木曜は入山先生のトップ起業家との対話。右脳で感じる授業!
今日のゲストはソラコムの玉川憲さん!
ソラコムのケースは早稲田大学IT戦略研究所からダウンロード可能!
【自己紹介】
- 4年前からトライアスロンを始めて、体を鍛えている。1年に1回レースに出ていて、ソラコム社内でもトライアスロンが流行っている。
- 普段からカジュアルな格好。スーツはどうしても着なくてはいけない時だけ着るようにしていて、今年は2回だけ。フォーブズの表彰の時には絶対スーツで来いと言われたから着てきたけど、メルカリの山田さんはめっちゃカジュアルで来てた。MITの基調講演の時もスーツで来たけど、座ったタイミングでスーツのお尻が破れた(笑)
- 大阪と奈良の間の街で生まれ育った。お父さんは東大阪の配管業。「太陽の塔は俺が作った」と良く言っている。配管しかやってないけど。パソコンオタクの兄に勧められて進学校に。
- バイクに乗りたくて焼肉屋でバイトをした。バイクに乗った時の世界が広がった感覚。地図を見ると50kmなら1時間で行けるという広がり感が原体験。
- 大学で Mosaicを見て衝撃を受けた。エンジニアリング・ソフトウェアに興味を持って大学院ではVR研究をやっていた。
- 2000年ではIBM Watch Pad(スマートウォッチの原型)を開発したが、ある日突然「プロジェクト解散です」となり、先輩も翌日朝にはいなくなった。これはやばいと思った。
- コンピュータの世界はアメリカで始まっているから、アメリカに留学しようと思った。社費留学を目指して英語の勉強に没頭したが、10回くらい落ちた。新横浜に試験を受けに通い続けたので辛い駅になった。
- 2006年にカーネギーメロンに受かって渡米。入山さんご家族と交流。この当時、(入山先生のことを)ただの飲んでるおにーちゃんだと思ってた。
機器のセットアップをサポートする親切な根来先生の図 |
【AWSの登場】
- Amazonはテクノロジーで世界をより良い方向へ変えていく会社。人間が「これができたら良いと思えること」を少しでも早く実現する会社。それがAmazon。
- 2006年にAWS(クラウドコンピューティング)をリリースした。利益の半分はこちらで稼いでいる。
- ちょうど留学している時にAWSが始まった。ギーク層が「これは凄い」と騒いでいた。AWSが出るまでは、企業はデータセンター(サーバ)を社内でたちあげなくてはならなかった。しかし、AWSが出たら、時間単価で企業が使えるようになった。パラダイムシフトを起こした。
- 「必要なだけ安価に購入する」というパラダイムシフトは1900年の頭にも起きた。昔、電気が欲しい企業は自社に発電機を置いて工場を動かしていた。自分たちで電気を作らなくてはならなかった。しかし、発電所を作って送電線を引いたことで、所有の状態から利用の状態に変わった。AWSはコンピューティングの世界でパラダイムシフトをもたらした。顧客はインターネット越しにアマゾンのサーバに入って使える。自社にサーバを置かなくて良い。電気屋水のようにコンピュータが使える。
- 自分はIBMから社費留学で来ていたが、IBMはコンピュータを売るために生まれた会社。AWSを見た時に、これはやばいと思った。IBMやばいという感覚があった。まさにイノベーターズジレンマで、IBMから見たらアマゾンのコンピュータはおもちゃに見えていた。あまりに安すぎてパチモンに見えていた。
【AWSエヴァンジェリストに】
- MBA終わってIBMに戻って新規事業の立ち上げをやっていた頃にヘッドハンターから電話がかかって着た。「AWSを日本で立ち上げるから来ないか」と言う内容の電話だった。
- アメリカは日本から10年~20年先に行っている。日本は受託開発文化でシステムインテグレータに丸投げ。最新技術が入ってこない。
- AWSを日本で使ってもらうのは自分の使命と思った。AWSは日本にとっては言わば黒船だったので、受け入れてAWSを使って価値を作れば良いと思うのもアリだし、日本で作らなくてはならないと思うのもアリ。
- IBMにいた時に色々プロジェクトをやらせてもらったが、1つも成功しなかった。利益を稼いだことがなかった。仕事の辛さがあった。
- 成長するビジネスに携わることができて、とても楽しいと思った。成長ビジネスに身を置くことは大切。
