木曜は入山先生のトップ起業家との対話。
今日のゲストはリブライトパートナーズの蛯原 健さん!
【入山先生の講師紹介】
この講師陣で唯一と言っていいくらい、ちゃんとしている人。今日は珍しく左脳側の話になるかも。来週以降は完全に右脳軍団。こういう人(蛯原さん)に来てもらわないと変人コンテストになっちゃう。
【蛯原さんの講演】
<自己紹介>
- シンガポールベースで東南アジアとインドに投資をするVCをやっている。4本ファンドを運営している。出資者は日本企業だが、日本では一切投資を行わない。日本でやってないのはうちくらい。
- 2010年に初めて8年。当時はインドネシア一点突破でやっていて、ジャカルタには銀行・商社・メーカーしかいなかった。行ってみたら意外と引っ張りだこだった。ベンチャーキャピタリストが当時はいなかった。
- 2014年にインドが盛り上がって来て、行ってみたらここでも引っ張りだこだった。2016年元旦にニケシュが載った。私が行って2年経つと盛り上がる。
- インドのテックに投資をするファンドを運営している。IoTやAIのウェーブがきた。ハードに強い日本と、ソフトに強いインドはベストカップルと言える。日印IoTファンドを立ち上げて絶賛募集中。
<テクノロジー企業の動向>
- 時価総額で見ると日本ではトヨタが1位だが、韓国はサムスン、台湾はTSMC。中国では上位に2社テック系企業が入っている。サムスンはアンドロイドとメモリを牛耳っているし、TSMCは半導体生産を抑えている。
- オイルマネーもテック系に向かいつつある。孫さんも100B$ファンドを立ち上げた。
- 一部の成功したテクノロジー系企業に富が集中した。大きく成長した企業が全てを牛耳るFew takes Allの形となった結果、バックラッシュも起きている。テック企業が国民・国家と対立する形になり、財閥解体を望む声が強まってしまった。EUはグローバルメガテックを解体する動きを取っている。そこで、グーグルの再教育プログラムや、FBのザッカーバーグは世界各地を回る旅に出ている様子を伝え、Y Combinatorはベーシックインカムのトライアルを始めた。このようなバックラッシュへの対応も迫られるようになった。
<集中と分散>
- テック企業は地理的にも分散が進んでいる。
- 英国はマクロ経済動向もテック企業もすごく良い。ARM発祥の地であり、フィンテックやAIの名産地。また、カナダはAIが強い。量子コンピュータのD-Waveもある。
- アップルが30兆円をアメリカに戻して2万人の雇用を生む。場所はテキサスのオースティン。
- 東海岸・西海岸地域は税金が高い。シリコンバレーはいっぱいになってしまってテキサスに移っている。シリコンバレー1強が分散し始めている。
<お金の流れ:過剰流動性>
- アメリカのスタートアップが調達したお金とナスダック指数の動きはぴったり重なる。多くの投資家は景気が良くなると投資するし、悪くなるとやめる。
- 今、テック企業がブームとなって栄えているのはなぜか?それは景気が良いからお金が流れ込んできているから。余っちゃってる。
<AI>
- AI×EverythingであらゆるところにAIが入るようになった。テックは生産性向上に寄与している。
- 長いスパンで見ていくと、コンピューティングが進んだことで生産性が極めて上がった。指数関数的に向上している。さらにとんでも無いのがAI
- AIとはなに?を突き詰めると、要するにチップ。nVIDIAが117B$で、GoogleのTPUが692B$。ただしGoogleはチップの外販しないでクラウドで使うだけ。深セン未上場企業であるファーウェイがNPUというニューロベースのチップを作った。
- 2017年から2030年の世界全体のGDP推移予想を見ると、AIによる生産性向上が貢献する部分が大きいが、その旨味の半分は中国が持っていくと言われている。
- Next big thing after AIと言われているのは量子コンピュータ。非連続な計算ができる。言語が変わる。今のコンピュータはガラッと変わると言われ、CESでも話題に上がっていた。日本は相当劣勢な分野。
<勝負はネットの外>
- インターネットについては米中7社+ソフトバンクで寡占状態となった。ここから先、インターネットのテック企業は日本から一生出ないだろう。ネットの外で勝負が重要。
