2017年7月14日金曜日

20170713

今日は根来先生担当の経営学研究法(MBA編)

入山先生はWBS出演のため早退し、川上先生も聴講にくる人気授業!

<本日の主張>
  1. 事例の間には共通性があることと、それと同時に、特殊性があることは両立する。矛盾しない。理論は共通性を志向するもの。事例には特殊性があり、その特殊性が興味深い研究の源泉となっている。
  2. 統計的実証は個々の事例の「傾向法則」からの乖離を「ばらつき」と捉える。傾向法則とは例外を許さない法則(必ずそうなる)よりも緩い法則。撹乱要因で理論に入っていない(変数化していない)要因がばらつきを作る。多くの場合は例外がある。抽象度を高めると例外がなくなるが、人間の本質(利己的な主体の想定など)に掛かる法則は例外が生じる可能性が出てくる。
  3. 事例研究は、個々の事例の「傾向法則」からの乖離を「個々の条件による真実」と捉える。1つ1つが全て真実と考える。事例研究で擬似的な実証ができると主張する人もいるが、原理的に全数調査ができない限りは仮説の域を出ない。
  4. 事例研究の主な役割は仮設の創造である。



<科学的真理の考え方:デューイ>
  • 素朴科学主義:探求を続けていけば知識の収束点(真理)に到達すると考えるもの
  • 素朴相対主義:人間の数だけ真理がある。エビデンスによって反証される・実証されると言うことに関して、あまり注意を払わない。信じるものは救われると言う議論になってしまう危険性も。
  • 納得できる証明がなされた知識を真理と呼ぶ。実験や観測の結果によって真理は更新される。そのため、更新可能な形で定義され、反証できるように示しておく必要がある。何かを主張する時に、「私はそう思うから思う」ではダメで、論拠を添えて主張するべき。
  • 専門家によって証明がなされた知識を科学と呼ぶ。


<社会科学理論の並立生>
  • 社会科学は自然科学よりも緩くした考え方をする。
  • 社会科学の異なる理論は相互に理解可能。基本的な前提が違うので、相互に理解できないという考え方もあるが・・・
  • 人為的に作る構成概念では、ある属性に着眼して焦点を当てている。異なる構成概念を作ることも可能だが、微妙に対象物が違う。優劣をつけることは難しい。


<理論・実証と良い研究:トンネル掘りのメタファー>
  • 理論では先行研究を調べる必要がある。先行研究に追加したり修正したりするのがアカデミックリサーチ。実証をしないリサーチもない。
  • 理論の側と実証の側から掘り進めて、両者が出会ったところでトンネルが完成するメタファーを想定する。
  • 理論側だけから掘り進めても実証の不毛の地に出たり、実証側だけから掘り進めて理論の不毛の地に辿り着いたりする。できれば両方から掘り進めたい。
  • 実証にこだわってデータを取る方が良い。データで面白そうなことを言えそうかどうかの感覚が重要。それらのデータを見ながら「この理論使えそう・説明できそう」と思われる幾つかの理論を元にで掘り進めて見るべし。理論をいじってもそう簡単に研究できない。こだわるものがない人は研究できない。
  • 何かこだわる事例を持っている人が研究しやすい。こだわり事例があると前に進みやすい。
  • 効率的な研究はない。実証側も彫り直すことはよくあること。短い期間で成果を上げようとするならば、実証にこだわった方が良い。このデータ使って何かで着ないか?という感覚を重要視しよう。


<モデル>
現実を表現しているが、現実そのものではない。
モデルの具体的姿は、構成概念・命題・図(フレームワークの表現 分類・分類別の定石を示す)・数式・物(クレイモデル)など。

<モデルと現実との接続3パターン>
  • 検証:ある命題が現象と対応することを示すこと。物的証拠(データ)と照らし合わせる。事例があることは、他の理論にも当てはまる可能性もある。
  • 反証:ある命題に反する現象を示すこと。アリバイ。中範囲の理論ではできる。
  • 了解:ある命題が自分にもそうだと思えること。これに依存することが経営学にはとても多い。「そうだね」と共感する・思える感情
  • 了解に反する命題を出すときは、エビデンスを出さないといけない。一見今までの常識に反することも、違う構成概念を説明すると納得してもらえる。
  • 因果関係を辿れる可能性を事例で示し、一本道でつながっていることに納得すると理解した人が因果を再現できる。因果関係を想定してもデータを持ってないことが多い。信じて先に進むことも多い。自分の中で因果関係を納得できる:了解の部分が実際には行われている。


主観的要因が入ったモデルを作ると、インタビューして調査することが重要になってくる。インタビューをしないと主観的要因の入ったモデルを作ることができない。外側から見てわからないときは聞くしかない。

