2017年8月7日月曜日

20170807

クラフツマンシップの伝承で切り拓く未来
高級自転車「ケルビム」今野真一社長講演会




<今野製作所>
  • オーダーメイド高級自転車メーカー
  • 1965年創業 社員10名 今野真一社長は2代目
  • 先代(現社長の父)が創業した頃、溶接機を買ってきて2台の自転車を合体させて2人乗り自転車を作った。先代は「溶接機が羽根を与えてくれた」とものづくりの面白さを感じた。自分で作った自転車のフレームをスタジオに持ち込んで写真撮影を行なっていた。この当時としてスタジオ撮影は珍しかったが、気迫を感じる良い写真になった。


<ケルビムの自転車>

  • 競輪・ツーリング・ホビーレーサー・トライアスロンなどの用途
  • 靴や洋服と同じで5mmの差が大きい。いかにカッコよくても自分のサイズと5mmズレた靴は買わないはず。
  • スポーツとして楽しむ人は数mm単位でオーダーする。
  • サドルの高さは脚をまっすぐ伸ばした状態でペダルに足が乗る程度がこぎやすい位置。サドルに座った状態では地面に足がつかない。
  • サイズが合ってない自転車に乗っていると、乗ることがつまらなくなってしまう。街を走っている自転車を見るとサイズが合ってない人がとても多い。
  • 身長・体重・股下・肩幅などの寸法を測り、乗り方や筋力などを鑑みて最適なサイズを決めるようにしている。


<競輪選手>
  • 世界一稼げるプロスポーツと言われ、野球やサッカーなどと違って選手が満遍なく稼げると言われる。
  • トップの神山選手は年間賞金が25億円まで行った!
  • 勝てないと意味が無いので、自転車などの機材は全て選手が自前で買う。メーカーから供給されたものをそのまま使うなんてことは無い。本当に自分にマッチして、勝負に勝てるものだけを買う世界。とてもクリーンと言える。
  • 今は100人の選手がケルビムの自転車を使用している。



<ピンチの時代:1990年代>
  • 自転車のオーダーが来たら、そのまま図面を引いて翌日には納品できるくらい暇だった。
  • 中国・台湾製の安い自転車が大量に輸入されるようになり、大手の下請けを引き受けるようになった。また、アメリカやヨーロッパのブランドを扱うようになり、代理店として販売もしていた。他の自転車屋の主人から「自転車は野菜のつもりで売れ。仕入れて夕方になった半額、翌日になったら処分」と教わり、このような商売はしたく無いと思った。
  • 自転車が好きで、どのような自転車が売れるかは分かるようになっていた。しかし、若いから色々見て回れるが、自分が50代~60代になった時にどうするんだ?と言う気持ちを持った。
  • 違う方向で自分のブランドを出したいと思った。たくさんの自転車を作って売ることはできないので、フェラーリのような高級自転車を作ることを決心した。


<高級自転車販売への道>
  1. 職人仕事の伝承の徹底:職人仕事は完全に分業できるように、人に教えられるようにデータを取って数値化した。以前は2年待ちだった納期が今は8ヶ月まで短縮された。
  2. 展示会への出展:最初は町田市の商工会の展示会からスタートした。今はアメリカの展示会にも出しており、海外3割・国内7
  3. 価格改定:始めた頃のフレーム価格は6万円程度だったが、今は30万円ほど。イタリア製のフレームが30万円するのに、自分たちのフレームが20万円だと製品の質が負けていることになる。コスト積み上げの価格ではなく、モノの良さを受け入れてもらって買ってもらえる価格にすることが大切。しかし、モノの良さは作り手にしか分からない点が大きい。本当に自分が良いものだと思えないと値段にビビってしまう。自信が持てるように作り込む。
  4. 自社製品のみの扱い:他メーカーの自転車を仕入れて販売することは辞めた。
  5. ブランディング:最高の自転車を作って、最高の店で売るために青山にショップを出した。ブランド=僕というイメージがある。歌舞伎役者みたいに何代目と名乗るのが良いのかもしれない。相手に自分の名前を名乗っても良いと思えるくらい、精魂込めて良いものを作ってくれる相手に継いでもらうべきかもしれない。

これらを一気通貫で出来ている。筋が通っているのはこの規模の会社だから。

<オーダーメイド商品>
  • 出来上がったら色味が思ったのと違うから金を払わないとクレームを言って来る客もいた。
  • ちゃんと説明すれば分かってくれる人も多い。普段は社員が対応している。
  • 僕(=社長)が出て行くと「あなたのような人がいるとオーダーメイド製品のものづくりが廃れてしまう。そういう人は店頭に並んでいる出来合いのものを買ってください」と言ってしまう。社長が出て行くとこだわりがある分、ロクでも無いことを言ってしまう。社員に任せておいた方が良い(笑)




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