2019年6月23日日曜日

20190623:第64週 NFM15周年記念シンポジウム「大学発の『知』社会実装」

スターサイエンティストの定例会議でシンポジウムの存在を知り、業務を調整して参加。早稲田大学朝日先生の仕切りの元、山形大城戸先生・ウエルインベストメント瀧口社長の講演を聞く。ということで久々の講演録。



『最先端技術で地方創成』
基調講演/城戸淳二(山形大学大学院有機材料システム研究科卓越研究教授
有機材料システムフロンティアセンター センター長)

【山形(地方都市)について】
  • 消滅可能都市である山形に来て30年経つ。2040年にはほとんどの市町村が消滅することが統計的に分かっている。残るのは東京くらいではないか?現状を分かった上でどうしたらよいのか?を考えなくはならない。
  • 地域活性の源として、東北地方は工場が多かったが、なくなりつつある。地方活性化のためにはものづくりをもう一度元気にしないといけない。米作りの主力は70歳以上で、次世代の作り手がいなくなりつつある。
  • 観光・インバウンドと話題になってはいるが、観光客が本当にたくさん来ているのは東京や京都。山形にはディープ過ぎてほとんど来ない。もっと呼ばなくてはならない。
  • 工業の活性化をどうすれば良いか?山形に工場誘致は無理。人件費は中国、東南アジアに遠く及ばない。中小企業には頼れない。ブレイクスルー起こすのは難しい。大学発ベンチャーを生み出して育てる必要がある。
  • 米沢で100年前に山形大学工学部(当時の米沢高等工業学校)発ベンチャーがあった。ビーカーからレーヨンを作り出し、米沢製糸場を建てた。14人だった従業員は1918年には300人まで大きくなった。今は帝人という会社になっている。米沢はもともと絹織物の街で、レーヨンを作っていた帝人はライバル企業だった。そこで地元には製糸場に女工さんを出さないように圧力がかかることすらあったそうだ。
  • 青色LEDでブレイクした徳島県の日亜化学工業も1979年には180人だった会社が、2016年には8600人にまでなっている。1人の研究者のブレイクスルーで街は変わる。
  • 有機ELディスプレイは折り曲がるし、大型テレビにも有機ELが採用されている。以前は液晶と有機ELを比べていたが、今は比較しなくても有機ELだけ。テレビを買うならパナソニックかソニーの有機ELがおすすめ(笑)
  • 世界初の有機ELは東北パイオニアの米沢工場が1997年に生産した。初めてみた時「行けるな」と思った。黒がしっかり黒く、コントラストと視認性が良い。車載ディスプレイの場合は、一瞬で見えなくてはならない。2005年くらいまで有機ELディスプレイがあったが、その後は韓国勢にパクッと持って行かれた。


【城戸先生生い立ち】
  • 東大阪生まれで、実家はプラスチックの町工場だった。中小企業がどんなものか肌身で感じていたし、最後にどうなるかもわかっている。
  • 早稲田では応用化学科にいた。手で形になるものを作るのが好きで、3年間学校行かなくても卒業させてくれた(笑)最後の1年間は研究室配属になって、西出宏之先生の元で研究を行った。新しい素材を作ると新しいデバイスができるのが面白かった。
  • アメリカの修士に行った時、「下から3番だから金属錯体をやれ」と言われた(笑)プラスチックの中に錯体まぜて光をあてると光る。下敷きに電圧かけたらパーっと光ってすごかった。そのときから有機物に電気を流して光らせる研究に取り組んでいた。
  • 大学院を出て、地方国立大学に着任したのが30年前。壁がすすけて、タイルははがれていて、本当に研究できるの?という状態だった(笑)フラスコ1つから研究をスタートした。いろんな材料を合成して、半導体の素子を使っていった。早稲田のときは授業に出てなかったから(笑)本で勉強するのに慣れていた。知らないことでも平気でやる人間になった。
  • そのうち、白く光ったものができた。たまたま光ったけど「これ白いぞ!世界初やん!」と思った。九大・阪大の大御所の先生がやっていたが、ここが攻め所 オリジナリティが高いと思った。
  • 研究は20代後半から30代のうちにしっかり実験しておくと良い。ウォール・ストリートジャーナルの表紙に出たのは36歳のとき。海外の共同研究テーマだったけど、その新聞が出た後にウォルトディズニーから電話かかっていた。エレクトリカルパレードに使いたいので、どこで売っているのか?という問い合わせだった。
  • 研究をして論文にして、新聞とテレビで発表して自分の名前を売る。材料系の論文をたくさん書く。どれだけ引用されているか?を重視していて、Highly Cited Researcherにも選ばれている。
  • 2018.1.14にテレビ番組の中で大学ランキングが紹介され「山形大学の論文の引用数が多くてすごい!」と紹介された。材料分野の被引用数が多いのだが、この大半は城戸先生が書いたもの