<研究の標準的手順>
  • テーマは実務を離れない方が良い。普段から接して関心を持っている領域であれば、いろんなデータに触れていることになる。本を読んでるだけで面白いリサーチクエスチョンが出てくる可能性はとても低い。
  • 記述型ケース研究・簡易な事例研究など事例から出発する方が良いと思う。実際の論文が定量的なデータ分析をする場合であったとしても。事例を見ることで検証しやすい仮説を導ける可能性がある。意外性のある仮説は簡易な事例研究から生まれる。
  • 個別の因果関係にデータをくっつけても研究にならない。
  • データを眺めていると仮説を思いつく。書くときと実際の研究は違う。実際の研究は行ったり来たりしている。書くときはあたかも最初に仮説を思いついたように書くけどね。実際の研究の順番は異なる。
  • 面白い仮説はデータをひたすら整理している時に思いつくことが多い。データを整理して睨む時に思いつくことがある。記述統計データのクロス集計など「見る」習慣をつけるべし。すぐに統計パッケージに入れるのではなく、データをグラフにして見るなど、手作業の中で何かを思いつくことが重要。
  • 気づいた時にはデータがない・足りないということはよくあること。最初は少数のデータで集計してみて、それから仮説を作って見る。
  • データをやって、いきなり回帰分析などするのはよくない。単純に平均をとったり標準偏差を見たり、ヒストグラムを作ったりして考えることが重要。経済学ではそっちの方を大事にしている。最後の最後に回帰分析をすることが大事。
  • あらゆることは掘っては掘り返す。やると楽しい。行ったり来たりしながら深まっていくプロセスを楽しめる人は研究ができる人。分析していくうちに新しいことを発見する喜び。


<事例研究>
  • シングルケース:意外性がないと受け入れられない。
  • マルチケース:分類が必要な場合に行われるべき。分類してないのに複数やるのは、ほんの少し情報を増やしているだけ。2社事例を出して一般化するのはやりすぎ。分類ごとにケースが必要。分類している=性質が違うと想定している。分類も手探り。
  • 理論の妥当性の確認のためにケースを行う場合もあるが、「確かにありました」という例証である。原理的に検証になっていない。書き方はあるけれど。
  • 公開資料だけでケース研究を行うことは難しい。肝心の情婦が入手できていないことがほとんど。事実でない可能性(解釈されている可能性)がある
  • 雑誌の記事は解釈している。リーダーシップが足りなかったと平気で書いてある。
  • 外向き(メディア取材)には綺麗なことを言うのが本質。困ったことは消えているか、美化されている。後解釈で喋っているだけかもしれない。当時のメカニズムとは別のことかもしれない。
  • 現場に出てケースインタビューをせよ。自社の例はやりやすい。守秘義務に問題があるけど。
  • 事例に共通している要因を論ずる場合は、異なる要因が多い複数事例を選ぶべき。共通要因が1個しかなければ、その働きを示せる場合がある。異なる要因が多いものを探した方が良い。逆に違いを論じたい場合は、同じ要因が多い複数事例を選択する。


<論文の構成>
  • まずは研究目的を示す。目的を書いてない論文は最悪。目的に対応した結論があるか?
  • 人の論文を読む時には目的と結論を書いてあるか。目的はそれなりに書いているが、結論が対応してない。
  • いきなり論文を書くことをお勧めしない。書きながら考えるのは良くない。考えてから書いた方が良いという考え。目的と結論があり、説明するエビデンスが揃ってから書き始めよう。
  • これには反論はある。書くと考えられると言う因果関係もあるので、とりあえず文書化して出力しろと言う考え方もある。
  • (根来先生は)十分吟味して素材が準備できてから着手すべきと考えている。しっかり揃っていれば修論なんて1週間で書ける。睡眠時間は圧倒的に減らさなくてはいけないし、風邪を引くとアウトだけど。2週間あれば途中で風邪引いても徹夜しておいあげれば間に合うと思う。
  • できるだけモデルはシンプルな方が良い。シンプルに説明できる方が検証・反証しやすい。ごまかしが入りにくい。2つの説明があるなら、よりシンプルな方を選ぶべきだ。シンプルな方が真理に近づいている。
  • 結局、社会科学は人に伝えないと意味がないのだから、実務への応用性を考えればシンプルな方が良い。



<レッドクイーン:赤の女王仮説>
  • 同じところにいるためには、走り続けなくてはなりません。止まっていると遅れる。生物の生存競争では強め合う。狼とウサギからなる生態系があった時、狼はウサギを捕まえられるように早く走るように進化する。ウサギは耳を強化して遠くの音にも反応できるように進化する。
  • バーネットの1996年論文は競争の中に身を置くことこそが、企業が成功する可能性を高めるという主張。面白くない。地方銀行は競争圧力があると一生懸命になって生き残る。地域に1~2行しか存在しないと潰れていく。競争が激しい方が生き残っている。競争環境が激しいと生き残りやすい
  • 2008年論文では激しい競争に勝つために知の深化だけを集中的に取り組んだ結果、機能スペック競争に陥ってコンピテンシー・トラップにハマる




<ネゴロク>
  • 遠慮せず哲学フレーバーを楽しむ授業にしてしまいましょう。
  • 京都大学で教えてもらった記憶がない。だいたい大学行ってないし。東京大学でより良い教育をしているとも思えない。
  • 上司の認識を変えることほど大変なことはない。「それは間違っている」と直接言って、直属の東大卒の上司とうまくいかなかった。それ以降東大卒の奴らは・・・これは過度な特殊の一般化です。
  • 例によって資料はちょっとしか進んでないのに時間だけは過ぎていく・・・
  • 中小企業が大手の○○○にシステムを発注したら、○○○の技術者の中でもしょーもない人が担当にされてしまう。○○○にいるエース級人材はメガバンクの担当になってるから。
  • 自分も色んなところでWBSのことを言うときは躊躇する。もしも悪口に聞こえたなら、それは聞く方の認識が悪い。




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