- Easy part is over. Harder part has begun.これがデジタルトランスフォーメーション。リアルな産業をネットで効率化する・再定義する商売が主流になる。これがインターネットの外と呼んでいる業界。
- 事例として、ドックサップというスマホを使って患者と医者をマッチングさせる医療サービスがインドで始まっている。インドは医療費がなくて無医村も多い。実は医師のコストの大半は問診に食われている。そこで問診自体はチャットボットに任せて、患者とのやりとりの結果を参考にしながら医師が最終的に判断して診察するという仕組みを作った。これによって問診コストが劇的に下がる上に、医者にとっても収入源になる。日本では医師法があって対面でしか問診ができないので、このサービスの展開は不可能。
- 日本で、今更手書きの伝票を書いて送るのはどうかしている。アジアではウーバー でスマホでデータを入力してすぐに持って行く。
- 製造業のデジタルトランスフォーメーションがでかい。特に自動車。Connected・Autonomy・Sharing・EVの頭文字をとってCASEと言ったりもする。中国とインドが頑張っている。自動車産業を日本とドイツから奪うために。EVに関しては、BYDの方がテスラより売上も多いし利益も確保している。
<アジアシフト>
- プログラミングの世界でも労働力のコスト差がなくなり、地産地消が進んでいる。
- アメリカでBMWを最もたくさん作る工場では99%の業務をロボットがやっている。
- 自動車生産は台数ベースでは中国が最も多い。これは自動車が最も売れるの中国だからであり、生産コストは理由にならない。
- ロボットを活用するので、製造業はあまり雇用を作らない。製造業セクタの生産性は2倍に向上したが、雇用は3割減った。これはさらに加速する。
- ロボットは日本で数少ない、グローバルのリーディング産業
- 未上場のトップ10の半分が中国。上位5社のうち3社は北京でユニコーンの4割がアジア。
- 調達額はアメリカ3に対して中国2の割合となって、かなり近くなっている。統計の信頼性は高くないので、ほぼ同じと考えても良いくらい。
- R&Dは米中で並んで年間40兆円を投入している。日本はGDP比では頑張っているけれど、金額では遠く及ばない。R&D費は5年~10年後のテクノロジーのレベルを決めるので、今後も米中のテクノロジーが強い傾向のままだろう。
- スマホ人口の6割はアジア。毎年10億台ベースで出荷している。新興国ではあと20億人増えると言われており、まだまだ伸びる。
<リープフロッグとイノベーターズジレンマ>
- リープフロッグとは「かえる跳び」で、真ん中を飛ばすこと。
- 小売では①田舎だったところに②店舗ができて③ネット通販になる。金融では①キャシュがあって②銀行ができて③電子マネーができた。新興国では②のステップを飛ばして一気に①から③に飛んでしまう。アジアで電子マネーやe-コマースが急激に普及している。しかし、先進国ではなまじ真ん中の②が充実して雇用も生んでいるので簡単には壊せない。最初から持っていない新興国であれば、途中をすっ飛ばして進化できる。
- 日本はイオンなどの小売が上位だが、中国はe-コマースがぶっちぎりで多い。中国は電子マネーが普及したが、アメリカはもともとクレジットカード文化が根強い。
- インドではAADHAARという住基台帳と同じで国民にIDを振っている。UPIで全金融関係の口座を統一して、明日からすぐにフィンテックを作ることもできる。脱税できないし、口座開設時の審査もとてもスムーズにした。
- アジアのフィンテックはAll in one。どこのアプリでも出来ることは同じ。各国でアリペイ、paytm、coinsPHなどが普及している。シンガポールはデビッドカードなどが普及していたのでフィンテックは少し遅れている。
- 統合されたコンシューマーインダストリーができた新しい時代になっていると言える。
- 中国のzhima creditは個人のスコアリング。アメリカにはFICOがあったが。これをアリペイがダイナミックにやっている。合コンでこのスコアを聞かれて800超えると殺到するらしい。取引のトランザクション履歴や、身長・体重・学歴・家族構成をスコアリングして、金利優遇や貸出増額などもやっている。
