『ジョブ理論』(クレイトン・M・クリステンセン:ハーパーコリンズジャパン)
イノベーターズジレンマで有名なクリステンセンの「Jobs to be Done(片付けるべき仕事)」に関する本。
今年のHBRでも論文が紹介されている。
商品やサービスを「片付けるべき仕事のために雇用する」というフレームで考えるのが特徴。
これは「顧客にインタビューして聞き出したニーズに応える」と、即解決できる問題ではない。もっと深いところに潜んでいる因果関係を明らかにするような質問を重ねていく必要がある。
冒頭のミルクシェイクの例が分かりやすい。
Wikipedia「ミルクセーキ」より |
どんなミルクシェイクが欲しいですか?とインタビューすれば、「果物が入ってる」「ローカロリー版」「アイスの種類が選べる」などの”ニーズ”は得られるかもしれない。
しかし、そもそも何のためにミルクシェイクを雇用しているか、顧客はミルクシェイクによってどんな問題を解決したかったのか、その点を解決しないのであれば打ち手は空振りに終わる。
実は2時間くらいの車通勤のビジネスパーソンが「朝の通勤中に腹持ちして暇にならない間食が欲しくて」ミルクシェイクを買い求めていたのだ。
果物を増やそうが、ローカロリー版を出そうが、アイスの種類が選べるようになろうが、それらは「片付けるべき仕事」には影響しない。新商品を手に取るかもしれないが、それは従来製品と置き換わるだけなので大きな売上増にも繋がらないだろう。
そもそも何の問題を解決したかったのか?
それは顧客の属性といった固定されたデータや、行動の断片だけを眺めていても見つからないだろう。きちんと行動を束ねて因果関係を考えていかないと掘り出せない。
データが山ほど取れて、相関関係が強い組み合わせ提案が自動的になされるデジタルマーケティングツールも登場している昨今、因果関係の糸をほどいて探っていく努力が必要なのだと感じる。
確かにある商品の購買層は40代が多いからといって、40代であることはその製品を買う理由にはならないよね。
サザンニューハンプシャー大学は、経営が苦しい大学が多い中で黒字経営を継続できている。大学は地元の高校を卒業した若者たちの奪い合い競争になっており、社会人向けのオンライン授業は全米中で競争が激しくなっている。ここでは学生が大学を雇用するジョブを「今の職の将来性を早く効率的に向上させる」と定義して、接客の仕方を見直した。通学する学生とはジョブが異なることから組織を分け、通信課程の社会人の不安を取り除くように見直し成功を納めた。
このジョブは顧客が言語化できないこともあるし、私たちもせっかく顧客が言ってくれたのに受け止めずにスルーしてしまうこともあるだろう。ジョブは顧客ニーズの最上位概念であり、その一部が表出化したのが個別のインタビュー結果である。すぐに「ジョブを探り当てた!」と安易に考えるのではなく、顧客の声を分析して帰納的に見いだすものと思える。
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