【大学発ベンチャーからの産業化】
  • 20085月には有機ELパネル会社のルミオテックを設立した。2011年から生産開始して、最初の着想から20年近くかかった。普及への挑戦として世界中で売りまくる計画を立てている。今は株主がVテクノロジー)横浜の装置メーカー)に変わっている。150cmの基板でパネルの値段も大きく下がる。シャドウマスクは1500万円する。スマホの有機ELパネルを作るために使っている。
  • 2009年に有機EL照明を販売する会社オーガニックライティングコーポレーションを設立した。県内に120箇所にEL照明を設置した。山形では小学生やタクシーの運転手でも有機ELを説明できる(笑)
  • LEDは点光源で、有機ELは面光源にできる。また、LED(Ra=78)は擬似白色で赤みが少なくてブルーが強い。一方で有機ELは演色評価数が優れている。Ra93。博物館や美術館で使われている。米沢牛では赤色が非常に綺麗に見えて、お客さんも騙される(笑)演色性が悪いLEDの元で化粧をすると良くない。普通の光の下で見ると赤を強くし過ぎてしまう。テレビで有機EL照明の良さを質問されたときに「美しい女性は美しく、そうでない方はそれなりに」と紹介しておいた(笑)自動車用の有機ELテールランプも開発されていて、AUDIから 試乗してくれと連絡があった。結構眩しい。
  • 山形大学スマート未来ハウスを建てた。照明器具をシステムで開発することが趣旨。寝室に注力して、睡眠に及ぼす照明の影響を研究している。有機ELだけで作業すると夜の睡眠がどう違うのかを調べる。体内時計の制御など、世界的に注目されている。ナショナルジオグラフィックも取り上げられている。赤ちゃんにやさしい照明(ベビーライト)として、ミキハウス・パラマウント・NECとも共同して研究している。お母さんの影響が大きい。
  • 医療用に演色性の良さを生かした照明を作り、訪問診療で活かせるようにした。また、有機EL仏壇を作って蛍のように光らせてみた。ゆりかごから墓場まで使ってもらおう
  • 農業にどう関われるのかを検証するため、人工光源による植物栽培実験を2016.4にスタートした。常温除湿乾燥機を作って、野菜の低温パウダーを作るようにした。農家では野菜の3分の1くらいを廃棄している。JAに出荷できない規格品。今まで全部すてていた。それを規格外も含めて引き取っている。世界中から食品ロスをなくしたい。作付け面積には上限があるのだから、ロスをなくして効率を上げる。
  • 大学発ベンチャーをやると新聞が取り上げてくれる。だだちゃ豆とか生姜とか。新聞に登場すると翌日たくさんお客さんが来てくれる。

【人】
  • 重要なのは人。若い人は仲間づくり。1人で作れるわけではない。大きな仕事をするときには仲間集めが重要。
  • 地域づくりは人づくり。山形大学モデルで地方創世をしたい。
  • 人を削って受け身になるとちゃんとした研究が出なくなる。外部資金を取り続けるか?最大の究極の方法はベンチャーを起こして大学にお金を入れてもらうこと。


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618日(火)
自分の授業「サブカルチャーと企業経営」では、授業評価アンケートのレビュー
中間段階でアンケートを実施し、残りの授業で極力反映させるという形式っぽい。





620日(木)
長内さんのFB投稿を見た結果、オトボケでご飯を食べたくなったため、早めに早稲田へ(笑)

授業「技術と戦略」のTA1年生のディスカッションが活発だった。よきかなよきかな。

621日(金)
冒頭で紹介した早稲田大学ナノテクノロジーフォーラム主催のシンポジウムに参加。
26号館15階のレストランで懇親会だったが、食事が美味しくて良かった。生協食堂とは違うな(笑)
そこから長内ゼミに合流して議論。

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