2017年3月17日金曜日

20170317

今日は経営研究所グローバル経営研究会@丸ノ内に参加。
DHBRオンライン史上最も長い記事を書かれている(笑)琴坂先生の講演会。

「専門的経営人材をどう活用するか -急速な国際化を果たす新興企業の研究から-
企業名と参加者による質疑は伏せて、先生の講演の一部のみをレポート。



リソース・ナレッジ・ケイパビリティがどのような経路で獲得されているかという知見獲得経路について対象企業にインタビューを行い、企業が国際化に取り組むスピードとタイミングで4つに分類して解析した研究。

【企業分類】

国際化の開始タイミングが早い←→遅い(創業3年以内に6カ国だと早いと判断)
国際化のペースが早い←→遅い(現地に人・オフィスなどのプレゼンスを設けるタイミングを国際化とみなす)
の2軸を使って、4象限に分類した。

1)Born-again global firms(開始タイミング 遅い:国際化ペース 早い)

創業後、しばらくは国際化しないけれど、始めるととんでもなく早い。 
日本には3Born Globalよりも更に数が少ない。

2)Traditional SMEs(開始タイミング 遅い:国際化ペース 遅い)

昔は商社・輸出・派遣・生産開始などでステップを踏んで国際化に進んで行った。このカテゴリーが多かった。

3)Born Global(開始タイミング 早い:国際化ペース 早い)

創業した瞬間から国際化 日本には少ない。

4)Small international firms(開始タイミング 早い:国際化ペース 遅い)

東南アジアの雑貨屋など。規模は小さいけど取引先は世界中だったりする。

着目している2)と3)だけを直接比較すると、タイミングとペースの要素が分解できないので、象限の上下・左右でグループ分けして比較した。

【分析の枠組み】

国際化に必要な知識を3種類に分類

  • 国際化(競争力・競合・流通)
  • 市場(非市場要因・ステークホルダー)
  • 制度(地域の制度・金融)

知識を得た経路を5種類に分類

  • 経験(自分自身の経験Learn by doing
  • 繋がり(知ってる奴に聞く)
  • 外部情報源(調査機関やレポートを活用 これをやっておかないと他の学びが弱くなる)
  • 情報源の内部化(知ってる人や、できる組織を買ってくる)
  • 経営陣の知見(もともと知っていたこと 実は自分はアメリカ出身とか)

【振り分け】


  • どの知識をどの経路で入手したか?
  • 個人に依存するものか?
  • 組織の仕組みになっているか?(日常・変化)
創業者の思いつきで行われているのではなく、創業者が2週間に一回必ずメールを送るなど仕組み化されているか否かを判断して振り分ける。
また、その仕組みをどのようなタイミングで変化させているかにも着目。

知識獲得経路自体を変えていく仕組みがあるのではないか?スタティックではなくてどんどんリファインしているのでは?という仮説にもとづき、仕組みの変遷にも注目した。

【結果】

分類した企業ごとに共通していた知識獲得経路をまとめた。
1)Born-again global firms(開始タイミング 遅い:国際化ペース 早い)

  • お金で時間を買っている特徴がある。全てのプロジェクトが成功するとも思っておらず、やってみて成功したものにリソースを集中していく。失敗したら撤退。
  • 「20カ国でヘッドクォーターができる人がいたら全員採用。2年以内に成果が出なかったら撤退」と判断基準は明確。
  • 一見お金を無駄に使っているようにも見えるが、最初から一点集中して失敗するよりリーズナブル。

3)Born Global(開始タイミング 早い:国際化ペース 早い)

  • 専任の人が仕事の一環として一番面白いと思った情報を取ってきて、それを社内にシェアするプロセスがある。
  • 業務データベースができていて、経験して学びを得た人間を捕まえやすくなっている。相談しやすい人にするのではなく、相談すべき人間にリーチしやすくしている。
  • かなり明示的に仕事の役割を決めている。知識が属人的な繋がりに依存するのは当然だが、できる人間が暗黙でやっていることを、共有して仕組み化している。属人化するとその人間に縛られてしまうデメリットがある。
  • 100カ国から10カ国ぐらいに絞ったらマーケティングリサーチをする。現地の調査員を10名くらいクラウドソーシングで採用して、互いにクロスチェックしながら調査させ、出来の良い人にはそのまま試作・販売までやらせてみる。そのような会ったこともない人間をマネジメントできる仕組みが備わっている。
  • 経営陣も世の中にある様々なインフラを活用すればスピード化できることを知っている。
  • 「これが効果的」にたどり着くまでの試行錯誤が早い。どんどん変わっていくが、決まったら変わらない。
  • 「たまたまいい人がいた」などのランダム要素が含まれている。
  • 外部資源を有効活用するマネジメントがとても上手い。

2)Traditional SMEs(開始タイミング 遅い:国際化ペース 遅い)
4)Small international firms(開始タイミング 早い:国際化ペース 遅い)

  • 仕組みを変えないし、情報を取りに行っていない。
  • 属人化された経験からの知識で進めている。
  • お金を無駄にしないようにしている。
  • 勝負には出ていかないが、社内で試行回数を増やしていく。

【今後の国際化に関するコメント】


  • 非常に多様な働き方ができるようになった。フルタイムではなく、パートタイムの専門的経営人材が供給されるようになった。そう行った人材を活用している企業の成長が早い。
  • 外部の専門的経営人材を獲得するには、起業家のカンファレンスがプラットフォームとして機能している。
  • 失敗しないという短期的な効率性よりも、多様性が必要ではないか?失敗を前提として、損害を局所的にしておく工夫が望ましい。
  • 業務関係だけでない広い関係を重視している。仕事に関連しそうな人がいたら外部ゲストを招聘する企業も多い。彼らは非公式の繋がりを重視する。
  • 人の業務は規約・役職で縛るのではなく、業務定義書として管理した方が良い。個人で仕事を定義するパズルが出てくる。
  • 0から1を作る人、1から10、10から100で人は入れ替わる。成長段階に応じて専門家がいる。必要な機能に特化する。
  • 今は規模の経済を買ってこれるような、インフラを使用することができる。非常に機動性が高い。
  • 自分が持っているものだけにこだわらず、組織の境界を再定義して活用する。世界的な価値連鎖を作っていく。


入山先生のグローバル経営のゲスト講師としてお話を伺ってから2度目だが、切り口や調査内容がとても興味深かった!

得られた知識獲得経路も、Born Globalとして成功確率が上がるやり方だと思うけれど、あくまでも成功確率をあげるだけで、絶対成功ノウハウではないのだよね。
「サイコロ3個振って3個とも出目が1だったら成功!」という確率だったものが、適切なコミュニケーションと外部活用をすれば「サイコロ1個振って、1が出たら成功」という確率まで引き上げることができるってことだろうね。USJのマーケティングから学んだところでは。


0 件のコメント:

コメントを投稿