2017年6月9日金曜日

20170608

木曜は立本先生の「製品アーキテクチャ論」

今日で最終回!この授業でも伊藤先生の名前が出た!(笑)
「ゲームツリーで分からないことがあったら、伊藤先生に聞いてください」

【全体のラップアップ】

下位命題1)(主効果)プラットフォーム企業はオープン標準化を戦略的に活用して競争優位を得る。
オープン標準は競争を歪めないから、有利不利はないと言われていた。しかし、実際にはネットワーク効果をうまく使っていた。

下位命題2)(主効果)プラットフォーム企業は取引ネットワーク内のハブに位置取りすることによって複数の市場にまたがる情報を媒介して競争優位を得る。
教科書では大概述べられているが、データから実証した研究がなかった。

下位命題3)(主効果)プラットフォーム企業は二面市場戦略、バンドル戦略や企業間の関係マネジメントなど、市場構造に基づいた戦略を実行して競争優位を得る。
製品それ自体が良い悪い(ミクロ戦略)ではなく、市場構造に基づいたマクロ戦略があるのではないか?

二面市場は「損して得とれ」で動く。ある事業で損して市場を広げて、別の事業が補完財市場で大きく儲けるということをトップマネジメントが理解しているか?は重要。転職が少ない産業ではトップマネジメントが案外他の産業を知らないこともあり、組織的に理解できるか?という問題が存在する。

下位命題4)(副次効果)グローバル・エコシステム形成の過程で、プラットフォーム企業が台頭すると国際的な産業構造の転換を引き起こしてしまう。
企業自体は先進国が優位になろうとか、産業が良くなって欲しいとか、そう言ったことを狙って経営しているわけではなく、結果的に生じてくるもの。国際ビジネスでは昔からある問い。

優れた命題はYesNoで答えられるものである。
主効果:一生懸命意図してやった結果、主として生じること
副次効果:一生懸命やった結果、意図せず生じること

下位命題1)2)はエコシステム成立の段階
下位命題3)はエコシステム拡大の段階

【展開型ゲームでの理解】
  • 時系列で逐次プラットフォーム企業・共存企業の意思決定が連なって行くので、マトリックスにまとめるよりもツリーで書いてあげる方がわかりやすい。
  • 戦略レバーとは、相手(共存企業)の戦略的意思決定に影響を与える行動。これをうまく使えると、偶然ではない成功に導くことができる。
  • プラットフォーム企業にとって、最も大事なことは最初の方に現れる。エコシステム拡大のゲームに進む時に自分に手番があるように持っていなかくてはならない。
  • プラットフォーム企業が強いという印象を持たれるのは、エコシステムが成立した後の拡大期での行動による。最初からいつも強いわけではない。


DVD規格の時の日本企業:エコシステムは作ったが・・・>
  • DVD規格を日本企業が一所懸命作って、映像コンテンツのデリバリーエコシステムを作った。1998年は10億$だった市場規模が2004年には700億$になった。1998年時点では日本企業とフィリップスが市場を独占していたが、2004年時点では7割を米国ハリウッドが利益を持って行く形となった。
  • 補完財企業からどのようにお金を取るかが重要だったのに、製造業としての競争ばかりをしていたということ。補完財企業に対して影響力を持たない標準化ばかりをやってしまった。
  • DVDの時は自分がやりたいから標準化するという流れになっていた。書き込む側をクローズにしておけば良かったものの、R社がオープン標準化してしまってグローバルエコシステムに意図せずなっちゃった。


<オープン領域とクローズ領域>
  • どちらかだけを議論するのではなく、両者を議論すべきこと。
  • クローズ領域にこそ戦略レバーの源泉があるはず。
  • 自社に有利なオープン標準の作り方が存在する。自社に不利な標準化を芽のうちに潰せるかどうかが重要。
  • 技術情報にNDAを要求したり、複数部品を統合してインターフェースを非公開にしてしまう。
  • 時間経過を考え、最初はオープンだけど増設だけは自社が必要という囲い込みもあり。


<産業構造の転換>
  • 新旧の逆転やキャッチアップが起こるかどうか。今回の事例では共存企業(補完財企業)にもユーザー企業にも多く発生していた。
  • 半導体製造装置市場においては、ユーザー企業(半導体メーカー)側に新旧交代が起こったが、それ以外の事例では共存企業側に発生している。
  • 新旧交代の圧力があってもユーザー企業側が規制で保護されていたりすると、共存企業側に圧力が集中する羽目になる。
  • GAFAみたいな化け物企業ばかり見ているから、プラットフォーム規制論が出るのではないか。エコシステム全体が大きくなり、新興国企業に事業機会を与えることにもなっている。


<今後の課題>
  • 企業内部の組織的意思決定プロセス
  • 戦略性についての問題不確実性を伴った戦略を考慮
  • 共存企業・ユーザー企業がプラットフォーム企業の台頭について、とりうる対応戦略
  • 規制した方が良いのかどうか?本論では市場規模は見たが、エンドユーザーの便益までは考慮していない


<本研究の意義>
アップルもサムスンもスマホを作るプロダクト戦略をとりつつ、アップルはプラットフォーム戦略も採用している。両方やらないとダメという話にもなる。
良い製品だけ作っていても、プラットフォーム企業の台頭を考えておかなくてはならない。

<ネットワーク効果の源泉>
1990年代まで:コンセンサス標準に基づくオープン標準化
2010年代から:IoT/ビッグデータ/AIのデータを使ったデファクト標準
物理的なものから生まれるデータを処理して、精緻な予測ができるようになる。
データを作り、保存抽出し、高精度の予測モデルを作る。



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