2017年6月19日月曜日

20170619

『論文捏造』(村松秀:中公新書ラクレ)

研究法の授業がキッカケで読み直した本。
著者の村松氏はNHKの番組プロデューサー。本書はBSドキュメンタリー「史上空前の論文捏造」用に取材した内容で構成されている。


自然科学であれば、著者以外でも検証実験ができるのだから不正は起こらないだろう、と良く思われがちである。残念なことに、実験データの不正が表沙汰になることもまた珍しくないのだが。

アメリカの名門ベル研に所属していた研究者ヘンドリック・シェーンはネイチャー・サイエンスなど一流論文誌に次々に掲載された超エース研究者だった。
「超伝導」という極低温にすると電気抵抗がゼロになって、電流がいくらでも流せる材料が存在する。医療用MRI装置などに使われているが、冷却するには液体ヘリウムが必要で、コストが高いことが問題となっていた。
シェーンは有機物(フラーレン)と金属を組み合わせた材料で、従来の記録よりも60度以上高い温度でも超伝導となることを発表して、大きな話題となった。
その後も発表するたびに自身の記録を塗り替え、一流論文誌に8日に1本のペースで論文を掲載するというとんでもないハイスピードで研究が進んでいった。

しかし、論文の実験データがコピペや拡大で作られていることが発覚。1年に及ぶ検証の末、捏造と認定されてシェーン本人は解雇された。


  • ネイチャー・サイエンスなどの論文誌の査読で見抜けなかったのか?
  • ベル研の中で不自然な点を追求できなかったのか?(サンプルは本人がドイツに出張して作っている・生データが出てこない・サンプルを借りようとしてもいつも破損されている・実験ノートが存在しないなど)
  • 指導教官は異常とは思わなかったのか?
  • 世界中の研究者が追試に成功しなかったことから、何か動きはなかったのか?

本書では上記のような疑問に対し、100人に取材をしながら経緯を解き明かしており、非常に興味深い内容となっている。

捏造までのレベルではなくても、「どちらとも言えないけど、強いて言えばこっちかな」とデータの解釈を傾けて結論づけてしまうこともある。データが微妙な差しか生まなかった時は特に。

良く「客観的にデータを見なくてはいけない。バイアスがかかってはダメだからね」と注意する人もいるわけだが・・・

経験論で言えば「データに差がある」と思って丹念に解析しないと見落としてしまうことは多々存在する。本当に微妙な傾向の違いが何らかの本質を物語っているのか、ただのノイズなのかは詳細な解析が必要になる。しかし、「差がない」意識で見ていたら大概の場合はあっさり見落としてしまう。
自分がバイアスに対して中立な目を持ちながら、些細な差分も見落とさないようにせよ!というのはなかなかに難しい気がするなぁ。検証は他の人の目でやったり、逆算で検算したりはするけれど・・・あわてものとぼんやりもののせめぎ合いではあるんだがね。

第1種(あわてもの)の誤り:正しいのに間違っていると判断する誤り
第2種(ぼんやりもの)の誤り:間違っているのに正しいと判断する誤り




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