実績あげて社長になればよかった。しかし、それをやっていたら日立が潰れそうになった。中西さんが言っていた。それで潰れそうになったからリーダーの選び方を変えた。
- 延長線上で出世していくラインは常務止まりとして、社長やCXOにする人間は30代くらいの頃からジェットコースターの中で生き残った奴を選ぶ。トップダウンでビシッと意思決定できる奴じゃないとダメ。工場のオペレーションをやってた人にはできない。上下の問題ではない。適正の問題。
- 破壊的イノベーションがおきていても、フェーズが映れば改良フェーズになる。破壊性があったのは出てきた直後くらい。8割は改良フェーズ。改良は改良で大事なことに間違い無い。ただし、改良型イノベーションのやり方や万能薬では破壊的イノベーションを取り込めない。そこからきた奴らに殺される。相反する組織能力をどう両立させる企業体になれるのか?がポイント。
- この問題にどこまで本気で取り組むのか?という問題がリアルに問われている。自動車産業はそれで必死になっている。なんでソフトバンクと組まなくてはいけないの?パナソニックと組まないとダメなのか?
- 当然水と油だが、美味しいドレッシングは両者が混ざってるのが美味しい(笑)日本の組織は改良型に偏っている。1980年台まで強かったのは、その時代に適応して出来上がって行ったから。戦前はなかった。70年しか歴史がないものを文化といったら、歌舞伎の人は怒りますよ。せめて100年はないと。でもやっぱり300年かなぁ。日本的経営なんて日本文化じゃ無い。ただのシステム。
- 頭で考えるだけでなく、やること。そうすると従来の慣習とぶつかる。部課長がベンチャーを評価するとだいたいネガティブな評価になる。ベンチャーの技術は長所で売り込むけど、会社はロバストな技術を事業で使っているからベンチャーの技術が欠点だらけに見える。こんな問題があるとネガティブ評価をしてしまう。
- 優秀な人材を育成するには、クソワーカーがたくさんいる工場で、課長をやれば良い。ローカルな理不尽な上司とローカルなワーカーの板挟みになってもがくべき。日本の自動車工場なんて、ゴーンしてみれば楽勝な会社だった。アメリカの現場の方が厳しい。ほっといたら誰もQC活動なんてやらない。そういった意味で日本の工場はマネジメントを育てるには不向き。トップのキャリアパスだけを変えるだけではだめ。
<人材と採用>
- 日本企業でトップAIタレントを採用すると言っている。「どのレベルの人ですか?」と聞くと、「優秀なトップクラスの人」と答える。しかし、新卒でも論文で世界の引用ランキングトップ10に入っている人は初任給で年収2億円~3億円くらいは必要。そんな人材を日本企業は初任給500万円で雇おうとする。
- 東大工学部でもそのレベルの研究をやっている修士・博士はいるが、この段階で2000万円くらい。そのレベルの人材なら自分でベンチャーやっている。そうすればバリュエーションはあっという間に何十億円になる。そういう世界。
- それを受け入れない限りはベンチャーなんて無理。20代のガキが10億円~20億円手にすると思うとムカつく。産業ナントカ機構みたいになっちゃう(笑)でも、グローバルなステージではこのようなゲームが行われている。W杯に出場しているのに、日本はレギュラー選手の年収2000万円以下でやりますと言ってるようなもの。この問題を克服できないと。グローバルなイノベーションのゲームに出るんじゃ無いということ。グローバルイノベーションのゲームに出て成長したいなら、年収が五倍~六倍ちがうことを何のストレスもなく受け入れないとやっていけない。
- 早稲田を卒業して読売新聞の政治記者になった人と、早稲田を卒業して読売巨人軍に入ったエースピッチャーでは初任給は数倍違うが、それは受け入れられている。
- グローバルな産業に出ていかないという選択もある。ローカルな会社とかバスとか。ただ、ローカルな産業はそこまで成長しないよ。
【Virtual・Casual →Real ・Serious】
- フェイスブックはお遊び。ツイッターで真面目に仕事をしているのはアメリカの大統領くらいだろう(笑)カジュアルなサービスならPDCAをぐるぐる回して伸ばしていけば良い。しかし、シリアスな部分では「これくらいで良いかなー」と社会実験することはできない。ロボティクスでは医療介護ロボでも、間違うと人を殺してしまう。お気楽にとんとこ出来ない。