- AWS以前では、良いアイディアがあってもサーバを立てるためにお金を集める必要があった。2000年くらいからインターネットサービスを提供する企業が出て来たが、アイディアがあってもサーバのために6000万はかかるから、事業計画作って投資家を説得するのに1年掛かる。それがAWSの登場によってスモールスタートが出来るようになり、顧客がつけば大きくすればよい。アメリカではAWSが投資のやり方を変えた。
- AWSではたくさんのイノベーティブなWebサービスが生まれている。Dropbox、Netflix、Instagram、Uber、Airbnbなど。夜のダウントラフィックの60%はNetflix。 AWSがそれを支えている。
- IBMは既得権益を持っている人に高額コンピュータを売るビジネス。Amazonは誰でも構わずオープンでフェアな価格で販売するビジネス。コンピュータのデモクラシー。既得権益を持っていない人にもチャンスを与えるもので、AWSを絶対広めてやろうと思った。
- 日本からも凄いサービスを!ビジネスを!エヴァンジェリストとして日本中を渡り歩く。2011年には日本国内で160回以上講演して回った。予算も人もないからボトムアップマーケティングしかない。当時はツイッターが流行り始めたくらい。アンテナ高い人がやっていた。そこで「北海道で勉強会をします。私はAWSの中の人です。場所を貸してください」と呟くと、いろんな人が貸してくれた。当時AWSを知りたいと思ってくれる人はアンテナ高い人で、イノベーター・アーリーアダプターの層だった。
- 全国を回る売れないシンガー生活みたいなことをやっていたが、その時のコミュニティが非常に強力だった。仙台で勉強会を開いた時、場所を貸してくださいと呟いたら「地主ですが貸します」という心強い返事が来た(笑)。苗字が「地主」という人だった。
- 札幌から初めて北から南に移動して行ったが、宮崎での勉強会では3人くらいしかこなかった。結構凹んで、自分たちのやり方間違ってたかなと思うこともあった。鹿児島でフランシスコザビエル像が立ってたのをみて、宣教師として俺は間違ってないと励まされた(笑)
- AWSの勉強会はオープンで誰でも使えるプラットフォーム。同好会のようなコミュニティができている。
- 日本で十分に広がって来たが、日本から世界に打って出ていくようなワクワクするイノベーティブなサービスはまだまだ。
- スモールスタートは重要だが、ワールドイズフラットが起こった。日本でシステムを作って海外展開しようとすると、現地でコンピュータを買わなくてはならなかった。それが、AWSによって標準規格のデータセンターができたことで、日本で作ったら、海外にコピーして持っていくだけ。技術的には翌日にはサービスを持って来ることができる。
- 日本のエヴァンジェリストとしては忸怩たる思い。アメリカでヘッドクォーターのところに行くと「自分のリージョンからスポティファイが出た」など自慢げに言う人もいる。5年契約で600億円とは、トヨタのIT予算と変わらない。それが上場したてのシリコンバレーの会社で使っているような綺羅星のようなスター会社が出てくる。それをAWSが支えている。
【SORACOM起業】
- 2014年春シアトルに出張した時に酒を飲んで、話が盛り上がってリリースノートを描いてみた。実際にものを作る前にリリース書くのはAmazonのカルチャー。
- クラウドはものすごく進化した。昔のようなおもちゃではない。金融系のミッションクリティカルでもクラウドで動かせる。通信系もクラウドの方が良い。しかし、世間ではそうは思ってない。クラウドの上で通信をやるとすごく安い。それでリリースノートを描いてみた。
- 朝起きて読み直してみたら「これ行けるかも」と思って、チャレンジに対する高揚感を感じた。「新しいことがやれる」「ゼロからイチの楽しみ」「AWSを立ち上げた時の喜び」など。
- その一方でたくさんのものから離れる恐れもあった。「仲間」「ドリームポジション」「安定した給与」を手放すことになると思った。これを辞めるのか、俺と言う恐れがあった。
- AWSを使ってイノベーションを起こす会社を自分でやろうと思った。「世界に関する命題のうち、多くの人が真でないとしているが、君が真だと考えているものは何か?」と本を読んで考えた。
- スタートアップ VS スモールビジネスで、最初はスモールでコツコツやろうとしていた。弁護士に相談したら「資金調達できるから、スタートアップでいけ」とシリコンバレー的なアプローチを勧められた。
