2017年4月30日日曜日

20170430

『地方創生』(木下斉:東洋経済新報社)

東洋経済オンラインの連載でよく読んでた木下斉さんの本。
表紙の右上に私の地元大分県が!(笑)


ネタの選び方・モノの使い方・カネの流れの味方・ヒトの捉え方・組織活かし方の視点から、地域の構造問題を整理してどうあるべきかを議論している。
ビジネスの現場として地域を見て来た著者が、官製地域創生策の問題点をリアルに描いて居て、勉強になると同時に「うちの会社も同じ」と感じるところも多い。

【ゆるキャラ】
自治体のゆるキャラは全国で2,000体を超えて有象無象がひしめいており、過当競争に陥っていて存在感は薄れる一方。ゆるキャラグッズを地方のお土産として経済効果を算出したとしても、それは従来は別パッケージで売って居たお土産のパッケージ変更に過ぎず、利益が増えるわけではない。
企業のビジネスが成功すると、全国の役所からの視察が殺到したり、執筆や講演依頼が集中したりして経営者が実務に入れなくなり、結局ビジネスが続かなくなってしまうことも発生している。

【地域ブランド】
売れなかった商品に地域ブランドをつければ売れるようになるなんて幻想。営業に行き、顧客の声を聞いて地道に売れるように改善しているか?富裕層向けの高額・高付加価値商品なら、富裕層の意見を聞いているか?外国人観光客向けなら、来日する方が欲しがるモノになっているか?売りたいものをそのまんま商品にして、買ってくれるのを待ってるだけではないか?

<感想>
組織の話が後半に出て来るが、地方創生の失敗は戦略の不在とも言えるし、そもそも目標が揃ってなくてバラバラになってるとも言える。
ルメルトの本で指摘されている「組織が最も取り組むべき課題に手を打っていない」段階で、悪い戦略の典型に陥っている。

また「地方創生」が具体的に「何を持って地域創生がなされたか」の定義がされていない。KPIに何を持って来るかの設計がなされていないため、結果重視ではなくてプロセス重視になってしまう。「私たちもゆるキャラを作ろう」という行動が目的化されてしまい、実行した段階で結果を見ずに終わる。資料で必要になったらゆるキャラグッズの売り上げをヒアリングして合計して「経済効果はこれくらいです!」と記載して成功事例になったりとか。

さらに言えば、関係者のインセンティブがバラバラの状態で合議制でしか意思決定できないというのはかなり深刻な気が。
営利企業で「事業で稼いで利益を上げる」ことを目的としてやっていても、「会社が黒字で自分も今まで通り働けるなら今の水準でOK」「毎年倍々で売り上げを増やしていきたい。海外展開もしたい」とメンバーの認識がばらつくことは日常茶飯事であろう。
組織の偉い人が「地域創生事業で利益を稼ぐ」ことよりも「収入には困ってないので、ベテランである自分の意見を最重要視してもらう」ことの方に強く誘引されると、そもそものKPIの設定すらできない。議員や自治体トップになると次の選挙で勝たなくてはならないので、インセンティブ構造はかなり入り乱れている感じも。


自治体が従来のバラマキ型政策を取る余裕がなくなった今こそが、生産性重視の政策転換のポイントだ!と先日の東洋経済セミナーで多くの講演者が指摘していた。公務員の経営リテラシー向上も必要かもしれないね。

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