- アリペイは垂直統合も地域の買収もやりまくっている。アリババは全てを牛耳っていて桁違い。
- ブロックチェーンはプロトコル革命。ビットコインなど今はお金がバブっているが、この技術で一番インパクトがあるのは製造業。部品がどこでどのように作られたかリレーショナルデータベースで統合されるようになるので不正はできなくなる。
<インドの動向>
- 国単位で見たとき、私たちが生きている間に生まれる最後の超大国。
- 10年前の中国のGDP成長と同じ軌道を辿っている。インドは内需が爆増する。中間層も急激に増加する。
- 日本を7年くらいで抜く。スマホ人口が増えるのはほとんどがインド。インドネシアでも増えるけど。
- アメリカのグローバル企業でもインド人のCEOがいる企業も多い。彼らは大学までインドで出て、それからアメリカに渡ってくるので他の移民とは違う。ソフトバンクの10兆円ファンドのトップもインド人。
- インドのユニコーン 10社のうち8社はIIT(インド工科大学)出身。9社のCEOはグローバル企業(本社)に努めた経験を持っていた。4社のCEO は欧米の大学のディグリーを持っている。
- IITは毎年1万人の卒業生を送り出している。IITにつぐクラスも含めるとインドで毎年10万人の理系人材を出している。以前は米国との繋がりも深いインドのSIが理系人材を吸収していた。しかし、AIによってプログラミングが効率化すると、SIの人材はどうなる?というのが問題になってきている。
- インド・マフィア化現象と呼ばれるものがある。シリコンバレーの3分の1は実質インド企業だ。CEOはだいたいIIT卒でインドに常駐しており、資金調達と営業だけをシリコンバレーでやっている。起業家・VC・買い手企業の全員がインドになってきている。
- インドは人が本当に優秀。父親と母親の言葉が違うのはザラで、脳の言語野が発達しているのだと思う。日本に1年駐在するだけで日本語がペラペラになる。彼らは1分で 150ワードを話し、読むのも早い。プレゼンは文字がビッチリ書かれていて、下手に思えるのだが、オーディエンスも凄い速さで読めるので全く困ってない。頭良い。
- イグジットはIPOかM&Aと言われているが、よりレイターな投資家に売却するというイグジットも存在する。インドではベンチャーの上場はとても難しいので、IPOする場合は大きくなってからアメリカでの上場を目指すことが多い。
<東南アジアの動向>
- テクノロジーは弱い。産地ではない。
- 6億人の消費市場が5%伸びていく成長市場に間違いはない。ただ、デジタル経済圏はテンセントとアリババに占有されていて、インターネットの中では勝負できない。
- スタートアップの資金調達が1兆円で、日本の3−4倍。
<VC>
- VCはコミュニティ産業。コミュニティに長期コミットしないとお金儲けはできない。人的につながることが大切。産業集約は地理的に起きる。
- 自社で投資するセクタを絞って決めて、該当する企業に声を掛けて回って発掘している。持ち込み案件はやらない。紹介された投資案件に投資をすることは 120%やめてくださいと伝えている。
<蛯原さんからのメッセージ>
- カオスがないとエネルギーは生まれない。カオスにしないとイノベーションは起こらない。アニマルスピリットが大事。
- これからはアジアが主流になってくるが、西洋的なものがグローバルスタンダードだという考えから外れるようになる。日本企業も非市場戦略をやらなくてはならないが、苦手としているところ。アジアの経営者には契約を平気でぶっちぎるような豪胆さも持っている。
- 3月のオースティン、深セン、バンガロールに行ってくると良い。バンガロールなら投資しようという気持ちになる。優秀なエンジニアが雑居ビルでマシンラーニングの話をしているのに、ビルの外を歩くと牛渋滞が起こっていたりとか。そんなカオスからイノベーションが生まれる。
- 大企業は勝つまでやり続けるべき。勝つまでやめない気持ちが大切。スズキはインドで30年やっている。
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