2017年11月30日木曜日

20171130入山先生:トップ起業家との対話【第1日目】安宅さん

木曜は入山先生のトップ起業家との対話

今日のゲストはヤフーの安宅さん!

<入山先生>
  • 今期からこの授業を始めた。そうすると秋学期のグローバル経営を受ける人が半減した(笑)2期連続で入山の授業はいいやってことだろうなー
  • 実務家・起業家の方が来て話す授業が少ないので、入山先生と一緒にセッションやったら?と言われたのがきっかけ。
  • アントレプレナーの有名な問題に「事業機会とは見つけるものか?作り出すものか?」というものがあって、哲学論争みたいになっている。事業機会を見つける(Discovery)派は、自分とビジネスの環境が分離していて、そこで生まれているものを発見すると考える。一方で事業機会を作り出す(Creation)派は起業家と事業機械は切り離せない。飛び込んで試行錯誤して、後になって振り返ってみたら「今思えば、あれが事業機会だったんだな」とわかるもの。
  • ビジネススクールや本では発見能力を高める力を強化している。しかし、とりあえず飛び込んでやってみる側ではあまりツールがない、と解釈している。
  • この部分は人だと思う。人との交流を大切にしている。右脳で感じる授業をしたい。考えるより感じて欲しい。感性とパッションを感じてもらいたい。
  • カレーはご飯にかけずにそのまま飲む派。
安宅さんのためにモニタを調整する親切な根来先生


<安宅さん講演>
  • ボードゲーム最後の最大の砦(碁)がアルファ碁の前に陥落した。マシンがIQ200の天才勝ったということ。おそらくもう勝てない。
  • リーバイスは100年前から同じ服を売ってぼろ儲けしてきたが、入力デバイスを入れて、服がスマホ化する時代が来る。
  • 店舗自体が知性を持つ時代になっていて、来店者が商品を勝手に持っていってもきちんとチャージ(清算)される。
  • 農業すら激変する。完全無農薬LED照明で野菜を作る。今まで想像もしていなかったようなところにもICTが入っている。
  • ハード系の資産とデータ系の資産が組み合わされたところが新しいビジネスの主戦場になる。しかし、ハード系は決めてから動くまでの時間軸が長いのでデータ系とのスピードの違いに対応する必要がある。
  • モレキュラーマシンで分子レベルのデザインをする時代になった。IBM70umのコンピュータを作っている。そういう時代になっている。
  • 人の遺伝子は触りにくい。クローンとかはうまく行かない。胚における遺伝子改変に成功した。人間すらデザイン可能な時代に突入した。
  • 1953年ワトソンの二重らせんを発見したことで、生命が4進法のデジタルであることを説明してしまった。デジタルと生命が融合する時代に生きている。
  • GDPの中心地が中国へと急激に移っている時代。間も無く世界語に中国語が加わると言われている。中国が覇権国家に戻ることは確定している。もう英語を学ばなくて良いのではという議論も始まっている。覇権国家は外国語を学ぶ必要はない。
  • 文字通り確変モードの面白い時代に突入している。
  • 1900年は馬車だったが、1913年には車になった。大半の人が思っているより変化が激しい。
  • これからはエクスポネーシャルで成長することを前提とする。グラフは片対数を使って、ログスケールで考えるべし。リニアなプランを立てていると滅びる可能性がある。
  • 世の中を変えている感が富に関わる。テスラはトヨタと比べても130分の1しか車を作ってないのに時価総額が大きい。規模がとみに繋がらない。モビリティの未来がテスラにある。富を生むメカニズムが質的に変容している。世の中を変えている感の方が重要。
  • 全ては新しい時代をベースに考えなくてはいけない。これを形にしたいという情熱があった今の大きな会社の3分の1は、20年後には消えているか全く違う形になるだろう。
  • 生産年齢人口は減り続ける。N数は伸びない。過去の歴史(飢饉・病気・戦争)で人間は危機のたびに1割くらい普通に死んで来た。それくらいどうってことはない。ゆるい変化でガタガタいってるんじゃない。
  • 今は途方も無いチャンス局面だ。
  • あまり多くの人が目指さない領域のいくつかでやばい人。夢を描き、複数の領域をつないで形にする人。どんな話題でもそれぞれのテーマで自分が頼れるすごい人を知ってる人が大事。