- 無人運転はアメリカのハイウェイや日本の高速では適しているが、例えば土日の午後に下北沢に入れたらどうなるだろうか?車道の真ん中に子供や老人や自転車が走っている。人がいなくなるまで待っていたら夜中まで動けねぇじゃん(笑)自動車間通信できても人とは通信できない。解決しないことはある。渋谷で左折は無理。あそこは赤になっても渡る。自動運転では曲がれない。
- リアルでシリアスな分野では日本は絡みやすい。リアルモードになってくると、川下はサイバーではなくリアル。ウーバーは白タクの運ちゃんが実際のお客さん運んでいる。サービスを提供しているのは個人の運転手。ウーバーが良いかリフトが良いかは彼らが選択する。良いお客さんを紹介してくれてピンハネ率が低いところを選ぶ。ウーバーは席巻できなかった。国によって競合が違う。最終的なインターフェースはリアルにそこでやっている人。物流の人とかはビジネスモデルが全然違う。
- 30年前は自ら世界中から集客しようとしても、よその国のホテルのどこがよいかがわからなかった。アメリカに住んでいる人に頼んで調べてもらうとか、もしくはJTBに頼むとかしかなかった。
- 現在は情報が全部インターネットで得ることができ、ネット化が進むことによってメガプラットフォーム化が進むと思われた。世界的にレストランやホテルや旅館のチェーン化は止まっている。リアルなサービスにおいては、プラットフォームはメガではない。マイクロで現実に顧客と接点を持っている事業者がどう賢くデジタル革命の技術を使うかの話になっている。
【イノベーションの活用】
- 人口減少地域のバス会社の再建をやっているみちのりグループ
- 5000人くらいの従業員で、東北地域で営業していてROS 5%の会社。バス会社としては条件の悪いエリア。本数と乗客の多い京都のバスがなぜ赤字なのか? 客の少ない地域で黒字にしている。
- ITは使っている。今起きている現象として、車の配車システムは超安い。いろんな会社がオファーしてくる。以前は100億円ないと作れなかったシステムが月額数万円でできる。予約システムもありものを使っていて、システムインテグレータに騙されなければ(笑)安い。
- 自動運転の社会実装にも適している。無人タクシーはハードル高いが、ルートが決まっているバスの方がやりやすい。それに岩手県に、下北沢とか自由が丘はない。そんな景色をみたことない。人が車道を歩いているのはお祭りのときだけ(笑)という過疎地。
- 自動運転が実現できそうで、世界中から実験したいとオファーが来ている。乗り心地はちょっと気持ち悪い。うちの会社が開発しなくても、すごい大学の人たちがやっている。こちらとしては開発をやってもらえれば良い。脅威でも何でも無い。ウーバーが自動運転サービスを東北でやるか?そんな面倒なことはやらない。バスの営業所を置いとかなきゃいけない。
- バスは壊れる。メカだから。整備工が必要。それをロボットに変えるのは大変。どんなにちゃんとやっても事故が起きる。対応する人がいる。そういうベタなことをやりたく無い人はIoTをやる。奴らが豊かになったのは、規模の経済に集中していたから。Face to Faceをやらないから何兆円も売り上げを建てた。
- ローカルなビジネスにはそんな人たちが入ってこない。ローカルオペレータに付加価値があるなら、グローバルなイノベーターの成果をどう使いこなすかが重要。それを自分で開発する必要はない。乗っかれば良い。オープンソーシングが進んでただに近い金額で使えるようにあっている。みなポンポン作って論文書いてライブラリにあげていく。使ってもらったランキングになる。それらをパクれば良い。GAFAに勝てなくて良い。彼らのプラットフォームを使わせてもらえれば良い。経済の仕組みわかってないのでは?したたかに使えば良い。
【グローバルとローカル】
- 産業構成的に言うと、日本のGDPの70%はローカル型。グローバルでラディカルな仕事は3割切っている。製造業の就業者比率は2割で今後減る。
