『現場論』(遠藤功:東洋経済新報社)
2014年に出版された現場論の集大成とも言える一冊。
<現場力>
3つの能力から形成される
- 保つ能力:標準に従って確実に業務を遂行する能力。そもそもこれが出来ていない現場では仕事にならない。
- よりよくする能力:小さな差にこだわり、継続してよりよくし続ける能力。単発で改善に取り組むことではなく、常に高い目標に更新してギャップを埋める努力をし続ける。
- 新しいものを生み出す能力:現場が裁量権を持ち、現場での気づきに基づいて新事業を起こす。
標準に従ってしっかりと業務を片付けるだけの現場は平凡な現場。時々思い出したように改善活動を行い、時間が経つと業務遂行だけやっているのも平凡な現場のまま。
よりよくする活動に止まらず、よりよくする能力が組織に備わるまで高めて行くことが非凡な現場に繋がっていく。
<非凡な現場への道①:合理的な必然性>
- 戦略的必然性:何のためにその活動を行うのか。各社の企業・事業戦略を現場が理解して腹落ちしている必要がある。
- 信条的必然性:何にこだわって活動を行うのか、心理的・情緒的なだけでなく合理的な説明が加わっている。トヨタウェイやデンソースピリットなど
この2つの必然性が活動と結びついて、成功体験を蓄積し、それが組織能力を向上させる。新しい組織能力が新たな戦略につながり、企業文化を形成する。
<非凡な現場への道②:合理的な仕組み>
- 標準:標準を作成し、標準を徹底させること
- 気づき:流れるように進むはずの仕事が滞る、その違和感を見出すこと
- 知恵:違和感がなぜ生まれるのか?どうすればなくせるかを考えること
- 改善:知恵を実践に移して改善を図ること
この4つのステップを何度も循環させることで改善を図る。
この循環を継続して行うためには4つの要素が必要。
- 阻害要因の除去:よりよくすることが、業務遂行に付加する余計なものという認識では平凡なまま。ちょっとした阻害要因で現場は挫折する。阻害要因を地道に取り除いて行くこと
- 報酬:活動にスポットライトを当て、感謝や激励の言葉を掛けて努力に報いること
- 競争:現場の間で健全な競争をすること
- 学習:社内・社外からヒントを得て取り組みに磨きを掛けること
デンソー・ヤマト運輸・住宅金融支援機構・サンドピック・良品計画・天竜精機の6つのケースを取り上げ、さらに15のミニ事例を出しながら解説している。
経営陣が「利益率を高めるために、コストカットの改善活動をやるぞ!」と盛り上がった時には取り組む。しかし、時間が立って「新製品が出ていない!これからはイノベーションだ!」と経営陣が言い出すフェイズになると、改善活動は下火になってしまうという現場も多いのではなかろうか。
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