<日本の現状>
  • AIデータ戦争における「1データの活用」「2データ処理能力」「3エンジニア」この国は勝負になっていない。アメリカ・中国と比較しても桁が足りない。新しい技術を使おうとすると保護規制ばかり。
  • 日本のデータ処理コストはアメリカの5倍~10倍、中国の100倍。ビットコインのマイニングは全部中国がやっている。ビッグデータ技術のほとんどは海外からやってきた。論文数でもディープラーニングでは米中ばかり。
  • 日本のエンジニア数はアメリカの3分の1で中国・インドに負けている。アメリカではもう数は足りたと言っているのに。
  • 日本はエンジニアと言ってもSIerばかりで機械学習を実装できる人がいない。理工系の学生がいない。
  • 日本では理系に行くと黒歴史。合コンもできない。深い分析訓練を受けた大卒の人数も少ない。アメリカでは、サイエンティフィックアメリカという雑誌が普通にコンビニにあるのに、日本には全くない。日本の民度はこの程度。
  • 日本の大学ではデータサイエンスディグリーがようやく1個できた程度。アメリカでは500個もあるのに。コンピュータサイエンスがデフォルト化している。
  • 新卒層の課題としては「1問題の定義ができない」「2結論を出すことができない」マシンガンの敵に対して空手で立ち向かうようなもの。オタクではなくてギークが欲しい。
  • ミドル・マネジメントの現状:歴史的な極限的な変化きかわかっていない。ビッグウェーブなのに。ビジネス課題とサイエンス・エンジニアリングをつなぐアーキテクト的な人がいない。
  • このままでは邪魔なおじさん(ジャマオジ)ばかりの国になってしまう。推測で日本国内に800万人~1000万人はいる。これは結構なバーデン(重荷)。皆さんも邪魔おじになるな。邪魔おじに邪魔をさせるな。奴らは規制ばっかりやってくる。


<日本の希望は?>
  • 3段階の大局観がある。「1新エネルギーと技術」「2高度な応用」「3エコシステム構築」の3フェイズ。
  • 日本はいつの時代も第2の波から参加してきた。フェイズ1はやったことがない。2と3から入る。フェイズ1は既に終わりに近づいている。何もやらないうちに9回裏になってる。
  • フェイズ2では専門性をもつ利活用人材、フェイズ3ではインテリジェンスネット化・エコシステム構築
  • 攻殻機動隊やドラえもんなど妄想の実現は、もともと日本が得意とするところ。フェイズ2・3から入るべし。
  • シン・ゴジラの赤坂内閣官房長官代理はちょーかっこいいです、ゲイでもいいけど愛してます。
  • ホンダの入交さんはカーエンジニアの中でも本当の1番。ホンダでエンジンを20個作った化け物。どこよりも早く取り入れて革新のスピードで勝負する。ものでは負けても技術革新でゲームを変える。国内に閉じず、世界的なスケールで何かをアップデートすることで富が生まれる。これを実現してきた。若い才能が挑戦するところだ。新技術による世界レベルでの刷新が勝因。それは町工場のような会社で生まれた。
  • 仕事とは何か、物理の教科書に書いてある。「仕事=力×距離」変化を起こさないと意味がない。買い物を素早くたくさん動かす。スキルとは変化を生み出すための能力。
  • スキルは「共通スキル」「専門スキル エキスパティーズ」「リーダーシップ」の3種類がある。
  • 生み出す変化で4つのレベルがある「1 1人の仕事をきっちりやる」「2 チームを回す」「3 複数のプレオジェクトを回す」「4 組織全体のマネジメントに関わる」
  • 「成長するのは当たり前 問題はそのスピード」「1日いくつ気づくかが成長のすべて。気づかない人に成長はない。気づきが本当の宝であり才能であり、自分に嘘はつけない。どんなくだらないことでも気づいたことをメモるべし。」「悩まない。悩んでいる暇があれば考える」
  • 毎日1%成長する人は365日で40倍になる。毎日1%ダメになる人は365日で40分の1になる。その2人の差は1600倍になる。継続的に成長しろ。下がる数より進む数を増やすことが大切。
  • 自分の中で起こる化学反応(気づき)だけが心に残る。本を読むよりも、はるかにコミュスキルが上がるから、モテないと悩む暇があればナンパしろ。


<データ×AIによってすでに来ている未来>
  • リアルタイムに投資判断情報を提供する時代になっている。RSMetricsは軍事衛星を使ってショッピングモールの駐車車両の増減や工場からの入出荷状況を見ている。
  • ホロレンズを使って、空間を空間に重ね合わせる。
  • リップリーディングでは画像だけで96%読ませる。ランダムでも読み取れる画像だけからでも50%はいける。レアな遺伝病を顔写真だけから診断できる。
  • アマゾンは客が注文する前に出荷するという特許を取った。完全にアマゾンに読まれている。注文したら1分で出荷されちゃってキャンセルもできない。
  • VCは人と顔を見てなんとなく投資を決めるが、データ・ドリブンに成功するスタートアップを予測するということがダボス会議で発表された。
  • 人間レベルの翻訳を瞬時に行うし、数倍速の動画にキャプションをつけることもできる。
  • 種類の違う荷物のピッキングも学習できるようになり、暗黙知の取り込みは終わった。
  • 事故は起こる前に予測するものになる。テスラのドライブレコーダーでは事故が起こる前に的確に予測している。


