2017年6月27日火曜日

20170626

『東芝原子力敗戦』(大西康之:文藝春秋)

帯で「スクープ・ジャーナリスト」と紹介されている大西さんの東芝本。

寄せられた情報をベースに取材を行い、リアルタイムで事件を追いながらもノンフィクションの本に仕上げるというスピードとの戦いだったと著者が振り返る力作。

【東芝事件のざっくり流れ】
  1. 原発輸出を国策として進める国・経産省の意向に従いたい
  2. 米ウェスティングハウスを超高値で買収して技術(?)を手にいれた
  3. 米ウェスティングハウスは利益を生むどころか、赤字を垂れ流し続ける。さらに東芝本社が経営に関与できなかった
  4. 国策(経産省)に従うため、それでも原発事業は順調と言い続けたい
  5. 大手コンサル会社を入れて巧妙な粉飾決算実施
  6. 発電所の建設・ノートPC・半導体などでの粉飾決算を公表。歴代3社長が辞任して幕引きを図る。メディカルを売却して債務超過を回避
  7. 原発事業は絶不調なるも、減損せず
  8. 米ウェスティングハウスから巨額の赤字見通しを知らされ、再び債務超過に転落。事態打開のためメモリ事業の売却を試みているところ


歴代社長や社員の生々しい声に加えて「経産省の動き」「監査法人と戦うためにコンサルを活用」なども赤裸々に語られていて、そう言う動きやパワーもあったのか・・・と唸ること多し。

歴代社長の「チャレンジ」が有名になったが、本書では事件の核心を「サラリーマン的な全体主義」に置いて解説しているのが興味深い。
近視眼的になった結果、自分の身に降りかかる目の前の問題を過大評価する一方で、将来的・社会的な問題を過小評価してしまう。
事件の中でやって来たことは、落ち着いてロジカルに考えれば明らかに間違ったこと。
それでも「これは仕事だから」と思考停止してしまうと、効率よく淡々と実行してしまう・・・そんな恐ろしさを感じさせられる本である。

最初の粉飾決算のニュースの時「何で原発は減損しないのか?」と思って資料を見た時にとても驚いたことを覚えている。
足元は絶不調だけど、信じられないくらい急角度で売り上げが回復して利益が出まくる資料になっていて、「これでOKなのか?」としばらく不思議に思っていた・・・




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