『MAZDA DESIGN』(日経BPデザイン/廣川淳哉編著:日経BP社)
MAZDAの魂動デザインの写真集+解説本みたいな作り。
2016年8月にマツダの工場見学に行ってから興味を持ち、講演なども聞くようにしている。
- CX-8
- CX-5
- ロードスター
- ロードスターRF
- CX-3
- デミオ
- アクセラ
- アテンザ
のそれぞれの車種について、どんな思いでデザインしたかが解説されている。
本著で印象に残ったのは「デザインカスケード」という取り組み。
これはデザイナーやクレイモデラーが新車両のデザインの意図や思いを、生産現場などの社員に直接説明するというイベント。発売より1年も前に量産車両のデザインという最高機密を内部で広く公開するという思い切ったものだった。
生産現場は魂動デザインを量産ラインに落とし込むために、デザインの意図を腹落ちするまでデザイナーを質問攻めにする。
中でもプレス金型製作部門が最初に試作したところ「躍動感や生命感をだすボリュームが、全部削がれている」とダメ出しをくらったそうな。その後、クレイモデラーの動きを見学して、光の反射の方向を反映させるために金型自体も光の方向を意識して磨く「魂動磨き」を開発!
さらに、市販の砥石では削りすぎてしまうので、5ミクロンの精度で磨く砥石まで開発した徹底ぶり。
「モデラーが200時間かけた微妙な表現を、自分たちが一擦りで削ってしまうと考えると、ものづくりに携わるプライドにかけてなんとかしないといけないと思った」という言葉にもマツダが全社をあげて魂動デザインの実現に集中した様子が伺える。
あらゆる顧客接点に魂動デザインを採用することで、店舗設計の担当とも議論を重ねたというエピソードも面白いし、前田常務のマツダデザイン論は読み応えがある。
マツダの人馬一体のコンセプトは、クルマを美しい道具であり、家族のような存在と位置付けているし、それに共感するファンを強く惹きつけている。
一方で、自動運転メインで車を移動の手段以上には考えない層も増えていくのだろう。自動運転専用の都市型電気自動車などが普及した時代になると、車両が自動運転の性能・安全性・保守性を持っていれば、デザインが問われることもないだろう。こちらのユーザーはデザインにお金を払わない層と言えるかもしれない。
将来、人間が運転する車と自動運転車はデザインのかっこよさで一目瞭然になる時代が来るかもしれないなぁ。
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