- ドイツは製造業国と言われるが、ドイツ企業とドイツの国とは別問題。ベンツが売れているのは中国。ベンツの本社はシュットガルドだが、AとかCとかベンツをドイツで作って中国まで持っていくか?そんな事やったら経営者はアホ。中国で作るに決まっている。事実そうなっている。メイドインジャーマニーで作ってるのは5~6000万円くらいのやつだけ。ユニチャームもメイドインジャパンにこだわって、指定は日本製だがハイエンド製品のみ。それでは雇用なんて吸収しない。先進国では人件費・エネルギー・環境コスト高い。
- グローバル化のパラドックスと言われている。デジタル革命が進むほど、ローカル型産業に依存して食っていくことになる。ビビる必要はない。大半の産業は交通・飲食・保険・地域で食っている。
- これから生まれてくるリアル系ビジネスの果実を使いこなせるか。それを問われる。何を勘違いしたか、自分で開発しようとしてはいけない。お金と時間の無駄。マネジメントイノベーションが問われている。これまでは日本が真面目にやってこなかった。つまり伸び代があるということ。
- 中国すげえ?やらせておけば良い。考えてもらおうじゃありませんか。ライブラリーに入ればそれが使える。
- 液晶パネル?作ってもらえばよい、中国人民の税金で安く使ってくれる。彼らの所得移転だよ。補助してるんだから安く買えば良い。
- 日本は地政学的には大国では無いし、二度と大国にはなれない。日本の周りは大国ばかりになっている。アジアで最も安定して安全な国になる。米中で揉めるほど楽観的。中規模国としては、どっちかが強い方が厄介。ここから先は日本企業も国も未来は明るい。
<事例:日産>
- 10億円か20億円かは誤魔化さず書いておけばよかった。怪しいものは開示するのが世界の趨勢で、欧米は厳しくなっている。一般庶民にとって10億円も20億円も一緒なんだから。
- そもそも日産のガバナンスけしからんと行ってるバカがたくさんいる。圧倒的最大株主であるルノーと日産で同じCEOのゴーンさんがいて、彼が他の役員を全て選んでいる。日産のガバナンスを議論すること自体がナンセンス。あの持ち株構造でガバナンスが機能するわけがない。
- 解決方法は「ちゃんと開示すること」「持ち株構造を変えること」
- ルノーの大株主はフランス政府。ルノーの車をアメリカで買ったからといっても、彼らはフランス政府のお客さんと言えるか?そんなことはない。フランス政府にとって、大事なのはフランス国民だけ。
- ルノーの大株主として、ルノーの企業価値を高めようとすると、海外に逃げていく。フランス政府にとっては、ルノーが歯を食いしばって国内で雇用を維持することが大事。つまり、一般株主とフランス政府の間に利益相反がある。それが日本に連鎖している。あのグループをめぐる本質的で問題のある構造。これまで日本とフランスなので顕在化しなかった。英米法に基づくアングロサクソン系 上場企業の考え方では、支配的大株主は一般少数株主のために行動しなくてはならないという考え方が根付いている。今回のようなケースでは間違いなく日産の一般株主がルノーに対して代表訴訟を起こしただろう。だから欧米では親子上場をやめる傾向にある。日本とフランスはその辺の感覚が緩い。資本多数決で決まると思っている。アングロサクソンから見たら危ない構図で、アメリカでは考えられない。
- 日本でも一部会社法で取り入れられていた。しかし、経団連が反対した。日本の大企業は上場子会社をたくさん持っていた。そこから訴訟を起こされることを避けるため、非上場にしちゃうと出世競争に負けた奴向けのポストがなくなっちゃう。日立の河村さんも日立マクセルの会社をやってたけど、日立に戻って全部やめた。利益相反を抱え込んでしまう。
- 国はそこに住んでいる人じゃないと客じゃない。あくまでもローカル。グローバルな経済社会にローカルな国民感情からステートキャピタリズム(国家資本主義)が生まれる。アメリカもブレグジットも本質は同じ。デジタル革命やグローバル革命は中産階級を破壊する。
- 自動車の1000万台クラブなんてバカじゃないか。下手にでかくなると巨大な製造固定費が生まれる。いまどきパソコンをシェアで語るやつがいるか?別れた方が良いかもしれない。
【メンバーシップ】
- メンバーシップがあるのは日本国内だけ。違うゲームで揉まれてこい。トップが動かないと仕事が動かないという状況でやっていかないといけない。コマツの国内売り上げは全体の10%もない。そこを生き延びてきた。