<機械によってオワコン化するのか?>
  • 情報処理システムの3要素(入力・処理・出力)思考とはインプットをアウトプットとつなげること。情報処理のバリューチェーン。
  • 入力→感覚(物理量ではない)→対象理解・意味理解→メタ化→判断・実行→出力と繋がる。I/Oをつなげる力が知性。
  • カメラは単なる記録装置にすぎない。人間の知覚は驚異的な情報処理をやっている。
  • スーパーマーケットは10万アイテムを在庫が少なく回している。それを知覚した大野耐一はトヨタ生産方式を思いついた。自動車も部品数が同じなので在庫なく車を作ることができるはずと思いついた。
  • 価値を認めていないと知覚できない。知覚は経験から生まれる。経験で学んでいく。高度な概念の近くには膨大な訓練と経験が必要。知覚が人によって違うのは当然。
  • 感覚器と思考の関係。感覚器もそもそも脳の一部。感じ方は感覚器が決める。感覚器すら思考のツールと言える。
  • 感性は知性の対極か?ゴッドオブニューロサイエンスと言われるレイモン・イ・カハールは110年前にノーベル賞を取った人で、彼の論文はいまだに使われている。彼の神経の図は写真を撮っても映らない。驚くほど構造の洞察が強い。99%予言が正しかった。一方でヴィンセント・ヴァン・ゴッホも特徴的な絵を描く。科学者は構造的な視点での洞察を、芸術家は神的な特性の視点での洞察をまとめている。感性自体が知性である。知性の核心にあるのは知覚である。
  • 知覚の中のなんらかの情報処理を自動化したものがAI。「意思がない」「人間のように知覚できない」「ヒラメキがない」「事例が少ないと対応できない」「正しい問いを生み出せない」これらがAIのボトルネック。AIは本質的に意味を理解していない。情報を処理しているだけ。
  • マシンラーニングはアウトプットを決めてパラメータをはめ込んでいくアウトプット・ドリブン。経験からダイレクトにインプットされる。アウトプットを目的としない経験が意味を作る。課題解決の多くは丸ごと人間の仕事として残る。
  • ギャップフィル型(今がマイナス)とビジョン設定型(これから伸びる)何を目指すかを定めるところから。
  • 意思は生命の本質。単細胞生物にすら意思はある。知覚と意思の問題は既存のAIの進歩とは別の話。記憶や知的訓練は必要なくなるのか?
  • 体系的知識がないと起きていることを知覚できない。どのような問いに価値があるのか判断できない。最後に残る知的活動。知覚できないものは組み合わせできない。
  • これから起きる本当の競争は「AI VS 人間」ではない。「自分とその周りの経験だけから学ぶ人 VS手に入るデータからコンピューティングパワーを利用して学び、その力を活用する人」になっていく。非常に深刻化する。
  • 社会を生き抜くための基礎教養が変化している。奴隷と自由人を切り分けるもの 現代のリベラルアーツ。データリテラシーが加わる。
  • 「データサイエンス」「データエンジニアリング」「ビジネス応用」の3つが必要。2つくらいできる人が多い。境界・応用領域にこそ人材が必要。


どうやって知覚を鍛えるか?生の体験が必要であり、言葉や数字になっていない世界が大半であることを受け入れること。
  1. ホリスティックに受け止める
  2. 現象・対象を構造的に見る
  3. 知覚した内容を表現する。絵でもチャートでも言葉でも良い。
  4. 意図的に多面的に見る訓練をする。
  5. So What?を追求する それってどういう意味だっけ?


  • 人工生命の研究からのファインディングとして、同じ初期値・同じ条件でも同じ真価は二度と起きないというものがある。法則を知っていることと未来がわかることは別。未来は目指すものであり創るもの。
  • ×技術×デザイン=課題解決
  • 限界集落の多くは有史以前から人が住んでいたところ。人間が住むのに最も適した空間なはず。ブレードランナー的未来もあるかもしれない。ウルトラディストピアみたいな。
  • 本来、技術は100人あって初めて出来ることを、1人で出来るようにすること。技術を使い倒して人間はもっと生活を豊かにすべき。




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