2019年11月30日土曜日

20191129:開発生産性のディレンマ

長内さんの授業イノベーションマネジメントのゲスト講師として生稲先生に講演頂いた。生稲先生の研究書「開発生産性のディレンマ」を読んで参加。

ゲーム産業を題材として、合理的な意思決定をするとノウハウが蓄積されている既存シリーズの続編の開発に偏ってしまうメカニズムを明らかにしている。


テレビゲーム産業において、イノベーションパターンを生じさせる要因を分析することが本研究の狙い。


テレビゲーム産業には下記の特徴がある。
  • プラットフォームとなるゲーム機本体の補完財であり、プラットフォームのイノベーションにも影響を受けること
  • デジタル化によってノウハウが蓄積されやすく活用コストが低いこと
  • 開発コストに比べて製造コスト自体は極めて低いこと


ゲームを制作するとアルゴリズムやキャラクターモデルなどがデジタルデータとして蓄積され、開発を通じて制作スタッフの経験も積まれていく。全くノウハウが溜まっていない状態であれば、これまでにない新しいジャンル・システム・挙動のゲーム開発プロジェクトにもバイアスなく選択することが出来た。完全新作というハイリスク・ハイリターンにも研究開発投資を行うことができた。

しかし、一旦ノウハウが溜まっていくと、過去のデータやノウハウを活用したソフトを開発する方がコストを抑えられ、ヒットの筋道も分かりやすくなる。つまり、開発生産性が高くなる。大当たりを狙うよりも、着実な改善・強化を図ってファンの期待に応える作品を出すローリスク・ローリターンのプロジェクトを選択するようなインセンティブが働く。

収益が見込めるゲームを作ろうとすると、過去の流用を最大限生かせるシリーズ作品の開発に偏ってしまって、野心的・画期的な新作を出すことが難しくなるというパターンが存在することを開発生産性のディレンマとして提唱している。
短期的には堅実な収益につながるシリーズ作品の開発を行うことが合理的となるが、長期的には継続するシリーズものばかりでマンネリ化を招きかねないという問題が発生する。



感想
  • 開発生産性のディレンマ自体は全ての産業に当てはまる。ノウハウが蓄積されることで、それを活用することで開発生産性が高まることは自動車でも家電製品でも同じ。ただ、アルゴリズムやデータなど直接流用して発展させることが可能なノウハウが多いデジタル製品の方が流用するご利益を受けやすいので、ディレンマの影響が表に出やすくなっているのだろう。ハード開発の場合、過去データをそのまま使えるわけではなく、流用可能レベルが低い産業や製品では、シリーズ続編といってもあまり開発コストが変わらない可能性もある。
  • ノウハウが蓄積されるのはデータストックだけではなく、人の中にも蓄積される。ゲーム産業黎明期はシナリオ・キャラクターデザイン・プログラム等を全て内製化しなくてはならなかったが、産業が発展するに従ってシナリオライターやデザイナーもゲーム業界の仕事を引き受けるようになり、専門受託企業が増えた結果、アウトソーシングが可能になる。分業して開発の一部を引き受けるパートナー企業のような開発エコシステムが変化することで、イノベーションパターンも変わってきているのだろうなぁと思った。
  • 大企業で開発すると売れそうな既存シリーズの続編ばかりになってしまう。それに嫌気がさした人たちがスピンアウトして新しい会社を立ち上げたり、子会社で別ブランドを作ったりして完全新作にチャレンジすることを支援しているだろうか?コーポレートベンチャーみたいな仕組みはゲーム産業でもワークしているだろうか?
  • 世間に理解されなずにクソゲーになってしまうような作品を出してしまっても、それを教訓にして次のシリーズの開発に活かすという道もあるだろう。スクウェアもバハムートラグーンとかレーシングラグーンとかバウンサーとかDRIVING EMOTION TYPE-Sとか、香ばしいゲームを出しているが、これらにチャレンジした経験も将来に生きているのだろう(と、思いたい)個人的にはディープダンジョン、キングスナイト、デュープリズムあたりの続編が出て欲しい。
  • 電車でGo!のVR版をやってみたことがある。そもそもアクセルとブレーキだけのゲームなのに、ヘッドセットつけてVRにする意味があるのか?と思ったが。やってみると、要するに好きなだけ脇見運転ができることが分かった。ゲームとしてとらえるのではなく、電車運転シミュレーターとして見ればアリなのかもしれない。VRコーナーはどこも1時間待ちくらいなのに、このブースだけガラガラで待ち時間ゼロだった理由が分かった気がした。
  • 20代の頃はガンダムオタよりもゲーマー比率が高くて、フルパッケージのRPG(クリア時間が4050時間)を月に12本はクリアーするノルマを自らに課してゲームばっかりやってたので、事例がどれも懐かしかった。PCFXは今でも元気に置いてある。ここ3年はゲームやることがほとんどない(年に1本くらい)けど。


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