- IoTではモノとインターネットプロトコルで繋がる。自動車・自販機など垣根がなくなる。あらゆるデータが合わせ込めるようになり、ディープラーニングで神秘の世界が解き明かせるかもしれない。
- これはインターネットが出て来た時の感覚に近い。10年後に「これはキラーだったね」と思える日が来ると感じた。
- IoTで「どこにデータが貯るのか?」と言えばクラウドしかない。しかし、多くの日本企業はそう思ってない。大事なデータは自社データセンターに保管するものだと思ってしまっている。それは大きな間違い。これらのデータはメガクラウドに置かざるを得ない。データは他のデータと一緒になって価値がある。他のデータと近いところに置くべき。
- IoTはモノのデータをいかにクラウドに繋ぐかだが、モノのデータをクラウドにあげる適切なネットワークがなかった。モバイル通信は人向けに設計されている。
- IoT通信にデモクラシー(民主主義)を導入し、分け隔てなくオープンでフェアな価格でIoTのソリューションを作りたいと思った。トマト工場などで、センサーを使って取得したデータをクラウドにあげる時に通信をどうするか?という問題がある。モバイル通信で500回線を3年コミットしたらいくら?と提案してくるような時代だった。
- 「世界中のヒトとモノをつなげ共鳴する社会へ」をビジョンに掲げて起業した。
- 「玉川、AWS辞めるってよ!」という記事はいまだにいいねの数が最高記録。それを追い抜けていない(笑)
【SORACOMでの事業】
- 二子玉川の雑居ビルを借りて始めた。2015年6月に7億円を調達した。
- モノ向け通信に絞ったビジネスを展開した。大量にSIMを入れるので管理しなくてはならないし、スピード変えたりログをとったりデータを送ったりする作業をWebから集中管理するシステムを作って提供し始めた。
- 十勝バス:バスの位置情報をソラコムであげて、顧客向けに案内を出す仕組みを作った。バスが遅れている情報もアプリで出す。元々やりたかったけど、キャリア業者の費用ではできなかった。月々300円ならできる。
- 楽天エディ:楽天球場のビールの売り子の端末で、試合のある時だけ使う。使った分だけ支払う形式がうまく機能した。
- ダイドードリンコの自販機、コマツの建機、ローソンの物流トラック、京成電鉄 スカイライナーの踏切監視、エレベータ監視、ヤンマーなどの事例あり。
- ITベンチャーが者向け通信をどうやって提供しているのか?というと、NTTドコモと契約して基地局を借りた。クラウドに専用線を引いて、ソフトウエアは自分たちで作った。AWS上で実現した。
- スタートアップ企業にソラコムを使っていただいた。イノベーティブなサービスをやってもらうのが嬉しい。チカクのまごチャンネルとか。(登録したスマホで写真を撮ると、おじいちゃん・おばあちゃんの家のテレビで再生される)
- 全サービスをグローバル対応して行く。
- ソースネクストは翻訳端末を12月に提供する。機能がクラウド上にあるので翻訳もどんどん進化していく。2年間の通信料こみで29,800円はお買い得。
- 全てのモノの中にSIMが入ってくる。チップ型のSIMも開発している。アメリカのお客様(スマートウォッチメーカー)で買ってくれている。より早くイノベーションを起こせるように敷居を下げたい。
- IoTプロタイピングデバイスで、通信モジュール・マイコン・センサー込みのキットを15,800円で販売。ソラコムのウェブから買える。
【起業苦労話・工夫話】
- スタートアップをやります!といったときに必ず聞かれたたった一つの質問は「奥さんは大丈夫なんですか?」スタートアップ業界でまことしやかに言われることが「嫁ブロック」
- 「スタートアップやっていい?」と聞いたら「いいんじゃない」と返って来た。自分は良かったけど、良い人を採用していくときに「ちょっと奥さんに確認します」と言われるときもあった。一番身近な人が協力してくれないと困る。
- 人の採用はスタートアップの苦しみ。前向きに表現するなら、スタートアップとは、君が世界を変えら得ると君自身が説得できた人の集まりだ。
- スタートアップは急成長するAチームでないといけない。サッカーが上手いのは当たり前で、チームプレイヤーか?チームスタイルに合うか?状況にあわせてポジションを変えていくことも大切。
