木曜は入山先生のトップ起業家との対話。
今日のゲストはマザーハウスの山口絵里子さん!
インドで立ち上げをやって帰国したばかり!カルカッタ→ムンバイ→早稲田
【マザーハウスの紹介】
- 生産と販売が両輪となったビジネスモデルになっている。
- 生産は途上国で行なっている。バングラデッシュの自社工場でバッグを作っている。自分たちで雇用して従業員を育てているのはマザーハウスだけ。インドネシアとスリランカではジュエリーを作っていて、素材である石の採掘場から入っている。ネパールでストールを作ってる。カシミアやシルクなど温かい素材が多い。現地の素材を活かすプロダクトを作る。
- 顧客のニーズを聞いてから作るマーケットインの発想は皆無。常にプロダクトアウトで考えている。起業のストーリーがプロダクトアウト
- 「途上国から世界に通用するブランドを作る。」これが24歳の時に掲げた理念。ここに対してブレていないかをずっと考えてきた。
- この会社はアルバイト代の250万円から始まった。自分たちの口座からスタッフさんに給料を払ったときもある。
【バングラデッシュへ】
- 国際協力・国際機関に憧れる大学時代で、米州開発銀行でインターンシップを経験した。そこでは援助の金額を入力するアルバイトだったが、自分が入力した支援のお金が本当に現地に届いているのかを自分の目で確かめたいと思った。アジア最貧国がバングラデッシュと検索して知って、行ってみた。
- バングラデッシュでは洪水で1m浸水しても、誰も学校を休まない。「どれだけ親戚中のお金を集めて授業受けていると思ってるの?それだからあなたは日本人なんだよ」と言われたこともある。その後、バグラデッシュの大学院に行くことを決めたら、家族皆が反対していた。
- 遠回りと思っても現場にしか答えはなかった。
【ジュートとの出会い】
- 15歳の女の子たちがジュート(麻)を使ってコーヒー豆を入れる袋を作っていた。バングラデッシュではネクストチャイナを目指していた。中国の人件費が高騰してきたので、次のものづくり拠点を目指していた。機械よりも安く人がどれだけ働けるかが重要で、毎月1回はストライキが起きる。労働者と工場との戦いだった。
- 当時、日記に書いて悩んでいた。どうなるんだ、バングラデッシュは?と。
- 原材料ではなく、付加価値のある商品を「かわいそう」だから、だからではなく、「かわいい、かっこいい」を途上国から世界に通用するブランドを作る。これをブランドの哲学として据えた。
【販売】
- ものを作って終わりではなく、届けるところまでやる。
- 最初の頃はバッグを置いてもらえるところに並べてもらったが、卸先をコントロールできなかった。店員さんがジュートとバングラデッシュの説明ができないことを知って、卸を断ることにした。
- 起業して1年後にお店を作った。店前通行量が20人くらいで、平均年齢65歳くらいの立地だった。そこでは来てくれたお客さんからバッグに対してたくさんの苦情を言われたが、ファックスの注文書以外のことを言われたのが嬉しかった。顧客の声を形にしろとバングラデッシュの生産現場に国際電話をした。
- 苦情を言って来たお客さんに、ポケットの位置を変えたものを見てもらったら、その場で買ってくれた。国境を、生産と販売を超えることができれば絶対直営店。卸をやったら簡単だったかもしれないが、哲学に通じなくてはいけない。
- どうやって国境を越えるか?プロダクトアウトだから、顧客にどんな情報を提供できるか?によってくる。海外もどんどん広げていきたい。
- ファクトリービジットと言って、店長になったら工場に行く。1週間で検品まで見て返ってくる。そうすると店長がストーリーテラーになれる。現場に行くから語れるようになる。ただし、生産国に駐在すると販売が見えなくなるので駐在は置いていない。
【生産】
- 素材から手間をかけて自分たちで仕上げないといけない。そもそもレディメイドがない国。川上を抑えると競争力が出てくる。ジュートはマザーハウスでは一番良い光る部分を使っていて、天候などに応じて毎年レシピが変わる。それくらい手間を掛けている。
- マザーハウスのバッグは紙のモデルから作る。皮に答えがある。デザインするときは、いつも手で皮をこねこねしている。絵は描かない。バッグのデザインを絵にするデザイナーを雇ったこともあったが、生産する現地に行かないとわからないことだらけ。クリエイター×途上国は生まれないと実感した。そこで、自分で型紙を起こそうと思った。
- 最後は工場に戻らなくてはならない。バングラデッシュではずっとバイヤーで、パスポート盗まれたり、業者に逃げられたりもした。自社工場を持ったときはなんで工場を持つの?と言われた。現地法人を作って、今は200名。バングラデッシュのバッグ工場では4番目に大きい。月産9500個生産している。
- 生産ライン方式では作らない。糊付けだけをする担当、折り曲げだけをする担当という人は作らない。テーブル・ユニット制にして、1人で責任を持って完成させる。最初は反対されたが、量と品質の両方でボーナスを設定している。パッションをいかに仕組み化するか。それはデザインとしても大事。
- 経営者が商品開発にコミットしている。バングラで商品開発といったら普通は売れているバッグをコピーすることを指す。それでもマザーハウスではバッグを1つ作るのに30回くらいサンプルを修正する。それを従業員が見ているから、生産担当も「品質を守らないとな」という気持ちになる。
- 付加価値にどこまでトライできるか?手縫いの縫製でどこまで品質を高められるか?昼休みにはエルメスのユーチューブを皆で見て「これなら俺でもできる」とか言ってる。
- スリランカのブリリアントカットの職人スキルはすごいものがあるが、このように卓越した技術は往往にして引き算した方が良い。技を出そうとするのではなく、引き算を幸せにやってもらう。職人の誇りを潰さずに、カットなんていらないよと丸くカットしてもらうゼロをイチにする作業としてとても大事。
【経営者として】
- 国を立ち上げるのは重要な意思決定だから、1秒でも迷ったら辞める。どうだ?って見せて一瞬で決めさせないとダメ。1時間も話すようなものじゃない。ただ、それ以外の商品の話などは1時間以上も喧々諤々の議論を行うことも多い。
- スタッフには哲学や思いを研修・行動を通じて身につけて欲しい。職人たちを研修に日本に連れて来たとき、最初は仲が悪かった。しかし、1週間たった結束力はすごかった。
- 自社製品の50%は機能重視で作っている。使用する人のニーズを満たすように設計されている。でも、ブランドにはサプライズが必要。そのサプライズの部分がプロダクトアウト。
- 引き出したいのはその国の職人が持つ美しさ。そのためにコミュニティの和を崩すようなことはしない。
- コミュニケーションに裏表を作らない。現場担当と工場長とで言う内容が変わると信頼が生まれない。透明感を大事にしてボスは誰にでもストレートに言うというスタンスを維持する。
【入山先生より補足】
グローバル化でプロトコルが共通化して来ている。3つの要素があって「英語」「プログラミング」そして「表情」。笑顔や怒った顔は万国共通。表情もグローバルなコミュニケーションではさらに重要になって来ている。
0 件のコメント:
コメントを投稿