『生きている会社、死んでいる会社』(遠藤功:東洋経済新報社)
現場力の遠藤功先生の著書。
本著では生きている会社を「絶え間なく挑戦し、絶え間なく実践し、絶え間なく創造し、絶え間なく代謝する会社」と定義している。
創造やイノベーションも大切だが、陳腐化して価値のなくなった老廃物を捨てることも大切。
【会社はどうあるべきか】
- 会社とは勇気を持って挑戦し、独自価値を創造するために存在している。まずはやってみるという実践主義こそが挑戦を促して創造を生み出す。
- 会社は時とともに老化する。「現状維持でいい」「うちの会社が潰れるはずがない」という老廃物が溜まっていき、フレッシュさを失って行く。大事なことは起業当日のデーワン(1日目)の活力を保つこと。
- 会社には3つの側面を持つ生き物と言える。①価値を創造し、利益をうむ経済体②人間同士が繋がって共に働く共同体③そこで働く人が仕事を通じてやりがいを感じ、人として成長して活性化する生命体。経済体としての会社はよく解説されているが、共同体・生命体という目に見えない測定できない部分に本質がある。
【「生きている会社」になるには何が必要か】
- 熱を帯びている:熱は個の思いから生まれ、思いを共有することで分身を作り、会社の中に熱源を増やす。
- 理を探求する:徹底した理詰めで考える。戦略レベルでは模倣困難な差別化を実現する。実行レベルでは組織能力を高めて合理的に実行する。
- 情を充たす:社員たちの心を充足する。人は最も活用されていない経営資源であり、能力に可能性がある。「生きている会社」であり続けるためには魂の継承が不可欠。魂は利よりはるかに重要。
【実践すべき「10の基本原則」】
- 代謝のメカニズムを埋め込む:その都度ここに考えるのではなく、撤退基準を定めておいて代謝を日常化する
- 「ありたい姿」をぶち上げる:できる・できないではなく、ありたい姿を前向きにポジティブに打ち出す
- 骨太かつシンプルな「大戦略」を定める:「ありたい姿」に向かって進むブレない軸を打ち立てる
- 「必死のコミュニケーション」に努める:理念が共有されるように、必死になって相手に伝わるために尽力する
- オルガナイズ・スモール:小さな神輿をたくさん作り、リーダーをたくさん作る
- 「実験カンパニー」になる:未知なるものに挑戦し、実験を活用して考える現場をつくる
- 「言える化」を大切にする:仕事の前では皆が平等であり、年齢・経験に関わらず自由闊達に意見する
- みんなでよい「空気」をつくる:元気な挨拶や掃除など何気無いことを大切にする
- 管理を最小化する:価値創造を担う現場をいかに支援するかというミッションで管理から支援へ変化する
- リスペクトを忘れない:人はコストではなくバリューであり、尊敬の念をもつ
新しい事業に取り組むことはどこの会社でも行われるが、事業から撤退したり、不要になった部門を閉じたりする「代謝」が行われない企業が多い。
赤字からの回復が見込めないけれど「これを待っているお客様もいるから」と事業を継続するケースもあるし、自分のチームが解散させられそうになると抵抗するケースもあるだろう。
また、代謝と言っても経営者が主観的に撤退を繰り返していては「うちの事業は潰さないで」と陳情に行くような事態になってしまう。さらに、経営者の一存でいつ事業が潰されるか分からないという環境であれば、そもそも新しい挑戦自体が生まれない。
デーワンの活力が維持できるように老廃物を捨て去り、常にイキイキと挑戦を続ける組織。その中で社員が成長できる組織こそが生きていると言えるのだろう。
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