- チーム集めでは、自分が人生で出会って来た素晴らしい人を思い浮かべた。仕事の取引関係としてだけでなく、一緒に働くことを心から楽しんでくれる人たちに声をかけた。「ビジョンと情熱はある!」「給与・待遇・リスクは正直に伝える」「万が一、倒産しても一人で食っていける人」を重要視したが、結局のところ、ビジョンに共感してくれる人が入社し、お金やポジションを求める人は入らなかった。
- グローバルチームの構築ではビジョン・カルチャーに共鳴するメンバーを現地採用した。欧米ですでに10名採用している。日本人でなくても日本初のソラコムのテクノロジー、ビジョンが良ければ評価してくれる。
- ビジョンとは「会社が実現する素敵な未来」、ミッションとは「ビジョンを達成するための手段、事業ドメイン」
- 組織形態は完全なフラット組織とし、全員がリーダーでマネージャーがいない。新入社員がいないので面倒をみる必要がない。「リーダーシッププリンシパル」は3ヶ月に1回見直している。「全員がリーダー」「顧客中心主義」「完璧よりもスピード」「未来に対して明るく肯定的」「オープン・フェア・誠実」「ユーモアを忘れない」など。6割の情報で意思決定してやって見る。失敗しても指をさすな、というのも。
- 働き方はコミュニケーション重視だが、在宅・リモートOKでフルフレックス。11時のビデオ会議には皆集まることにしている。スラックを使っていて、ボットが質問してくるので「やったこと」「やること」「困っていること」を書き込むようにしている。
- あだ名で呼び合うことにしている。アメリカンなファーストネームで呼ぶ。役職・年齢・入社時期で意見の壁を作らない。インターンの学生も自分のことをKENと呼ぶ。
- リモートで働くからこそ個人間の信頼関係はとても大事。隔週金曜の17時以降はハッピーアワーでビールを出す。隔週月曜はランチ会。3ヶ月に1回は丸1日缶詰で振り返り会議をやる。リーダーシップについても議論する。「このリーダーシップを体現した人は誰か?」と議論して、を選んで褒め合う。
- 資金集め:VCから資金調達したが、お金が口座に入るまでは落ち着かない。すでに社員は6−7人が入って来て、責任感を感じていた。毎日心臓が痛かった。結局は下記の3つが大事「創業チーム:フルコミットするチームがあるか?」「テクノロジーがあるか」「狙っている市場が大きいか」ソラコムでの資金調達でラッキーだったのは、前職から投資家と付き合いがあり土地勘があった点と、共同創業者(CTO・COO)に、投資経験者がいた点。
- 投資をして急成長することを選んだ。成長は止められない。成し遂げたいのはIPOでもM&Aそのものでもない。グローバル化するための1番の近道を選びたい。通信キャリアと組まないと、次世代の通信技術をモノにできない。ディープポケットが必要。通信キャリアと組むつもりだった。KDDIが最も相性が良かった。
【ラップアップ】
- 「世界は、日本は、より良い場所になって来ていると思いますか?」絶対的貧困数は減少して来ている。大きな視点では世界は良くなっていると思う。テクノロジーが寄与している。良い技術革新を進めれば、世の中はよりよくなっていく。
- 2017年はシンボリックな年。世界企業の時価総額トップ5がITの会社になった。
- テクノロジーは奇跡を生む。スタートアップは、世の中を良くしよう、貢献しようというパッションをもとにしている。世の中のために、人のために貢献したい、とパッションを持ち、努力をした人が世の中を変える。
- パッションを持ったエンジニアに翼を与えるようなビジネスをやりたい。
- 別に起業家になりたかったわけじゃない、気がついたら起業家になっていた。
- 「何が幸せなのか?」チームで一生懸命努力をして、自分たちが信じる良いものを世の中に送り出す。それを良いねと言ってくれる人がいる。
- 起業家がイグジットするという言葉はあるが、イグジットではなくてエントランス。これからも素晴らしいチームでイノベーションを生み出したい。
- We are our choices.Gift 与えられたもの/Choice 選択するもの。自分たちが重要視するのはギフトですか、チョイスですか。全てのことは意思決定であり、それが自分の人生を形作る。ジェフ・ベゾスの言葉。自分で責任を取って決めていくこと。与えられたものではなく、周りの環境でもなく、あなたが何を選ぶか。あなたが下す決断があなたを作っていきます。あなただけの道を切り開いてください。
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