- メンバーシップ的な人を使うときに、リーダーがメンバーシップだとダメ。
- アメリカも内部昇格が多いが、日本はメンバーシップの権化。8割が転職経験がない。経団連の副会長で転職経験無し。ザ・メンバーシップの人がトップになってるから、果断な決定ができない。会社には出入り自由にして、パナソニックを出た人が戻ってきて偉くなるようになるべき。
- ハーバードを社費留学した後すぐ辞めて、許しがたいと思った人が100人はいただろう。マネジメントとして鍛えられている。樋口さんが立派な人かどうかは別として(笑)、友人として良い人かどうかはリーダーとは関係ない。
- 日立も出入り自由にした。年功制を辞めてジョブグレードを決めた。30歳の上司の下に50歳の部下がいるし、経営者は40歳でも構わない。その戦いの脈絡があったから、日立の中西さんは一括採用をやめようといった。
- 波風立てたくない経営者と、グローバル競争に巻き込まれている会社にとって、メンバーシップ型でやったら30年後には全滅している。そのときに観光産業だけで食うという覚悟があるなら良いけど、そんなに高賃金にはなれない。どっちなんだ?中途半端をするなという意思決定。
- 中西さんが経団連でやっていることはアメリカと中国に殺されるぞという危機感の現れ。トップダウン型で決めないとだめ。この5年くらいが日本が良い線をいくかどうかの分かれ目になる。
【リーダーの役割】
- マネジメントリーダーシップの本質は売り上げ・コスト・利益だよね。これに反する綺麗ごとを行っても持続性がない。経済原則は算数。奇跡は起きない。ドラマでは起きるけど。ダメなものはダメ。
- あっというまに冷徹なことが起きてしまう。避けるのか、逃げ切ってしまうのか、サーフィンで乗るのかをさっさと決めないとだめ。ボトムアップで議論している暇がない。多くの人が嫌なことをやらないといけない。危機の時代はリーダーの時代。
- 組織の中は情理と合理のきしみあいが起きる。合理性だけでは会社は動かない。電機メーカーは社長がよく潰されている。失脚しちゃだめ。人望も人身掌握も大事。そのあたり、ゴーンはうまくやっていたはず。
- 合理と情理の折り合い。リストラはその塊。非情理。10人中2人やめてもらうのに、2人には罪はない。会社にとっては20%だけど、2人にしてみれば100%。ワイパーやってる人にとってみればそれが人生。やめさせられるのは理不尽。ただ、理不尽さがあっても会社で失脚しちゃいけない。そこで決断しないといけない。
- 方法論として、目の前のアジェンダがすり合わせにいくべきか、鮮烈に選んだ方が良いのか。それを間違えると致命的。「あれもこれも」を選んじゃって、問題を先送りしてしまうことが敗因。あれかこれかなら意思決定科学になる。社外役員の立場では「AかB」で決めることにはどちらを選んでも反対しない。ただ、「AもBも」には反対する。
- 人間に対する洞察力が大事。命かけて抵抗してくるのか、そうでもないのか。その人にとって最も大事なことは何か?を見極めることが必要。
- JALのパイロットのリストラは冷徹な洞察。年収5000万円でみな高給取りだった。スキルがあれば次のポストもある。しかし、旅館のリストラの方がよっぽど怖い。東電だと現場のリストラの方が大半。人生訳ありで追い詰められている人は牙を剥く。
- どれだけ多くの人生・人に関わってきたか。経営はトップダウンとボトムアップの両方。結局、経営はOJT。課題意識をもって、厳しい決断をして結果を背負う。
- 殿!ご決断を!という意思決定は当たるも八卦・当たらぬも八卦。9勝6敗で上出来。負け戦は負けっぷりが大事。負けっぷりで差が出る。人事の評価で出てくる。負けっぷりをちゃんとみてやる。
- トーナメント戦ばかりやろうとすると、皆引き分けに持ち込もうとする。1勝14分けで銀行はそんなやつばっかり(笑)。ろくなリーダーが出てこない。負けないことが大事な仕事もあるけど。
- ディシジョンメーカーが引き分けじゃダメなタイミングで引き分けにしてしまうのは大問題。
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